でも──
その気持ちは、分からなくもない。
………“分からなくもない”?
「僕が……?」
三日月さんに会いたいってことか?
それって、ただの友人として?
それとも人として?
あるいは──…
「おい、茅影」
「どうかしたか?」
小武と藍原が僕を不思議そうに見る。
今の声、言葉に出ていたのか?
「あ、いや……」
なんでもない、と首を振る。
藍原が会いたいって呟いた言葉を僕が分からなくもないって。
それって、つまりそういうこと……?
いやいやいや、まさか、な。
だって僕は、好きな人もいなくて好きって感情さえも分からなくて、色恋的なものなんて必要ないやつで。
そんな僕が、誰かを好きになるはずない。
これは何かの間違いだ。
ないない、と頭に浮かぶ「それ」をかき消して、文庫本を開いた。
一行、二行と読んでいくけれど、全く頭に入ってこない。
その原因は分かっていて。
けれど、どうすることもできなかった僕は悩んだ。
悩んだが、答えに辿り着くことはなかった。