1. 運命の電話

 その日、高校時代の友人であった田村から、私(白鳥)の携帯へ連絡が入ったのは、夜の11時頃であった。
 田村は現在、プロ野球で有名な大阪ジャガーズで活躍している選手である。
 当時、彼は高校での三年間、硬式野球クラブに在籍しており、四番打者でファーストのポジションであった。
 彼が高校三年の時、甲子園では準決勝まで進み、その大会で彼はホームランを五本打ったこともあるのだ。
 その後、彼の努力が実りドラフト五位で、大阪ジャガーズに入団することができた。

 彼は今年で14年目のベテラン選手である。
 しかしながら、マスコミの噂では彼の去年の成績が思わしくなく、今年で引退であろうと囁かれていたのであった。
 
 その彼が今年、奇跡を起こすことになるとは、誰もが予想していなかった。

 私は携帯に登録されていない番号を、少し不審に思いながらも、

 「はい、白鳥です」

 「田村です。高校の時、同じクラスだった田村です」

 「久しぶりだな、田村!」と私が言うと、

 「悪かったな、こんな遅い時間に」と田村は言った。 
 
 「ところで、どうして俺の携帯番号を知っていたの?」と私が聞くと、

 「二年前の冬に、高校の同窓会があっただろ。その時に、みんなが記帳をしたものを幹事がまとめてくれて、送ってくれたのを思い出したんだ。白鳥が確かホテルに勤めていると聞いたものだから」と田村が言うと、

 「なるほどね、やっと理解ができたよ。それで一体どうしたの? また、同窓会でもするのか?」と私が聞くと、

 「いや、違うんだ。今度、白鳥が勤めているクイーンズホテルを利用させてもらいたいと思って」

 「どうもありがとう。田村が宿泊をするのか?」

 「泊まりではなく、宴会場を利用したいので、白鳥に相談しようと思ったんだ」と田村が言った。

 「そうか、わざわざ電話をくれてありがとう」と私が言った。

 「近いうちに会えないか?」と田村が聞くと、

 「そうだな...今週の金曜の夜なら夜勤明けで、翌日が休みだからありがたいんだけど」と私が言った。
  
そして、私達の待ち合わせ場所は、大阪市内のRホテルのバーラウンジに、20時と決めた。