叶わぬ夢〜御曹司の悲痛な叫び

侑斗は退院する事になった。

私は侑斗との付き合いにピリオドを打つ決心をした。

会社に辞表を出し、私は会社を辞めた。

久しぶりに出社した侑斗は、私が辞表を提出した事を知って愕然とした。

つばさ、どうして俺を信じて待っていてくれなかったんだ。

マンションもつばさの荷物は、綺麗に片付いていた。

俺はつばさを探した。

しばらくして、つばさの居所が判明した。

「つばさ、探したぞ」

「侑斗、私では侑斗の結婚相手は務まりません」

つばさは泣いていた。

「つばさ、何も気にしなくていい、二人でいろいろと乗り越えて行けばいい」

つばさは本当に不思議な女だ。

将来社長夫人になれるなら、離れたりしない。

でもつばさは、いつも逆を行く、他の過去の女たちとは考え方が違うんだ。

俺はつばさを説得した。

「つばさ、今度デートしような、それに脇を支えてくれないとまだ、痛くてしようがないからな」

つばさは俺を見つめながら頷いていた。
私はなんて自分勝手な事をしたのかと反省した。

自分の身を呈して私を守ってくれた為に、痛くて辛い思いをしたのに、自分の事しか考えなくて、侑斗、ごめんね。

「侑斗、ごめんね」

侑斗は私を抱き寄せてキスをした。

「つばさ、ずっと一緒にいような、やっとつばさが俺を好きになってくれたのに、俺が自分の身分のせいでつばさを失うなんて、自分の身分を呪っちゃうよ」

私は大きく首を横に振った。

「私がダメなの、もっと侑斗に相応しい女性ならいいんだけど・・・」

「つばさは俺には勿体ないくらいの女性だよ、だって、今まで大勢の女性と付き合って来て、満足出来なくて、次から次と彼女作って、それでもこの人って言う女性に巡り会えなくて、でもつばさはつばさ一人で満足だし、つばさ以外は何もいらないって思える位に、つばさは大切な存在だから、俺の側を離れないでね」

「侑斗!」

「俺のマンションに戻ってくるよね」

「うん」

私は涙が溢れて止まらなかった。
この幸せがずっと続きます様にって願った。

侑斗は傷口の痛みが中々回復しなかった。
しばらく仕事を休む事になり、私は侑斗の看病に専念した。

「つばさ、ごめんね、デート行くって約束したのに・・・」

「大丈夫だから、気にしないで、侑斗の側にいられるから嬉しいよ」

私は侑斗にキスをした。
俺は傷口が裂けて、激痛に襲われた。

「痛え、ああっう」

「侑斗、侑斗、大丈夫、救急車呼ぶね」

俺は救急車で病院へ救急搬送された。

絶対に避けたい病院へ救急車は向かった、鷹見総合病院だった。

「鷹見先生、救急搬送された患者さんは、目黒侑斗さん、二十五歳です」

「目黒侑斗?」

俺は緊急手術を受ける事になった。

麻酔が切れて病室で気づくと、つばさが俺の側についていてくれた。

「侑斗、大丈夫?」

「俺、どうしたんだ?」

そのとき病室のドアをノックする音がして、一人の男性が入って来た。

「痛みはどうですか」

「兄貴」

「よう、侑斗、お前、ヤブ医者に縫合して貰ったんだな、だから裂けてきたんだよ」

「うるせえよ、兄貴には関係ないだろ」

「おい、再度縫合手術したの、誰だと思ってるんだ」

俺は何も言えず黙っていた。
鷹見総合病院外科医の鷹見真斗、俺の兄貴だ。

何故苗字が違うかって?兄貴の嫁さんは鷹見総合病院院長の娘である。

つまり婿養子の為、兄貴は鷹見になった。

そして、俺は目黒コーポレーション次期社長の役割を押し付けられた。

俺が兄貴に敵意を剥き出しにしている理由は他にもある。

それは後ほど語るとして、それより今、目の前の現実に俺の不安は集中した。

兄貴は超が付くほどのプレイボーイである。

その兄貴がつばさをじっと見つめている。

「兄貴、つばさに手を出したら殺すからな」

「へえ〜それほど大事な女性か、でもつばささんが俺を好きになったら、諦めろよ」

兄貴はじっとつばさに熱い視線を送っている。

「つばさ、俺の側に来い」

「ふ〜っ、首輪でも付けておくんだな」

兄貴は病室から出て行った。

「つばさ、兄貴には気をつけろ、わかったな」

「はい」

俺はつばさが心配で仕方なかった。

兄貴は欲しいと思ったものは必ず手に入れる、たとえ俺の大事な人でも・・・
「つばさ、兄貴はプレイボーイだから、あいつの言う事は信じるな、いいな」

つばさはニッコリ微笑んで「よく似てる」と俺を見つめた。

「誰が誰に似てるって」

俺はムッとした表情を見せた。

「侑斗とお兄さんとそっくり」

つばさは笑いを堪えながら答えた。

「似てねえよ、不愉快だ」

俺は兄貴とそっくりと言われて、どこがと怒りに似た感情が湧いた。

そう、何故これだけ俺が兄貴を敵視するのか、それは俺が結婚を考えていた程の女性を奪われたからだ。

現在、兄貴の妻である鷹見由子、俺の義理の姉である。

由子とは結婚を考えていた。

しかし、兄貴が俺から由子を奪った。

確かに由子の気持ちをとどめるだけの俺の愛が足りなかったのは事実であった。

でも、由子は鷹見総合病院を継ぐ医者との結婚を義務付けられていた。

当時兄貴はメキメキと腕を上げ、由子の親に認められる様に努力はしていたのは事実であった。
由子も兄貴を選んだのも事実だ。

俺の努力はどうだったか、はっきり言ってわからない。
今言える事は、つばさは誰にも渡さない、それだけの努力も惜しまない。

俺は人生最大のピンチを迎えていた。

俺はしばらく入院する事になった。

つばさは毎日来てくれた。

兄貴はつばさに声をかけるチャンスを狙っていた。

「侑斗、鷹見先生が話があるって事だから、外科医局に行ってくるね」

「話?つばさ、気をつけろよ、二人になるなよ」

「大丈夫よ、侑斗は心配し過ぎよ、それほど私は魅力的じゃないし、俺にも選ぶ権利あるって言われるよ、それに侑斗が大好きだから大丈夫よ」

「つばさはわかってないんだ、どれだけ魅力的だか」

「じゃあ、行ってくるね」

俺は心配で堪らなかった。

つばさを信じてないわけじゃないが、無理矢理キスされたりしたら、つばさは俺に申し訳ないと離れて行くタイプだからだ。

俺はじっとしていられなかった。
その頃つばさは外科医局のドアをノックした。

「どうぞ」

「失礼します」

「鷹見真斗です、侑斗の担当医を務める事になりました、よろしく」

「立花つばさです、よろしくお願いします」

「侑斗と結婚するの?」

「まだわかりません」

「プロポーズされてないの?」

「あのう、プライベートのお話なら、侑斗さんが一緒の時に伺います、失礼します」

「待って、今度食事でもどうかな」

「すみません、お断りします」

私はすぐに外科医局を後にした。
侑斗の病室へ急いだ、きっと侑斗は心配しているだろうと思った瞬間、廊下に侑斗の姿があった。
私は思わず駆け寄った。

「侑斗、駄目でしょ、病室を出てうろうろしてちゃ、また傷口が開いちゃうよ」

「つばさ、大丈夫だった? 何もされなかった?」

「大丈夫よ、まさかいきなり襲わないでしょ?」

侑斗は傷口を押さえて苦悶な表情を見せた。

「侑斗、早く病室へ戻りましょう」

そして、侑斗と私は病室へ戻った。

「侑斗はちゃんと先生の言う事を聞かなくちゃ」

「あんなヤブ医者の言う事聞いてられるかよ、話ってなんだったの」

侑斗は心配そうな表情で答えを待っていた。

「結婚するの?って聞かれたから、まだわかりませんって答えて、後、食事に誘われた」

侑斗はビックリして慌てていた。

「断ったよね」

「大丈夫よ、失礼のない様に断ったから」

侑斗は安堵の表情を見せた。

そして私の腕を掴み、引き寄せた。

「つばさ、結婚しよう」

私はちょっと戸惑いの様子を見せた。

何故なら、侑斗は次期社長が決まっているからだ。
ある日、私は体調の変化を感じ、病院へいった。

以前から生理不順があり、体調が優れない時があった。

侑斗に結婚を申し込まれて、まともに産婦人科を受診しようと思ったのも一つの要因であった。

私はそこで衝撃の事実を知る事になる。

「立花さんは生理不順やその他の疾患で妊娠は難しいと思われます、しかし、妊娠を望まれるのであれば、治療をお勧め致します」

「ありがとうございました」

通常の生活には何の問題もない、しかし、侑斗のプロポーズを受けるとは目黒コーポレーションの跡取りを残さなければいけない。

今の私にはその責任は重すぎる。

私は侑斗との別れを決意した。

今日も侑斗の病室を訪れた。

傷口は順調に回復に向かっていた。

相変わらず、鷹見先生は私を口説いてくる。

「つばさちゃん、今度食事行こうよ、侑斗より俺の方が楽しいよ」

「すみません、他あたってください」

こんなやりとりが毎日のように繰り返される。

「つばさ、退院したら結婚しよう」

「う〜ん、考えておくね」

侑斗とはこんな会話が毎日のように繰り返される。
私は侑斗に別れを告げなければと考えていた。

侑斗は回復して退院する事になった。

「お世話になりました」

「つばさちゃん、またいつでも連絡して」

「兄貴、つばさに声かけるんじゃねえよ」

「侑斗、ちゃんとお礼して」

侑斗は渋々頭を下げた、そして一言「兄貴、サンキュー」と声をかけた。

私と侑斗はマンションへ戻ってきた。

「つばさ、明日婚姻届出しに行こう」

「侑斗、ちょっと考えさせて」

「えっ?どうして?」

侑斗はまさかの表情で私を見つめた。

「兄貴と関係あるの?兄貴を好きになったの?」

私はどう答えればいいか迷っていた。

鷹見先生は関係ない、私の問題だから。

「嘘だよね、嘘って言ってよ、つばさ」

侑斗は取り乱していた。

ちゃんと話さないと、侑斗が・・・

侑斗は私の頬を両手で挟み、「つばさ、つばさ」って何度も呼んだ。