17. 田村からの手紙

 六月の中旬に、田村は初めて大地宛に手紙を送った。

    大地くんへ
 こんにちは、大地くん。げんきにしていますか? ぼくも、ホームランをうてるようにがんばるので、大地くんもがんばって、びょうきとたたかってね。こんどの大地くんのたんじょうびに、あえることをたのしみにしています       
                           たむより


 そして、大地の両親へは、
 「こんにちは、ご無沙汰しております。大変失礼ですが、手紙を書くのが苦手なもので簡単に申し上げます。今度の大地君の誕生日(7月4日)に大阪ドームでパイレーツ戦があります。チケットを同封しましたので、もし、大地君の体調がよろしければ、ご家族で応援に来て頂ければ嬉しいです」

                          田村 博



    (村山の自宅にて)

 幸雄が21時過ぎに自宅へ帰ると、
 「あなた、ジャガーズの田村さんから手紙が来たの」とひとみが言うと、

 「ほんとに?」と幸雄が言い、その手紙を受け取ると、ハサミで手紙の端を切った。


  幸雄は全部読み終えると、その手紙をひとみへ渡した。

  ひとみがその手紙を読み終えるのを待って、

 「大地はきっと喜ぶだろうな」と幸雄が言った。

 「でも、大地に外出許可が出るかしら?」とひとみが聞くと、

 「明日、俺が阿部先生に相談してみるよ」

 「ありがとう。大地の誕生日だから何とかしてあげたいね」とひとみが言った。