彼はデートの時に青いノートを持って来た。
そこに思った事を書くという。
また今日もいつもの場所でデートだ。
いつもの様に、くらげを2人で眺める。
片方の手は透明なガラスに触れ、もう片方のお互いの手が少し触れ合った瞬間、自然と絡まるように繋がれる。
脈拍が一気に上がって、顔に熱が集まる。その様子をこの子達に見られない様に、水槽からパッと目を反らした。
しばらく手を繋いで、色々な魚たちを眺めているとまた彼がノートを取り出した。私の手が寂しくなる。
「いい小説書けそう?」
「このまま千波と居れば、きっと書ける」
どういう意味なのだろう?
私は好きだからずっと一緒に居たいと思う。
彼の気持ちは分からない。あのくらげの様に、ふわふわと水中を漂っている様だ。
彼は海も好きで、この場所もネタが降ってくると言っていた。
海に沈むオレンジ色の太陽を眺めながら、彼はまたノートに夢中だ。
私は悔しくて鉛筆をもった彼の手を自ら遮った。
「ごめん……」
と彼はノートを閉じ、ぎゅうっと手を握り返してくれた。
「今度海に泳ぎに来ようか?」
「うん」
海を眺めながら、静かな時間だけが通り過ぎる。小さな波音と私の心音が聞こえるだけ。
彼の心音は、相変わらず分からない。
「千波、ずっと一緒に居よう」
私より少しだけ太い腕が私を包みこむ。彼の心音を初めて感じた。私の胸はキュンと音を鳴らす。私たちは静かに唇を重ね合わす。
彼は愛の言葉は言わないが、私への愛のしぐさで愛情が充分伝わった。
優しい笑顔、優しい手、優しい指先、温かい体温。
その広く優しい海にずっと包まれていたい。
ずっとそうして居たかったのに……。
彼は美しい生物の前でノートを開く。
「もう完成した?」
と青いノートを覗き込もうとすると、
「わぁ!」
と恥ずかしそうにノートを閉じる。顔が珍しく真っ赤に染まっている。
「もう少し待って!完成したらちゃんと見せるから!」
彼はまた愛しそうにくらげを見つめる。
そのまま水槽に吸い込まれて、彼らの様にふわふわと水に溶けてしまいそうに見えた。
「海渡くん!」
私は必死に彼の腕を掴んだ。
「どうしたの?」
「私から離れて行かないで……」
「離れないよ。ずっと一緒だ」
そこに思った事を書くという。
また今日もいつもの場所でデートだ。
いつもの様に、くらげを2人で眺める。
片方の手は透明なガラスに触れ、もう片方のお互いの手が少し触れ合った瞬間、自然と絡まるように繋がれる。
脈拍が一気に上がって、顔に熱が集まる。その様子をこの子達に見られない様に、水槽からパッと目を反らした。
しばらく手を繋いで、色々な魚たちを眺めているとまた彼がノートを取り出した。私の手が寂しくなる。
「いい小説書けそう?」
「このまま千波と居れば、きっと書ける」
どういう意味なのだろう?
私は好きだからずっと一緒に居たいと思う。
彼の気持ちは分からない。あのくらげの様に、ふわふわと水中を漂っている様だ。
彼は海も好きで、この場所もネタが降ってくると言っていた。
海に沈むオレンジ色の太陽を眺めながら、彼はまたノートに夢中だ。
私は悔しくて鉛筆をもった彼の手を自ら遮った。
「ごめん……」
と彼はノートを閉じ、ぎゅうっと手を握り返してくれた。
「今度海に泳ぎに来ようか?」
「うん」
海を眺めながら、静かな時間だけが通り過ぎる。小さな波音と私の心音が聞こえるだけ。
彼の心音は、相変わらず分からない。
「千波、ずっと一緒に居よう」
私より少しだけ太い腕が私を包みこむ。彼の心音を初めて感じた。私の胸はキュンと音を鳴らす。私たちは静かに唇を重ね合わす。
彼は愛の言葉は言わないが、私への愛のしぐさで愛情が充分伝わった。
優しい笑顔、優しい手、優しい指先、温かい体温。
その広く優しい海にずっと包まれていたい。
ずっとそうして居たかったのに……。
彼は美しい生物の前でノートを開く。
「もう完成した?」
と青いノートを覗き込もうとすると、
「わぁ!」
と恥ずかしそうにノートを閉じる。顔が珍しく真っ赤に染まっている。
「もう少し待って!完成したらちゃんと見せるから!」
彼はまた愛しそうにくらげを見つめる。
そのまま水槽に吸い込まれて、彼らの様にふわふわと水に溶けてしまいそうに見えた。
「海渡くん!」
私は必死に彼の腕を掴んだ。
「どうしたの?」
「私から離れて行かないで……」
「離れないよ。ずっと一緒だ」