いじめの証拠は目撃していたクラスメイトからの証言と、悪質な落書きの机で充分だった。
　後日、あのクラスでいじめが起きていたことをようやく受け入れた学校側は、首謀者の生徒数名に三ヵ月の謹慎処分と、黙認していた教師を担任から外した。保護者からは甘い処分だと言われたが、学校側は「改心の余地を与え、在校生とこれからの学校を守るため」だと貫いた。

　そして被害者である女子生徒は、家庭の事情という名目で学校を去った。
　袴田が一週間の謹慎処分から戻ってきて見つけたのは、大きくへこんだ落書きだらけの机が粗大ゴミとして回収されていくところだった。

　もうここに、彼女の居場所はなかった。