ある日俺の病室へ白髪混じりの男性が訪ねて来た。

「お坊っちゃま、探しましたよ」

俺のことをお坊っちゃまと呼ぶこの男性は、目黒財閥の執事、朝日である。

そう、俺は目黒財閥の御曹司、そして目黒コーポレーション次期社長である。

「お怪我は大丈夫でございますか」

「ああ、大丈夫だ、もう子供じゃないんだから放っておいてくれ」

「そう言う訳には参りません、真斗様の病院へ移りましょう」

真斗とは俺の兄貴で、目黒コーポレーション次期社長の座を俺に押しつけて勝手に好きな女と結婚し、外科医の仕事をしている嫌なやつである。

「死んでも兄貴の病院へは行かない」

「侑斗様、奥様も大変お心配されております」

「あいつは兄貴だけが大事なんだ、心配された覚えはない」

朝日は大きなため息をついた。
そこへつばさがやって来た。

「侑斗、着替え持って・・・」

「はじめてお目にかかります、わたくし目黒財閥執事の朝日と申します、この度は侑斗様が大変お世話になり、ありがとうございました」

「目黒財閥? 侑斗様? 」

「朝日、もういいから今日は帰ってくれ」

「かしこまりました、ではまた後ほど伺います、失礼致します」

朝日は病室を後にした。

つばさはキョトンとした表情で俺を見つめた。

「侑斗、どう言う事?」

俺は目黒財閥御曹司であり、目黒コーポレーション次期社長であることをつばさには話していなかったのである。