「何で来たの!? 来たら本気でキレるって言ったよね!? てかどさくさに紛れて下の名前で呼んでんじゃねぇよ!」

「キレるって言ったのはここでバイトをしたらってことだろ。流石に本気で嫌がられることはしねえよ。だから客として来た」

「それすら嫌がってるのがどうして分からない!?」


鈍感? 鈍感なのか? だから私が言ったことも分かってくれないのか!?
私は注文を取り、厨房へと戻ると中にいる桐谷先輩へと話し掛ける。


「次のハンバーグドリア、タバスコ入れまくってください」

「クレーム来るからやだ」


あぁあぁ! なんて面倒臭い男なの! どうして私あんなストーカー男に好かれてしまったの!
とにかく早く帰ってもらわねば。太田が店長と接触なんかしたら最悪な事態になる。あの純粋無垢な店長が太田で汚れる。

どうしてこうも店長がフロアに出ている日に限って!


「お疲れ〜、大学のゼミ延びちゃった。けど結構お客さん引いちゃったね」

「花宮さ〜ん!」

「……なに」


漸く出勤してきてくれた花宮さんの腰に抱き着くとその豊満な胸に顔に突っ込んだ。彼女が「何、どうしたのこれ」と桐谷先輩に聞くけれど「俺も知らない」と冷めた答えが返ってきた。

あぁ、もうストレスでどうにかなっちゃいそうだ。私は手短に今回の問題について花宮さんに話した。話を聞いた彼女は「なるほどねー」と何度も頷く。


「何度振っても好意をぶつけられて困る、ね」

「私のこと本当に好きって伝わってくるんですけどそろそろ諦めてもらいたいかなーって感じで」

「アンタ、それ分かってる?」

「え?」


何が?、と聞き返すと彼女の言葉で私の思考回路が止まった。


「それ、小野が店長に対してやってることもほぼ同じだからね」


それを言われた瞬間、私の中で何かがぶっ壊れた。