19. 紀子との約束
田村はシーズン中、自宅に帰ることができないため、2、3日に一度は、妻(紀子)に電話を入れることにしている(LINEをするのが苦手なようで)
そして、田村はいつものように紀子の携帯へ連絡を入れた。
「もしもし、紀子、元気にしているか?」と田村が言うと、
「元気よ。いつもそんなことを聞かないのに一体どうしたの? 何か変わったことでもあったの?」と紀子が聞いた。
「いや、特にはないけど」と田村は言ったが、あの話だけはしようと思った。
田村が病院で出会った少年が白血病と闘っていること、そして、その少年の誕生日にホームランを2本打つと約束をしてしまったことを話した。
「紀子、俺にホームランが2本も打てると思うか?」と聞くと、少し間があって、
「今のあなたなら無理かもしれない」と紀子が言った。
「やっぱり...」と田村が言うと、
「違うの、もし、あなたが今の気持ちのままだったら、打てないという意味なの」
「どういうこと?」
「今のあなたは、以前のあなたと違っている。5年前のあの事故の時から.... もう、私には子どもが産めなくことで、あなたがずっと落ち込んでいたのは分かっていた。でも、私はもっと辛かった。あなたには自信を持って、強くなって欲しいの。あなたならできると私は信じている。あなたが高校生だった頃のことを思い出して。大地君のために、ホームランを打ってね」と紀子が言ってくれた。
「ありがとう。昔のように打って見せるよ」と田村は言って電話を切った。
田村はシーズン中、自宅に帰ることができないため、2、3日に一度は、妻(紀子)に電話を入れることにしている(LINEをするのが苦手なようで)
そして、田村はいつものように紀子の携帯へ連絡を入れた。
「もしもし、紀子、元気にしているか?」と田村が言うと、
「元気よ。いつもそんなことを聞かないのに一体どうしたの? 何か変わったことでもあったの?」と紀子が聞いた。
「いや、特にはないけど」と田村は言ったが、あの話だけはしようと思った。
田村が病院で出会った少年が白血病と闘っていること、そして、その少年の誕生日にホームランを2本打つと約束をしてしまったことを話した。
「紀子、俺にホームランが2本も打てると思うか?」と聞くと、少し間があって、
「今のあなたなら無理かもしれない」と紀子が言った。
「やっぱり...」と田村が言うと、
「違うの、もし、あなたが今の気持ちのままだったら、打てないという意味なの」
「どういうこと?」
「今のあなたは、以前のあなたと違っている。5年前のあの事故の時から.... もう、私には子どもが産めなくことで、あなたがずっと落ち込んでいたのは分かっていた。でも、私はもっと辛かった。あなたには自信を持って、強くなって欲しいの。あなたならできると私は信じている。あなたが高校生だった頃のことを思い出して。大地君のために、ホームランを打ってね」と紀子が言ってくれた。
「ありがとう。昔のように打って見せるよ」と田村は言って電話を切った。