「なんで僕、なんだよ」


こんな地味で目立たなくて暗いやつと、そんな青春できるはずないだろ。

そんな僕に、あれは一週間前のことだったかな、と顔を緩めたあと、


「向葵くんのこと、そこのベンチで見かけたことあるの。本をお腹に広げたまま、心地よい陽だまりのなか寝てる向葵くんがいたんだ」


と、近くのベンチに指をさした。

その言葉を聞いて、記憶を手繰り寄せると、確かにそんなことがあったなと昔のことのように懐かしく思う。

でも、だからって、


「そのことが、青春したいって理由にならないじゃん」


何話をすり替えようとしてるんだよ。

そんなのに僕は騙されないぞ。


「向葵くんがキラキラ光って見えたの」


突然告げられた言葉に、え、と困惑した声をもらすと、


「他のみんな、私に集まって来る」

「…なに、自慢?」


冷たく突き放すと、そうじゃない、と声をあげた三日月さん。


「みんな私が転校生だから集まるの。物珍しそうに、そのときのいっときの感情で、みんな寄って来るの」


それなのに、と続けると、


「向葵くんだけは違った。私のこと全然色恋的に見ないし、転校生だからって騒ぎ立てないし。ほんとの私と向き合ってくれるんじゃないかなって思ったの」

「……なにそれ」