一通りの事情聴取を終えて刑事がオフィスから出ていくと、社員はまた仕事に戻った。特に三津谷は打ち合わせが立て込んでいるようで、荷物をまとめて颯爽と出て行ってしまった。どうやら旗本が受け持っていた仕事の半分を彼女が引き継いだらしい。
真崎は刑事の許可を得て、旗本の作業デスクを見せてもらうことにした。
デスクはきれいに整理整頓されていた。書類は引き出しに案件ごとに分けられ、必要な文房具は予備までしっかり補充されている。埃一つ積もっていない資料や電気スタンドから、かなりの綺麗好きだということがわかる。
その中で真崎は、デスクの脇にある小さなカレンダーが目に入った。手の平サイズで予定を書き込めるスペースはない、数字だけが書かれているものだが、日付の下に「27」、また別の日には「18」と「328」、そして事件当日の日には「510」と書かれている。
真崎は近くの席の市原と権藤に尋ねるも、二人して首を傾げた。
「それ、俺や三津谷さんが指導中のときからずっと書いてるんですよ。本人は打ち合わせだとは言ってましたけど、数字については教えてくれませんでした」
「指導中って……それっていつ頃ですか?」
「五年前くらいかな。権藤さんなら知ってるんじゃないですか?」
「いや……僕も知らないよ。彼女の一日の予定がびっしり詰め込まれているのは知ってるけど」
すると、真崎が権藤を見て不思議そうに首を傾げた。特に変わったところがないが、先程の聴取の時にはかけていなかった眼鏡を見ているらしい。
「あれ……権藤さん、眼鏡をかけていらっしゃいましたっけ?」
「いえ、仕事だけですよ。パソコンの画面を見る機会が多いので、ブルーライトカット用の眼鏡を使っています」
「やっぱり皆さんも使われているんですか?」
「どうだろう……ブルーライトカットが入っていると、色がわからなかったりするんですよね。特に旗本は裸眼で頑張るって言ってて……コンタクトも使ってなかったんじゃないかな」
「そうだったんですか。ちなみに権藤さん、もしかして最近買い換えましたか?」
「は、はい。実は先週無くしてしまいまして……って、どうしてわかるんですか? もしかして推理とか!?」
「いえ、この間偶然見かけた眼鏡屋のサイトで紹介されていた、新デザインのフレームによく似ていたので」
「なるほど……確かに、新デザインのフレームを買いました。それまでは大手デパートオリジナルのパソコン用眼鏡だったんです。どうせなら良いものにしようと思っただけで。最近はレンズにブルーライトカットを入れる比率も自分で変えられるみたいですから、便利な世の中になりましたね。……これって捜査に関係あります?」
権藤は目の前にいる真崎に疑いの目を向けながら尋ねると、彼はニッコリ笑った。
「いいえ、実は最近、事務作業が多いので眼鏡を買おうと思っていたんです。自分のまわりには眼鏡をかけている人がいなくてつい……」
「本当にぃ? 事件の何か参考にしようってんじゃ……」
「とにかく、カレンダーも眼鏡も、現時点で断定ができません。刑事さんが来ても根掘り葉掘り聞いたりしちゃ駄目ですよ?」
「うっ……アンタだって同じだろう? 本当に探偵か?」
「ちょっと訳アリなんですよね」
真崎は刑事の許可を得て、旗本の作業デスクを見せてもらうことにした。
デスクはきれいに整理整頓されていた。書類は引き出しに案件ごとに分けられ、必要な文房具は予備までしっかり補充されている。埃一つ積もっていない資料や電気スタンドから、かなりの綺麗好きだということがわかる。
その中で真崎は、デスクの脇にある小さなカレンダーが目に入った。手の平サイズで予定を書き込めるスペースはない、数字だけが書かれているものだが、日付の下に「27」、また別の日には「18」と「328」、そして事件当日の日には「510」と書かれている。
真崎は近くの席の市原と権藤に尋ねるも、二人して首を傾げた。
「それ、俺や三津谷さんが指導中のときからずっと書いてるんですよ。本人は打ち合わせだとは言ってましたけど、数字については教えてくれませんでした」
「指導中って……それっていつ頃ですか?」
「五年前くらいかな。権藤さんなら知ってるんじゃないですか?」
「いや……僕も知らないよ。彼女の一日の予定がびっしり詰め込まれているのは知ってるけど」
すると、真崎が権藤を見て不思議そうに首を傾げた。特に変わったところがないが、先程の聴取の時にはかけていなかった眼鏡を見ているらしい。
「あれ……権藤さん、眼鏡をかけていらっしゃいましたっけ?」
「いえ、仕事だけですよ。パソコンの画面を見る機会が多いので、ブルーライトカット用の眼鏡を使っています」
「やっぱり皆さんも使われているんですか?」
「どうだろう……ブルーライトカットが入っていると、色がわからなかったりするんですよね。特に旗本は裸眼で頑張るって言ってて……コンタクトも使ってなかったんじゃないかな」
「そうだったんですか。ちなみに権藤さん、もしかして最近買い換えましたか?」
「は、はい。実は先週無くしてしまいまして……って、どうしてわかるんですか? もしかして推理とか!?」
「いえ、この間偶然見かけた眼鏡屋のサイトで紹介されていた、新デザインのフレームによく似ていたので」
「なるほど……確かに、新デザインのフレームを買いました。それまでは大手デパートオリジナルのパソコン用眼鏡だったんです。どうせなら良いものにしようと思っただけで。最近はレンズにブルーライトカットを入れる比率も自分で変えられるみたいですから、便利な世の中になりましたね。……これって捜査に関係あります?」
権藤は目の前にいる真崎に疑いの目を向けながら尋ねると、彼はニッコリ笑った。
「いいえ、実は最近、事務作業が多いので眼鏡を買おうと思っていたんです。自分のまわりには眼鏡をかけている人がいなくてつい……」
「本当にぃ? 事件の何か参考にしようってんじゃ……」
「とにかく、カレンダーも眼鏡も、現時点で断定ができません。刑事さんが来ても根掘り葉掘り聞いたりしちゃ駄目ですよ?」
「うっ……アンタだって同じだろう? 本当に探偵か?」
「ちょっと訳アリなんですよね」