秋は黄昏マジックアワー。褐色の王子と恋愛混合二重奏

”━ Dear Maikel

招待を受ける。
是非、同行したい。
もちろん、illusion artistとして
参加も可能だ。

USAで、school
『プライベート・アイ』の
コーチングを受けていたまでは
足取りを追えたが、
それ以後は At all。Lostだ!

母親が帰国しているのは掴んだ。
Maikel側に父親がいる可能性は
高いが、
彼女は 母親と帰国したと
考えられる。
Maikelの招待は、来日のexcuseに
なるだろう?

そろそろ No time なんだ。
6th princeといってもな。

10年かかって見付からないと、
もう待ってくれそうにない。
ラストチャンスだ。

楽しみにしている。
All the best!

from Kaiser ━”



マイケルの招待に簡単に
打診して ケイは 側近に告げる。

「イリュージョニスト・ケイの
用意を。Maikelから招聘だ」

庭園が見える執務室。
世界でも有数の広さを誇る
白亜の宮殿の一室。

宮殿は、王族の住まいに
続くだけでなく
国の内閣執務室も 内在する。

ケイが在席するのは、
いわば 文化青年環境省と
いった省庁。

君主制をとる国家は
その権力の全ての省において、
国王が頂点となり、
王位継承権がある王子達が
補佐官を務める。

「王子、今回の来日が 現省での
最後の交流になろうかと、、」

側近が、デスクに座るケイに
進言する。

「わかっている。軍部に就けば
国を離れる事が 難しいのもな」

そういいながら ケイは
側近に執務風景を撮らせている。
王族といえども
国のアピールに SNSは欠かせない
民意をとらえる為、

世界でも随一の豊かさ、
軍や法、医療福祉の清廉さを
オープンにしている。

「海が、透明になる季節だ。」

熱帯性気候の乾季。
湿度も高くなく、カラッと
過ごしやすい昼下がり。

桜のような花の季節が終わった
タベブイアの葉が青々しい。

「クルージングには良好でございましょうが、、いえ、確か
あちらは熱うございましたか?」

執務室にも 菊や蘭が飾られ、
薫りを綻ばせている。

「Maikelの港からコンテナで
輸送しているらしい。
ボトルシップ クルージングは
1、2日だろう。向こうの移動は
他のシップでする様だぞ。」

ケイの言葉に、側近は御意の礼を
とって、侍女が渡した書類に
眉を上げた。

「経済技術省補佐官様が、
1足早く出国され、あちらの
民間企業と 折衝に入られると
スケジュールを変更されました」

第4王子がどうやら先行行動か。

「国王は今日は?」

「抜き打ちでの視察に出られて
おりますが、夕方に戻られます」

国王には妃が4人。
正妃に第1、2王子、王女2人。
第1側妃に第3、4王子、王女。
第2側妃に第5、6王子、王女2人
第3側妃に第7、8、9王子、
王女。全部で15人の子供達。

親族を入れて王族で国の機関を
司る。

「『ティカ』を、今回は連れて
行く。王に承諾を。いけるか?」

『ティカ』は、『運命の鳥』。
ケイにとっては花嫁の鳥だ。

これから、ケイが向かう国は
国家式典が行われ、海外から
賓客が集まり、規制されるはず。

「手続きいたしましょう。
不思議なものですね、まるで
渦のように かの国に 集まり
つつあるようでございます。」

代々ロイヤルクマリを出す一族
出身の側近が 含んでケイに
啓示するのを聞いて

「お前、意地が悪い。楽しいか」

ロイヤルクマリは 今なき王朝、
国の命運を予言するマスターだ。
ケイの国は治安が良い為か、
多人種の移住がある。

「 I know it 。かまわん。
今度こそ拾ってみせる華だ。」

ケイがそう言い放つと、相手は
やれやれとポーズする。

「前回同様失敗の上に 不利益に
なる事態は、勘弁でございます」

本当に嫌味なヤツだ。それでも
この Excellent friendsには
頭が上がらない。

黄昏時、
グラデーションに
変わる空に 照らされて
白亜の宮殿が
オレンジ色に 染まるの頃、
全ての用意はコイツに成され、

オレは
最後の渡航に出る。

その時コイツは
静かに笑みを湛えながら
オレに 告げる、いつもの様に

「スラマット ジャラン。」

とな。


「 Hi☆ !アサミ↑↑カモ〰️ン」

ライトブラウンの巻き毛を
揺らして、ケイトウが
手を振ってる。けどさ、
頼むから やめて欲しいかも。

ほら、
そのケイトウの隣にさ、
ダレンも座ってるから
目立つんだよね、
見目麗しい ハーフ2人組って。

「Hey、アサミ!!↑↑」

再び呼ばれる。

ケイトウは、北欧系のハーフで、
ダレンは華僑系ハーフなんだ
ってさ。
ともあれ、
けっこう有名なんだよね。
2人はさ、きっと自覚ないけど。

「ごめんなさい。遅れて。」

謝って、ケイトウの隣に。

ケイトウは ハーフならではの
色白でもって、
瞳が 光の加減で
グレーっぽくなるし、
ナイスバディで バグしてきてさ。
女子でも
ドキドキな 胸がすごいわけ。

見たら、うちの同僚 お嬢さん達が
めちゃくちゃ見てるって。
ヤバい。

「ケイトウ。ディスタンス取れ。
そして落ち着け。迷惑だろう。
ムダに、目立って、仕方ない。」

そう口を弓なりにする
亜系男子よ。
人のこと言えない 目立ち加減
だと
思うけど? 君も。

だって
何て言ってもさ、
ツーブロックすっきり
襟足ヘアに
グレーのカラーシャツでさ
合わせたネクタイが、
パープルだから!!
お洒落インテリモンスター
止まらないよね。

さらにさ、
前下がり長めに
グラデーションカットした前髪を
かき上げて、
切れ長流し目をしてくるわけ。

終わった。

『ZUQUUUN!!』

ほらね、
後ろの 同僚お嬢さん2人が、
射ぬかれた。
もらい事故反対!

ここは いつも通り、
目立たず大人しく=無言貫く。

今日は、グレーのブラウスに
しておいて良かったって、
影に撤するつもり。

なのに、ケイトウはさ、
容赦なく聞いてくるわけ。

「アサミ!今日、いつもの ランチ
ボックス 持ってないですの?」

キラキラ好奇心の塊ワンコだよ。

「ちょっと今日、、時間なくて」

というわけで、手に持つトレーを
上げて示す わたし。

「アサミ姫、は、彩り野菜の
バターチキンカレー定食だな」

一瞬殺気を送ってしまったのは
ご愛嬌。『姫』呼びさ、
止めてよね、ダレン。

「ラッキー!ポークビネガーと
悩んだヤツですわ、
アサミ!シェアプリーズ!!」

ケイトウは、言ってる側から
カレーを掬ってるって。

はあー。
タメ息つくけど、ダレンがさ、

「ケイトウのポークビネガーを
3分の2は貰っても良いと思うぞ」

ってアドバイスしてくれたから
遠慮なく ケイトウの皿から
わたしの 皿に 引っ越し
させてやったよ。ふん。

タラのレモン味噌焼き、ね。
ダレンは
美味しそうに、流れるかのように
綺麗な手つきで 食べてる。

『あ、この間 ご一緒したーー
やっぱり!たまに、あたし達も
ランチここで食べるんですーー』

後ろが騒がしくなったと思ったら
うちの同僚お嬢さん達が、
やってきた どこかのメンズ組に
話かけてさ、
引っ張り こんだのか。

『あれ、そうなんだ。オレ達は
いつも 使ってるけど、じゃあ
これまでもニアミスしてたね』

どうやら、昨日の
合コンメンズの次期エリートか。
あ、かじきのバルサミコソース!
選んでるよ、メンズ。
それと、チキンカレー
わたしは かなり迷ったのよ。

このヒルズビレッジの
オフィスタワーは、
いろんな企業が入ってて、
そのうちの1つに
社食の委託会社がある。

このフロアは、その会社が
シェア・カンパニーダイニングを
オープンしてて、

タワーにあるオフィスならさ、
料金を払って使えるよ。

さすがに社食専門だけあって、
メニュー豊富で、
ダイニング内装も お洒落。

「ケイトウ。ポークビネガー焼き
美味しいよ、ありがとう。」

いつもは お弁当で、
タワーの至るところにある
ブレイクコーナーでランチ
なんだけどさ、
週に何回かは、ケイトウとダレン
2人組と ランチする。

「ドウイタマシテ!
シェアさまさまですわ↑↑」

わたしは、お弁当だから
2人は、外に来るキッチンカーで
わざわざテイクアウトして
合流してくれるからさ、
いい人達だよ。

「ケイトウ、どういたしまして。
だろ。残念なことになってるぞ」

「ノー、シャラップ!ダレン!
コジュウト、重箱つつくですわ」

ギャーギャーと言い合いして
相変わらず仲が良い2人。
黙って、彩りバターチキンカレー
食してると、ついついさ
後ろの声が聞こえるんだよ。


『今度また、この間のメンバーで
ご飯しませんかぁ。新しくーー』

ゆるふわボブのお嬢さん、
グイグイいくよ。
そっか、
普段はこの同僚お嬢さん達さ、
外の 噂のお店とかに
ランチ行くから、
本当は ここで会わないわけ。

けど、合コンメンズが
シェアカンパニーダイニングの
常連ってリサーチかけて、
ランチエリアを
変えてきたわけか。

当分ここは、使えないよね。
あまり接点欲しくないからさ。

「しかし、アサミ姫が、手作り
ランチをしてこないとは、何か
あったのか?体調悪いとかか?」

後ろに聞き耳たててたら

ダレンが、
グラデーションカットした
前髪ごしに 目を細めてさ、
聞いてきた。

ケイトウとダレンも
ここのギャラリー会社の
人達って、どうも鋭い。

「元気。大丈夫。本当、朝の
ジョギングに 時間とられただけ」

さすが、『ギャラリー探偵』とか
言われるオーナーがやってるさ
会社のスタッフだよね。

きっと、些細な事に
気が回らないと、アートなんてさ
扱えないのだろうけど。


「Really?アサミに何かなれば
シオーンに、怒られるです!」

そういってさ、
ケイトウは わたしのおでこに
手を当ててきた。

はは。

わたしって、職場にも友達いない
のに、この目立つハーフ2人と
仲良くやってるのは、
一重に、高校?の同志
『シオンちゃん』のお陰。

シオンちゃんが働いてるのが
この 2人も所属
アートギャラリー『武々1B』
だったから。

シオンちゃんは 本部がある、
石川に勤務なんだけどね。

「ちゃんと、明日はお弁当持って
いつも通りブレイクコーナーで
ランチするから、、また 誘って」

そう、言ってるのに

「本当に大丈夫か?」

ダレンは 何探るかな?

「ダレン!熱も、アサミは
ないですよ!明日、 うちの
フロアのブレイクラウンジで
ランチすればいいですわ↑↑」

う、うん。連チャンか。
しかも、
2人のオフィスフロアね。
ダレンが沼ハマりしてるさ、
お抹茶のお手前を拝見する
ってことね。

「じゃ、明日また ランチでね。」

食べ終わったトレーを
片付けに行く。

あ、同僚お嬢さん達、ランチ
終わりに見事、メンズ達と
ブレイクコーナーに 移動か。
良かったねっと。

ん?そういえば、始めてかも、
ここのメニューを食べたの。

そんな自分に、気がついたら
ふと ダレンの視線を
感じた。

この亜系イケメン、
今朝のジョギングでの事、
知ってる?まさかね。

わけないか?
そんなわけないよね。何?!

見透かされてるみたいでさ、
今朝の事
思い描けないよ。


「イリュージョニスト・ケイ様
この度は当ホテルをご利用、
有り難うございます。こちらが
ホテルバトラーになります。」

「Nice to meet you
長くない滞在だが、世話になる」

Maikelが今回指定してきたのは、
この国で3年に1度行われる
国際芸術祭=トリエンナーレ。

東からの入国は国内式典で、
規制が厳しいが
西の瀬戸内海で 長年開催してきた
アートフェスティバルの
親善アーティストなら、
エコボトルシップとして
来日もしやすかったというわけだ

「このホテルも何度目だ?」

笑える。冗談じゃない。
こんなはずじゃないだろ?
どこまでunlucky loopなんだ?

ケイは 国際芸術祭の
招聘アーティストとして
夜の 神戸、ラグジュアリーな
バスルームに 薔薇の花びらを
泡立てている。

濡れて 黒髪に短いウェーブが
かかる。

「、、、fireworksか。」

褐色の肌をジャグジーに 浸けて
眼下の港 景色を 見ていると、
埠頭の あたりで、急に 青い花火が
上がったのだ。

ちょうど前日、国王の生誕祭で
花火を打ち上げたケイには

「Blue fireworks、祈りだな」

御祓をするかのように、
普段からのmilitary trainingで
ついたほどよい筋肉の身体に
水を浴びて
祈りのポーズをする。

港に上がる 噴水のような青い花。 サプライズ花火なるものが
咲く神戸港。

港は、モノと ヒトと、
エネルギーの 集まる場所だ。
ここは
島国、日本の貿易の 出入り口。

山側の窓 からは
100万ドルの夜景が 広がり、
ジャグジーは 海側の窓。

船で、海外間の物流が
なされるが当たり前の
24時間稼働する港都市。

「もうボトルシップも到着か。」

ケイは、シャワーで濡れた髪を
用意されていたタオルで 乾かす。

ふと昔の古傷が疼く気がして
もう一度シャワーをかけて
足を見つめれば、
愛おしい違和感はなくなった。

「Last oneだ。」

そう独り言を 言って、バスから、バー カウンターに 裸で 出て、
ケイは、セラーを開ける。

タワーの形をしたペットボトル。
KOBEウォーターを見つけ
キャップを開けた。

「この、ポールアートクリスタル
ボトルを見るのもlastかもな。」

そうして、ケイは
ペットボトルに 口を着け
改めて KOBEウォーターの
ボトルを 見つめた。

窓の外には、
観覧車の鮮やかな
イルミネーション。

かつて、
神戸港は世界トップクラスの
コンテナ港湾だったにも
かかわらず。
阪神・淡路大震災に見舞われる。

またたく 間に、
韓国・釜山港が トランシップ港に
代わってしまった。

「お陰でMaikelの港から、
問題なくコンテナ船でシップは
海運できた。ここからも、この国
なら、すぐに島へ出れるだろ。」

まだ、世界には
AIを使って 港湾の
ターミナル運営を している国は
存在しない。

『AIターミナル』

エコ化の流れで、
RORO船舶という、自走コンテナ
による国内輸送の活用も 積極的に
取り組まれている。

この港からなら、国内への
船舶動線は多い。

『ブーッブーッブーッ』

ケイの電話が到着を告げた。
ラウンジでMaikelと落ち合う
予定が表示されるのを
ケイはチラリと確認して、
カジュアルなスーツを纏って
ドアを出た。


「あ、武久で~す。悪いけど、荷物まとめてくれるぅ?残りは~
船に運んでぇ。3分でフロント
降りたいなあ。ごめんね~。」

廊下にでると、そう多くない
スイートドアが並ぶ1つが
開け放たれて、慌ただしい。

「Hotel handmaidenか?」

ドアから 覗くと
部屋には、着替えや資料、
主が滞在した日数分だろう、
荷物が 散乱している。

「遅刻は不味いよねぇ~。」

と、鼻歌まじりの主の言葉が
クローゼットから聞こえて、
ケイは
I'm sorry 。とんだguestだと
ドアから離れて ラウンジに
向かった。

「Art festivalの間は もう一度
この西を探す。last chanceだ」

神戸港。
港を通って モノやエネルギーは
運ばれる。

港を人は通過する、日常物資も
とてつもなく 多い。

砂の中から、華の跡を探す旅を
続けて10年。その為に
国際ボランティアに席を置いて
文化交流と 世界を回った。

国に責務がある自分が動くには
名分がいる。

イリュージョニスト・ケイは
運命の鳥を連れて
最後の航海へ出た。

サヤ ナク ジュンパ カム。

空には秋の雲。
ひんやり爽やかで、鳥の声がさ、
澄んで響く。

早朝のジョギングは 毎日の
ルーティン。

シューズ履いて、
黒髪をポニーテール。

下町でも 大きめな商店街のある
メゾネットの 近くには
大きな川が流れていて、

『おはようございます。』

河川敷をジョギングすれば
パピー犬のお散歩する人に
出会ったりする。

雨でないならさ、
モーニングピクニックで、
河川敷のベンチで
朝食も 取っちゃうよ。

狭い部屋で食べるより、
ずっと健全なさ、
青空ダイニングってね。

水筒にお味噌汁。
おにぎりを作って
ジョギングポーチにセット。

少し上流にいけば、
大きな公園もあるけどさ、
ジョギングロードにある
公園でも わたしは、十分 。

季節の花々がちゃんと咲くし、
夏には花火も見れる場所。

だからさ、
今の時期は 秋桜畑なんだよ。
まだ、蕾だけどね。

『タッタッタッタッ』

体力作りにも、趣味がてらにも
ジョギングは丁度いい。
なんてったって
タダだし。

この土手とか、
ドラマにでてくるけど、
つくづく都心で
数少ない水辺の癒しだなってさ、
思ってる。

で、今朝なんだけど。

土手から 朝の川景色を
眺めて ランしてたら、

川際に引っかかる
ヨット?が見えた。

「何?あれ?」

たまに、いろいろ
川をカヌーみたいなのとか、
競艇より大きめのボートを
見たりするけど、

「白っろっ!
そして、へんなヨット!」

思わず、声にしてしまった。
独り言とか とうとう ヤバいって。
誰もいないから
セーフだけどさ。

で、
土手の上から 寄って覗きこんで
みるけど、、、。

「ペットボトルの船?」

見間違いじゃなければ、
ヨットの船体がさ、
ペットボトルなんだけど?
どーゆーこと?

なんかの撮影?芸人さんとか
ネットインフルエンサーとか?

朝早いからか、
今なんか 全然人がいないのが
ちょっと気持ち
無防備にさせるのかも。

ついつい、
土手から降りて、
川際のペットボトルシップを
見に近づいたらさ、

「人いる、って?!」

独り言とか言ってらんない。

だってさ、
中に人が 1人で うつ伏せに
倒れてるんだけど、、
それとも、寝てるだけ?

動かない人を、怪訝に思って
背中をよく見るよ。
死んでそうなら、警察に電話する
しかないからね。

んーー。
目を凝らして、皿のように
見つめて、よく見て、
息してたら、
上下に動くはず なんだけど、

『グルッ!!』

「ぎゃっ!!」

その人、仰向けになった!
わたし!へんな声でた!
回り見て、誰もいない。
良かった。変な声聞かれてない。
凄く葛藤したよ。

あ、この人は聞いてたか?
そうだ、
死んでなかった。
なら、大丈夫か。

そう、思って また走りだそうと
した時、

「sorry、、something、 to eat
、、 フード、、ください、、」

男性の弱々しい 声が 聞こえた。

ボートで漂流してしまった人達?
海辺なら 分かるけど、いや、
海辺でも そうそう 見ないけど。

振り返って、、聞く。


「Are you hungry?」

さっき、英語だったよね。

「・・・・」

応答なし?!力尽きた!?
勘弁して!、

「コレ あげるからさ!」

しゃーない。
ウエストポーチを外して、
それごと ボートん中に
ピッチャーよろしく 振りかぶる。

「 It's food!食べて!」

そう 相手に叫んで、放り込んだ。
もちろん
頭に当たらないようにしたよ。

わたし、運動神経いいんで。

「食べなよ!」

わたしの 朝食ちゃん。

ほうれん草とコーンの白味噌汁に
ごま油と自家製マヨネーズの
おにぎりちゃんだよ。

ああ、朝食が。
遠く カーブを描いて

『ガゴッ』

上ー手く 男を避けて、
朝食入りのウエストポーチは、
船内に 落ちた。ナイス。

本当なら、まずは水、
なんだろうけどね、ないから。
ゆるして。

その人は、
気力振り絞ってそうな感じで、
上体を なんとか お越して、
モゾモゾと
ポーチに手を掛けた。

良かった。
水筒と ポーチポケットの
おにぎりをさ、なんとか
食べ物って認識したみたい。

一応、心配だからさ、
見ておくと
上手く、水筒を開けて
味噌汁を 脇にさしておいた
スプーンで食べ始めたからさ、
もう 大丈夫だろうね。

「日焼けしてるなあ。」

ついね、出たね。
だって、ボッサボサの
髪は黒いけど、なんとなく
日本人じゃないみたいに
感じる。食文化とか大丈夫かな?

空腹ならさ、とにかく
食べるよね。なら、

「じゃ、バーイ!!」って

手を振って、わたしは、
ジョギングの続きを 再開と
走り去ろうとした。

ん?なんでペットボトルの船?
まあ、いっか。じゃ、

「sorry!!」

え、止めるの?

こうして よく 見てもさ、
髪とか髭とか伸びて、
顔の半分は よくわからないわけ。
不審者なのね。

浅黒いっていうのかな?
その男性が、おにぎりを
日焼けした手に
持ってさ
引き留めるわけ。だから

「No worries! いいからさ、」

って、変に巻き込まれも
嫌だからさ、
手を振って そのまま
「食べて行ってよっ」てさ
したのよ。
違うって?何?まだある?
へんな人なら
一目散に 逃げるべしだよ!

「シー、ポリス。Tell me、
教えて、、、ください。」

「へ?」


何?シー・ポリス?
捕鯨のなんか団体?違うか。
わ、ペットボトルの船って、
どっか抗議とか?

よくわかんない
何それっ。警戒しつつもさ
気になっちゃうじゃない?
身を滅ばす好奇心だよ。


検索したら 水上交番だってさ。

そっか、湾岸警察署ってさ、
水上警察なんだ。
てっきり
湾岸にある『警察署』なだけ
って思ってたよ。

なるほどね。
この川の向かいちょい上流にさ
確かにあるよ、水上交番。
初めて、知った。

「I will call。わたし電話します」

耳に電話あてて、自分を
指差すジェスチャー。

不審な船が 遭難してますって、
ってね。
説明しますよ。はい。

そんは不埒を事を考えて、
へんてこな
真っ白い、ペットボトルの船に
向かって叫ぶ。

『 キューーーイキュィーーーーー 』

ああ、鳥が 飛んだ。

秋の早朝は、空気が澄んで
思いの外 わたしの声が
響いたらしい。

その人も、なんか
ビックリしたように肩を
一瞬揺らした。

それでも、わたしの
言った言葉が 理解できたん
だろうね。

凄く綺麗な白い歯をニカッて
見せながら、

「ありがとう、God bless you。」

って 笑った。
そうか、褐色の肌ってさ
いうんだ。

それが今朝の話で、
これがさ
自称 『魔術師ケイ』との
初めての出会いで
ファーストコンタクトだった
って話。


「 Oh my gosh!!マジか!」

Shit!!Crow!Crow!Crow!!
海猫に、鳶は気にしてたのが、
クロウだと!Cityに近づいたら
これだ!

ケイはペットボトルシップの上で
暴れ回って、カラスを払うが
すでにテーブルの食糧は、

「It's 、、empty、、」

散乱した床に
そのまま仰向けに
倒れて、ケイは額に片手を
当てて凹む。

「Crowめ!!hair setもボロボロ
だ!!ハゲるだろうが!!」

ボトルシップには簡易の屋根が
しっかりついていて、
1人分のテントやアウトドア
キッチンも出来るのに。

秋の空に嘲笑うかのカラス群。

「・・・・・」

航海最終日。確認で
甲板のピクニックテーブルに
残りの食事を出していたのが
裏目に出た。

甲板は ひんやり爽やかで、
ティカの声が澄んで響くのが
わかる。

薄色のサングラスも 光って
カラスを刺激したのか、
乱闘になった。

「・・・・・クソ!!」


神戸や 大阪の国内長距離船路は
多く7路線あるのに、
東京からの国内長距離は
2路線。
九州~徳島~東京区間で、
ボトルシップを連れてケイは、
一旦徳島から
フェリーにシップを運送させて
有明港に着いた。

そこから、シップを湾岸の
運送港へ運んで 陸路で
目的地に運ぶ予定だったのが、

有明から運送港までに
すぐには運ぶ事が
ターミナル事情でならず、

自らシップを海で漕いで
運送基地に進んでいた手筈。


「・・・Impossible、、」

早朝の川を 逆流して登る
オートモーターモード。

「Maikel、、覚えてろ。」

お前がよけいなschedulingする
からだぞ。

ケイは、仰向けのまま
不機嫌極まりなく目を閉じた。

船が水漕ぐ音だけがする。

~~~タプン~~~~~~タプン、、



『Kei!このままbottle shipで
Tokyo まで行ってみない?ほら、
そんな Pitiful faceしないの。
Destiny partner?まだ見付から
ないの? もうgive upなさいな』

ジプヨハダ~って言われたぞ。
ストーカーって事か?

『企業PRにbottle shipがコール
されたから、driverね。OK?』

クソ!PrinceをDriver だと?!
crazyもいいところだ オマエ

「・・・」

寝転がったまま 鳥かごに
手を伸ばすと、
白いオカメインコが 寄ってくる。

「『ティカ』。お前も ジプヨハダ
~ってオレに鳴くの か? 」

粘着男だと笑うか?
結局、1ヶ月かけてgathering
して 見つからなかった。
又、海外に出てしまったか?
Time limit、なのか。

ここ何日かは
船上で 捜索依頼のgatheringに
目をとおすも、目新しい
モノはなく。
カラスの襲撃で 心身ボロボロ。

Homelessだな、これじゃ。
もしくは、Drifter ー漂流者ー。


「いや、『ガンカケ』もした。 ceremonyが終わるまではいける」

静かに、目を開いて自分に
言い聞かせて
ふと ケイは 景色に気が付いた。

ん? これは何処まで登ってる?
しまった!上流にきすぎたか?

ペットボトルシップから
体を起こす。

「これは、行き過ぎだろう。」

オートモードをcut!
モーターをstopだ!!

ケイが あわてて
GPS確認をしたら、切れてる!

「No chargeか!クソ。」

充電するには ボトルシップに
つけられたサイクルを漕いで
発電させないといけない。

目的の物流倉庫港をさらに
登って河口を来ているのは
ケイにも見当がついた。

ふだんならない 己の失態に
ケイは へなへなと 今度は
うつ伏せに 寝転がる。

「Arakawa River 侵犯だな、、」

『キューイ キューイ』

広い土手を 朝靄の中
人影が ランニングしている。
川際にshipが引っかかる
気配がしても、

ケイは動く気力を失くしていた。

一気に萎えたぞ。
Shit!!Crow!Crow!Crow!!
オレのmorningを 返しやがれ!!

うつ伏せの無動の割には
心中は罵詈雑言をカラスに
投げつけているケイの頭に、

『キューーーーイ、キューーーーーイ』

ティカの独特の鳴き声がした
気が、、して

グルッ!!っとケイは
体を上に向けた途端、驚きの
声がしたのを聞いた。

「ぎゃっ!!」

!!!!

なんだ!へんな声がしたぞ!
あん?、そんな事はいい!
ありったけの気力を使え!オレ!

「sorry、、something、 to eat
、、 フード、、ください、、」

ケイ自身、
信じられない弱々しい 声が 出た。

相手の そのLady voiceは、
重ねて ケイに
思いがけずとう感で聞いてきた。

「Are you hungry?」

なのにケイは
応答せず、尽きた気力を 、
「・・・・」

と思っていたケイの耳に


「コレ あげるからさ!
It's food!食べて!」

叫んだセリフと共に、
何かが放り込まれた?!だと?!


「食べなよ!」

遠く カーブを描いて

『ガゴッ』

上ー手く ケイを避けて、
彼女が投げたウエストポーチは、
船内に 落ちた。

、、ナイスだな。
どんな剛肩してるんだ?Lady?

ケイは
失くなった気力振り絞って
上体を お越し、モゾモゾと
投げられたポーチに手を掛けた。


Water bottleに soup、
これは、オニギリじゃないか?、
ほうれん草とコーンのミソsoupに
Sesame oilとmayonnaiseの
オニギリだぞ!

ボッサボサの乱闘跡
残る黒髪のままに
無力感から空腹に負けて
ケイは 無心で それを食べる。

そんな オレに オニギリの
女神は

「じゃ、バーイ!!」

と手を振って、なんなく、
ジョギングの続きだったの
だろう再開して、
走り去ろうとしたから、

「sorry!!」

慌てて声をかける。

彼女は不振だろう、
ボロボロの髪とかのびた髭とか、
サングラスで顔の半分
隠れている人間だ。

だから
「No worries! いいからさ、」

手を振って そのまま
「食べて行ってよっ」と
逃げそうにされたが、それは
困るんだ!!Because、

「シー、ポリス。Tell me、
教えて、、、ください。」

情けない。


少し間があいて 何か調べてから
彼女は、

「へ?ああ、ーーー!!
I will call。わたし電話します」

耳に電話あてて、自分を
指差すジェスチャーで

オレがいる ペットボトルの船に
向かって叫んだ。

途端に、
ティカが、鳥かごから

『 キューーーイキュィーーーーー 』

あの鳴き声を あげた。

秋の早朝は、空気が澄んで
思いの外 ティカの声が
響く。間違いない。

運命の声 だ。


思わず肩を揺らしてしまう。
彼女に鳴いたのか?

いや、この近くにいる人間に
かもしれない。
だが、どちらでもかまわない。

彼女は、探し人ではない。
彼女に 探し人の面影は、、、

今、気が付いた。
10年すると 記憶は
曖昧になるんだな。

「ありがとう、God bless you。」

重なるようで重ならない。

これが
『田村 あさみ』という彼女との
ファーストコンタクトだ。


それが、ね。

昼休憩から帰った後がさ、
酷かった。

どうしてさ、こうなったよ?
今ってさ何時よ?13時半ぐらい


わたし、田村アサミは
目眩を覚えながら、
7階への階段を
全力駆け上がっている。

状況を説明すると、
30分前に 話を戻せばね。


昼食を終えて
シェアカンパニーダイニングの
ランチトレーを 片付けて、

まだ休憩時間が、残ってたからさ
ロッカールームで
すき間読書でもしようと、
6階の 我がバンケットオフィスに
戻ってきたわけ
なんだけどさ。

オフィスに入った途端さ
不穏な空気全開よ。

『はい!はい!解っております』

聞こえてきた、ミズキ先輩の
不機嫌な電話応対。

え?ミズキ先輩、休憩は?
取ってないの?ブラック
まっしぐら?

『ガチャガチャガチャ、タンッ』

電話しながらのー、ミズキ先輩の
PC=イライラタッチ音。

これさ、絶対不測の事態勃発よ。

「ミズキ先輩、、
もしお昼まだなら、テイクアウト
してきましょうか、、、」

電話が終わったであろうさ
タイミングで、
ミズキ先輩に声を掛ければよ


「あ!タムラさん!良かった。
悪いけど、 緊急の案件が
出来たの。リミットは夕方の
メディアが動くまでになる
から手伝って欲しい。いい?」

電話を 放り投げてのさ、
わたしへのヘルプ要請よ。

げ、夕方って今日18時の?。
と思うけどさ、まずは
ミズキ先輩のお昼を買いに
シェアダイニングに、
とんぼ返りよ。

で、
わたしがさ、手にランチ入りの
袋を下げて戻る頃にはさ、
オフィスは 更に
怒涛のカオスに化してたよ。

「課長!搬入はとりあえず
エントランスホールにして
ください!でないと、これ以上
会場対応に支障が出ます。」

課長に詰め寄る
ミズキ先輩のデスクに、
お昼の入った袋を 静かーに、
置く。

「ミズキ先輩。あの、まず
買ってきたので、、お昼、
食べて、下さい。
その間、状況教えてもらえば
ヘルプ、入りますので、、」

ミズキ先輩が、課長に迫る内容を
鑑みて、わたしがさ
おずおずと、手を上げたわけで。

まずはさ、クールダウン。ね?

「それもそうね。」

と、ミズキ先輩は わたしの姿を
今ようやく捉えると、

「ステイ、ステイ」とか

酩酊しているように、
ぶつぶつ呟いて
テイクアウトの
サンドイッチを口にねじ込んだ。

ダメだ。ミズキ先輩がさ
こんなにポンコツになるってさ。
よっぽどだよ。

そうこうしているうちにさ、
同僚お嬢さん達も
『『お昼頂きましたー』』
とかいって
お昼休憩を上がってきたので、
合流。合わせて
まず説明が始まった次第。


「まず、急遽。レセプション
メインの メディア会見を、
開く事 になりました。
会見主は、このヒルズビレッジ
所有財閥企業。 内容は、
環境省が発表した。バイオプラ
国内生産制度に 呼応して、
ペットボトルシップ 会見です。ここまでは、大丈夫?」

ミズキ先輩、怒りでさ、
手のサンドイッチ
『グチャっ』て握り潰して
ますよ。って、

今何か、覚えのあるモノがさ、
話にでたような。
嫌な汗が、、

「ペットボトルシップという
エコシンボルを招聘し、
企業で国産バイオプラ生産を
宣言する主旨となります。」

同僚お嬢さん達もさ、
ミズキ先輩の 潰れたサンドイッチ
目が釘付けよ。
てか、
ひえ!!今朝のペットボトルの
船のこと?そんな大それたヤツ、だったの?
で、なんでうちなの↓↓↓
あ、各国要人がさ、いるからか。

「我々は本来なら メディア会見
場所のセッティング。これだけ
でも!急な案件モノだけど、
加えて、残念ながら バンケット
コーディネートも
丸投げされました!!!」

あー、そりゃ、ミズキ先輩もさ
切れるよね。
でもさ、
今からじゃあ、どこだってさ、
自分とこでやりたくないよ!

時間ないじゃない!15時、16時
の世界だよ!

「問題は、ペットボトルシップ
現物をレセプショ 展示する事。
私的には、
タワーロビーエントランスに
置く事を課長に談判中です。
以上、質問は?
すぐ 己の任務を構築して、
動きを申告してください!!」

マジ切れてる。同僚お嬢さん達さ
真っ青越えて白、
灰、灰だよね。

でも時間ないのは
変わらない。とっとと、やろう。
船は来てるしさ、
指示待ちよ。

「ミズキ先輩の案に、わたし、
、、賛成です。
ペットボトルシップも、
座トレで、ステージを簡易作成、
スタンションポールが立てば、
展示らしくなりそうだと、、。」

換気もいいので、
この時期の会見でならかえって
好印象だとも、
控えめに 付け足しとく。
あとは、メモ書きで、
ミズキ先輩にさ、

会見用ライティング台、
メディア椅子、ホールから
下に下ろせるよう、
人員の依頼を、希望と、

展示パネル作成や、
メディア用フライヤー資料は
外注提案を箇条書きして渡す。

ミズキ先輩は、一瞥して

「そうね。そうすれば、
メディアへの告知関係だけを
会見主の企業広報に、依頼も
しやすいわ。これで、いきます」

ミズキ先輩経由で、すぐ課長に
承認もらう。

バンケットで御用達便利屋に
そっと連絡。
14時に来てよ!
派遣会社を通してじゃあさ
間に合わない。

「外注の当て、ちゃんとあるん
でしょうね。もう、数時間の話
よ、普通はアウトでしょ。」

ミズキ先輩の眼光が刺さるよ。
でもさ、すぐ頭に浮かんだのは、
ギャラリー『武々1B』。

「確実と、、は言い切れません。
まず、、お願いして、きます。」

オフィスに数回行ってさ、
大判のプリンターや、印刷機器が充実しているの知ったよ。

ギャラリーで作品展示してさ、
展示パネル資材もある。

「いいわ、そこに当たるしか
ないんだし。任せます。問題は、
急に取材陣が 集まるのかと、
そのために 必要なる、派手な
オープンレセプショーへの
何かだわって!できるか!!」

あ、ブチブチ切れ。

おお、
ゆるふわボブの同僚お嬢さん、
検索してるね。

「ゆるキャラとか、ナチュラ
リスト著名人トークショーが
ふつうあるのですよね。でも
今から頼むの、無理ですよー。」

課長に、タワー警備室に、
ロビーエントランス使用諸々
提出書類を承認してもらいつつ、

「なくても、、ミズキ先輩。
、、最悪メディア会見は、
その、出来るようしますね。」

とにかくさ、
夕方のニュースに乗せるには
もう時間との戦いなのよ。

「その通り!!最低ラインを
死守して、準備!
タムラさんは、外注とタワー
警備室、ホール備品、
手配人員でセッティング。」

はい!ミズキ先輩。
それと、もう1つメモですよ。
さすが、
ミズキ先輩は、再び一瞥して

「貴女達は、依頼主の財閥企業
広報へ交渉して、 メディアに
取材の手配をお願い する。
テレビに来てもらわないと
意味ないから重要。会見資料も。
はい、散って、すぐ 動く!!」

はい、そうです。

どうせなら同僚お嬢さん達に、
財閥企業のオフィスへ行って
もらうのが 最良。

上の階にいけば行くほど
イケメンエリートに
会えるだろうしさ。

『キャー、最上位オフィス!!』

モチベーション、さ
凄い、ダダ上がりだね、はは。


わたしはさ、1つ上の階に走る。

あそこなら、メディア資料の輪転
かけも、パネル作成もできる。

「はあ、はあ。ごめんなさい。
ケイトウ、ダレン。ちょっと
仕事の方で助けて下さい。」

時間が惜しい、
電話かけながら、
1つ上の階へ、階段を駆け
登って、
ギャラリーのオフィスに
出現!

「Oh!アサミ!どうしましたの!
階段で、きたのですね!ダレン!
飲み物プリーズ。アサミ汗だく
エマージェンシーなのです↑↑」

ケイトウがさ、
オフィスのスキップフロアーから
飛んできてくれる。
いい人だよ。

わたしは、状況を伝えて、
お願いする。

「ありがとう、ごめんなさい。
とても急ぎで、外注扱いで
パネル作成と、このオフィス
印刷機で、資料を100部刷って
欲しいんです。こんなこと
お願い出来る義理ではないと
思うんですけど。」

このオフィスは、
基本 この2人しかいない。
それもあって、依頼もさ
しやすい。ごめんね。

「ペットボトルシップ?ケイトウ
確か、本部組がクルーズ
ギャラリーで参加していた、
トリエンナーレで、そんな話
シオン姫から報告に
あったヤツではないのか?」

ダレンがさ、壁際の
アイアンステップから
『タタッ』って
降りてくれながらさ、
情報くれるのが
さすがだよ。

「Yes!エコアート扱いで
イベントをしたって、シオーン
から、レポートされたですわ。」

シオン!!ナイス!
我が同志!
そういえばさ、なんか芸術祭に
参加してるんだよ。

なら、
ハジメオーナーに直電かけた
方が、情報もらえるぞと、
コールトークして、

ダレンがわたしに
電話を よこしてくれる。

あ、電話の向こうから
ギャラリーオーナーハジメさん
の声、聞こえるんだよ。

「あれぇ?アサミちゃんかなぁ?
ダレンが電話してくれたけどぉ
舟、
そっちにも招待されたんだねぇ。
あぁ~、確かさぁ、
ペットボトルシップでぇ
イベントイリュージョンあった
よん~。 ピッタリだよぉ
アーティストだと思うけどぉ。
私からぁ、
繋ぎとってあげるねぇ。」

じゃあ、窓口はダレンで、
って言われて
ニッコリする?ダレンに
電話を返す。ん?

そう!
神だよ!神きたよ!

レセプションショーにさ
ツテが出てきたよ。
持つべきは、友達の友達はさ、
みんな友達のワ。だよ。

「アサミ!!すぐプリントアウト
する資料をアドレスにですわ!」

ケイトウもさ、ライトブラウンの
巻き髪をポニーテールに
上げはじめてる。
だから
わたしは、ミズキ先輩に
耳で電話はさみながら、
報告して、ジェスチャーで
ケイトウとダレン達にお礼。

諸々をメモしたり、
資料内容を約束をしながら、
エレベーターで警備室に行って、
ヘルプの外部員迎えやら、
音響機材の下ろすのに
動く。

わたしたちの、
バンケットホールはさ
ホテルの1部とはいえ、
半分子会社扱いだからさ、
バンケットコーディネーター
なんて
イベント会社スタッフとさ、
変わらないよ。

まあ、こんな風に
全力疾走な仕事の 空気感はさ
わたしは、
嫌いじゃない。

たださ、色気は、無いなって。
本当心底思う、
けどね どこかでさ、
背中にさ 予感がしたんだよね。
「コレは、何と読むのだ?」

ケイは出されたBusiness card、
ー名刺を手をして
目の前で ヒラヒラと笑う
アイボリーリネンスーツの男に
問うた。

「貴方ならぁ、何と読みますか
ねぇ。興味深いので、是非とも
思う読み方を~教えてください
ね~。ね?Emperor~?」

そうしてウインクをしてくる
タレた目を、興味深くケイは
覗く。

海猫が 鳴く波を越えて、
メガヨットなるクルーザーは
島を目指して 走る。


『 武 々 1 B 』



ケイのシャツが潮風にはためいて
鍛えられた脇腹が チラチラと
見え隠れする。

「オレのKaiserをEmperorと呼ぶ
貴様にDeclarationするが、オレ
は6th prince。Kingにはならん」

当然わかっていますよん。
という顔をして、ハジメは
口を弓なりにして、
褐色の肌に
体躯良く Vネックシャツを
着こなす イケメンに

挑むようにして
続けた。

「ビジネス上のゲストネームです
から~お構い無くぅEmperor。
さて、貴国は英語と中国語の
両方が日常会話ですしぃ。
ぜひとも、読み方を 教えて
下さいよ~。ええ何とでも!」

ケイは 整った顎に片手を
宛ながら

「『ウーウーイーイー』。は!
まるでキナ臭い場所だな。
ギャラリスト探偵のaddressか」

間髪いれずに、
ハジメに応えて、肩をすくめる
ポーズをみせた。

「クック、emperor!なんとも
言えて妙な アンサーですねぇ。
イッツ!グレート!!
『Wu―wu―yiーyiー』ですかぁ
へえ~なかなか良いですねぇ」

そんな
ケイの言葉の押収に 眉を上げて
ハジメは ウエービヘアを揺らして
楽しそうに人差し指を
立てる。

「探偵のいる場所は、キナ臭い
って嫌味だが?まあ、いい」

解ったのは 掴み所のない相手が
このギャラリストだという事。

「酷いなあ~。仕事柄、お客様の
思考を把握する1つの基準です
よん。私が、戯れに付ける 略称
も、オ・モテ・ナ・シ!」

はい、合掌~。とハジメは
いちいちポーズをしながら
ケイに、
さすが 頭に仮想軍司地図を
作る思考は、とか

あの脇腹はヒキョーだとか
なんとか
眼鏡の秘書?に話している。



「ギャラリスト探偵か、」

Maikelと
滞在をしていたホテルの
ラウンジで合流した
ケイはすぐに
芸術が開催されている島へ
渡った。

その先でMaikelに
紹介されたのが今
自分の目の前でワキャワキャ
している
ギャラリストで、
そのギャラリークルーザーに
ケイは Maikelと乗船していた。

Maikelから招聘された
ボトルシップイリュージョンは
まだ後の日程。

ギャラリーオーナーである
ハジメの cool秘書と
愉しげに話すMaikelを
ケイは見て、

Maikelは『ウーウーイーイー』の
Regular customersらしいな。

そう認識した。ふとケイは

「Sherlock、足に ケガか?」

ハジメの両足に視線を落とした。

「emperor!凄いなぁ。
ゲストからは初めて言われたよん
わかるぅ?両足骨折なんだよ~
レディを守って名誉の負傷さ、」

両足骨折?!
何をしたらそうなる!オマエ、
間抜けか。いや、

「sorry。Ladyに足を踏み抜かれた
のか?オレも I remember さ。」

アハハ!と爽やかに
ケイは笑ってハジメの肩を
同志だなと、バンバン叩いた。

なんだ、コイツsympathyだぞ!

「ふ~ん。もしかしてぇ、
emperorって家庭的な
女性がいたら、すぐお嫁さんに
する派なんじゃない?親近~」

今度はハジメが ケイの足を
フフンと 見てくる。

「オマエ、、Marriage hunterか。
まあ、いいが。そうだな 理想は
Homely woman であり、
Country mother なのかもな。
老若男女に慕われるPrincessだ」

そんなケイのセリフに
ハジメ
目の前の王子を 頭のテッペンから、足の先まで 観察する。

「ビックリだよぉ emperor。
なかなか クレイバーなんだぁ」

クルーザーの甲板で 話を
楽しむゲスト達に、
もう1人のスタッフが

「みなさんっ、宜しければ 中国茶など 如何ですかー。水出しで、
淹れてますから。ヒンヤリと
美味ですよっ。さあ ブレイクを」

声をかけて
用意した デキャンタセットを、
運んできた。

「ああ、シオンくんありがとぉ。
じゃあ~emperor、あちらにぃ」

水出しで
キリッとした風味がの
爽やかな 茉莉花茶だ。

島風が、ケイの黒髪でなびくと
ケイの ムスクの薫りと
茶の薫が交わって
より オリエンタルな風になる。

ハジメが その鼻腔を
擽る風に 目を細めた。

「Sherlockの言うとおりだ、
美味い。腕の良いWatsonだな」

ケイが黒髪を掻き上げて
ニコッと白い歯で笑えば、

ギャラリースタッフの女性陣は
思わず見とれている。


なんだよぉ、余裕縮尺今度は
イケメンemperorだぁ。

ムカつくよね~!と ハジメが
ケイに 八つ当たりをして、
口の端を ヒクヒクと
痙攣させている。

そんなハジメを フフンと
鼻で笑ってケイが
茶器を 戻す。

ハジメは、あからさまに
拗ねた顔で

「うん、帰っていいよ~♪」と
ケイに意味深げに笑って、

「マリッジハンターにはぁ、
我々の アドバイスなんて 必要
ないのでしょうねぇん。フフフ」

タレた目でジッと 褐色の王子を
意地悪く見つめた。
エントランスホールに静かに佇む
白く クリスタルに光かるような
ペットボトルシップ。

壁一面大型100インチLEDモニター
サイネージが8枚並んで
映し出される映像は

波の揺らぎ、豊かな海、
その波形はまるで、
水中で ペットボトルシップが
誕生を待つように見えて、
息を飲む。

聞こえてくる鼓動、の音と
海鳥の声が 合図とばかりに、
ペットボトルシップの船体

サーーーーー
アウトラインをなぞるように
メカニカルな電子ラインが
ほとばしった。

プロジェクションマッピング!

海中のボトルシップは
七色の骨格を持って
輝きを放ち
闇に形を浮かびあがらせる。

突然 ボリュームONされるBGM。

船の床面に、
四角く切り取られた海が投影。

走るような映像が
動きはじめると、
まさに、ボトルシップが
漕ぎ滑るかに見えて 不思議だ。

投影される水面は
朝の光が煌めく海面、から
飛び魚が 群れなす 昼の海。

そして星降る夜海へなれば、
たちまち
シップの内側から 光の粒子が
吹き出し、船中に充満する。

みる間に
七色の光の羽がシップに
ぐんぐん生え広がって!!

『バシュッ!!』

炸裂する破裂音とスモーク!!

白銀の煙から
1人の白タキシード姿の男が

『ダン』

と、踊り飛んで
一瞬で、
花弁のよう舞い降りた。

呆気にとられているギャラリー。

回りのモニターが
リズムを刻んで
ボーダーにライン点滅をする中、

美しくダンスをするように
その男、マジシャンは、
鮮やかな手つきで
次々にカードを生み出だした!

カードシューティングして
『ヒュンヒュン』と華麗に飛ばされた
無数のカードは、
下に落ちる前に、
『バササッ』
真っ白い鳥にメタモルフォーゼ
して羽ばたいていくのだから
信じられない!

エントランスを周遊したらば、
その鳥達は すぐさま
マジシャンのシルクハットに
すーっと戻って
消えてしまう始末。

そうすれば
ギャラリーは 気がつくのだ。

ボトルシップから、デジタルに
マッピングされた花々が溢れて
伸び出してくると、

今度は 並んだらモニターに、
家電製品や、車、動物、魚が、
星座のように 浮かび

企業のブランドネームが
次第に映し出されていく。

『パチン!!』

マジシャンが、高らかに
指を鳴らせば
スモークから、企業のフロントCEOが出現して、
手を広げて観客に応える。

観客のボルテージは
最高潮に膨らんで
盛大な拍手が巻き起こった。
最高ーだった!

マジシャンは、バッと
白マントを大きく広げ纏ったかと
思うと、そのままマントが
ハラリ、床に落ちた。

もう
マジシャンは 煙と消えて、
同時に白い鳥達が
ピースシンボルのように
いっせいに飛び舞い、
後には
ステージに、CEOが
ライティング台の前に立つ。

そして、
司会が改めてペットボトルシップや、
企業紹介をして
CEOが新しい生活と
時代の到来を、
自社企業は
エコロジーエネルギーの生産で
新展開し、この世界の海原を
泳ぎ行くという旨を
華々しくマイクで
プレゼンテーションした。

完璧だった。

アサミは目を見張って
固まる。

エントランスに常設している
特大サイネージモニターと、
ペットボトルシップ用に、
プログラムされたイリュージョン
プロジェクションマッピング。

マジックファイヤーと
スモーク。

それらが
1人のマジシャンの手で紡がれ
レセプションは 想像を越えた
エコロジカルショータイムに
なったのだ。

その奇跡みたいな
瞬間を目の当たりにして、
アサミ達バンケットホール
スタッフ達も唖然としている。

この何時間か前に 一体
誰が想像できた?!

取材陣達のどよめきは、
最後には
スタンディングオーベーション。

企業への質疑応答は、
急遽、ペットボトルシップ周りに
記者を集められる。
このレセプションに
食い付いたのだ!
夕方のメディアは、一色になる。

カメラフラッシュが
辺りを発光するさまは
さながら
芸能人の囲み取材で、
フロントCEOが
その待遇に
満足たまらんと 破顔してる。

これは、、これは、成功だ!!

取材陣だって どれくらい、
来るか分からないと、
ダレンが
エコエネルギー研究をしている
大学生達に ツテを辿って、
声をかけてくれたりもした。

100席の椅子も埋まって、
タワーに入ってるオフィスにも、
ケイトウが
フライヤーをばら蒔いて
アナウンスしてくれた お陰で
立ち見のタワー勤務先社員で
その椅子席を囲んでもいる。

もう、これは!これは!

「大成功じゃない!やったわ!」

ミズキ先輩が喜びにうち震える。

アサミは、その声に、
腰が抜けるようになって
壁に寄りかかった。

怒涛だ、怒涛だったよ。

タワーオフィスの
ロビーエントランスホールは
3階までが吹き抜けで、
正面には、クロスした
クリスタルエスカレーターが
設置している。

吹き抜けを 囲むように、
下のフロアーを覗く手摺から
アサミ達は、
レセプションを確認していた。

「さあ、各部に無理を言った
お礼参りに行って!!
タムラさんは、備品搬出ある
でしょ!完全終了したら、
外部ヘルプに指示出しよろしく」

ミズキ先輩は、こっちにも
激を飛ばして 自分も動く。

『あ、私達、広報さん達とこ
行ってきまーす。それであの』

同僚お嬢さん達もさ、
ちゃっかり上で、お目当てをさ
サーチしたんだろうね。

さて、囲みの次に取材陣の
写真撮りが はけるのをさ、
もう少しここから、
待つかな。

腕時計と、タイムテーブル表を
見比べて、
何とか夕方のメディア編集に
ギリギリ間にあうかなって
考えてるとさ、

『バササッ』

出し抜けにそれは
わたしの肩に、降りてきた。
おもむろに
それを見るとさ、

『キュイッ!』

可愛いい!インコだ!
真っ白いオカメインコなんだよ!

わたしの肩に、チョコッと
留まって 頭を傾げてさ。

うわ。頭の跳ねた毛!!
しかも 人に、人に慣れてる。
つい、指で インコちゃんの
頭の後ろを なぜてあげる。

さっきのショーの鳥?
鳩じゃないんだね。

あー、スリスリしてくるっ。
萌えたまらん!思わずさ、
片手で、緩む口を押さえて
しまったよ。と、

『キューーーーイ、キューーーーーイ』

真っ白いオカメインコちゃんが
高くて長い鳴き声を上げた。

なんだろう?

鳴き声を不思議に思った時、

フワリと肩に 感触を感じて、
その わたしの 耳元に、

「ーー捕まえた。」

深い響く声が、、、、、

!!!!!
そのセリフに、わたしは
身体が硬直する。

ぎぎぎぎって、音がしそうな
固さで、体を声の方に向ける。

とうとう、父親を追いかける
者に捕まったのだろうか。

瞳の大きさを変える
コンタクトが落っこちそうに
目を開いたまま、
振り返るわたしの視線は、

思っていたような人物を
捉えてはいなかった。

そこには、
わたしの肩から 両手で
確保した インコちゃんを
胸元に仕舞う
日焼けした 白いタキシードの
美青年がいただけで。

「あ、貴方の鳥でしたか。
すいません。勝手にさわって。」

機械的に わたしは、
当たり障り無い事を 相手に
投げていた。

追っ手じゃなかった。

それだけで、安心してしまった。
その後に

目の前の美青年が、

凄く綺麗な白い歯をニカッて
見せながら、

明らかに、
胸元から出せそうにない
荷物をわたしに
差し出すまではさ。

「ー You are my life saver ー」

押し付けられるように
渡された
ランニングポーチにはさ
ご丁寧に、
洗われた水筒も
ちゃんとセットされていたよ。

確かさ、
『マジシャン』って
『魔術師』を演じる者なんだよ。

貴方さ、
髪と髭で騙した?

ああ、わたしも人の事さ、
言えないんだったよ。
こうして
ここに褐色の魔術師は降臨した。
オレよりもいち早く
入国した4番目のBrotherは
どうやら大手民間企業と
friendship partnerとして
手を組んだらしい。

「まさか、オレがそのreception
ceremonyに華を添えるとはな」

ケイは、
1人エントランスのステージ裏
から、映し出される
プロジェクションマッピングの
タイミングを見計らって
佇む。

エントランスホールには
ケイが乗ってきた
白く クリスタルに光かる
ペットボトルシップが

たくさんのメディアの前で
スポットを浴びていた。

壁一面大型100インチLEDモニター
サイネージが8枚並んで
映し出される映像。

波の揺らぎ、豊かな海、
その波形はまるで、
水中で ペットボトルシップが
誕生を待つように見えて、
何度見ても ケイは息を飲む。

「The best paradise in the world
アザミに見せたいvisionだ。」

ケイの耳に
聞こえてくる鼓動の音。
海鳥の声が 合図とばかりに、
ペットボトルシップの船体を

サーーーーー
アウトラインをなぞるように
メカニカルな電子ラインが
ほとばしった。

「しかし、あの Sherlock から
このillusionの依頼をcallされる
とはな。世界はmiracleだ。」

海中のボトルシップが
七色の骨格を持って
輝きを放ち
闇に形を浮かびあがらせるのを
ケイは確認する。

そう、ここで
突然 ボリュームがONされ
BGMが流れるのだ。
ケイはそれを聞きながら
芸術祭で出会った
ギャラリストの声を
思い出す。


『emperor~!ボトルシップでぇ
首都にいるのぉ?えぇ!?
シップの操縦士もするんだぁ。
あのさぁ、お願いなんだけどぉ
芸術祭でしたさぁ、シップのぉ
イリュージョン、あれぇ、
そっちでもぉ、してくれない?』


船の床面に、
四角く切り取られた海が投影して
走るような映像が
動きはじめると、
ボトルシップが
漕ぎ滑るかに 観客に見せる。

「この last travel は一体何だ? volunteerばかりだ。次々とだぞ」

『あ!!機材とかならぁ大丈夫
そのボトルシップを招聘した~
企業の研究所にさぁ知り合いが
いるから~、そこに何でもさぁ
言ってくれてら大丈夫だよん。』

フン!!
シケた面のタレ目が!!

投影される水面は
飛び魚が 群れなす 昼の海から
星降る夜海へ変わり、

シップの内側から 光の粒子が
吹き出し、船中に充満して、
みる間に
七色の光の羽がシップに
ぐんぐん生え広がって!!いく!


「Yes!!show time だ!あの Sherlock の言いなりは 癪だが!」

ケイが 呟くと同時に

『バシュッ!!』

炸裂する破裂音とスモーク!!
これが、登場のsignalだ!!


白銀の煙から
嫌味なほどに純白なタキシード姿のイリュージョニスト・ケイが

『ダン』

と、踊り 飛んで
一瞬で、
花弁のよう舞い降りた!

呆気にとられているギャラリーに
ケイはハジメがするように
ウインクをする。

「さあ、magic time だ lady?」

ハハ、最前列にいたメディアが
Heart eyeになったぞ。
こーゆーのを Zukyuuun って
言うんだろ?

回りのモニターが
リズムを刻んで
ボーダーにライン点滅をする中、

ケイは、
鮮やかな手つきで
次々にカードを生み出だしていく

「そういえば、あのSherlockが
Dirと呼んでいた男。そうとうな
Doerだな。手配が速く的確だ。
実にけっこう。assistantは、、
Sherlockが 言った通り、脳筋」

ケイは、ククっと
微笑しながら
カードシューティングを
『ヒュンヒュン』と華麗に飛ばして
無数のカードを今度は
真っ白い鳥にメタモルフォーゼ
させる。

『ティカ』も飛ばしてやろう。

エントランスを
周遊した
鳥達は すぐさま
ケイのシルクハットに
すーっと戻ってきた、はず?

おや?ティカが 戻ってない?

ボトルシップから、デジタルに
マッピングされた花々が溢れて
伸び出して
モニターに、
企業のブランドネームが
次第に映し出されていく。


Focus だ オレ!lastだぞ。

『パチン!!』

ケイが、高らかに指を鳴らせば
スモークから、企業のフロントCEOが出現して、
手を広げて観客に応える。

観客のボルテージは
最高潮に膨らんで
盛大な拍手が巻き起こった。
よし!最高だった!

ケイは、バッと
白マントを大きく広げ纏って
マントの影から身を隠して
ハラリと、マントだけを
床に落した。
これで 観客は
ケイが 煙のように消えて見える。

同時に白い鳥達が
ピースシンボルのように
いっせいに飛び舞い、
後には
ステージに、CEOが
ライティング台の前に立てば、、

オレのillusionは endだ。
もちろんperfectだったぞ、

1人のマジシャンの手で紡がれ
レセプションは 想像を越えた
エコロジカルショータイムとなる

取材陣達のどよめきと
企業への質疑応答。
急遽、ペットボトルシップ周りに
記者を集められる。

「 ティカは何処だ?」

ステージはカメラフラッシュが
辺りを発光するが、
バックヤードのケイは
鳥の様子をみて、
ティカが居ないのを 確認する。

と、
「大成功じゃない!やったわ!」

喜びにうち震える、スタッフの声がやけに響いて聞こえ、
ケイは 声の方に
視線を流す。

あれは、artist escortしてくれた
ミズキとかいうstaffだ。

「怒涛だ、怒涛だったよ。」とか
気の抜けた声もする。

吹き抜けを 囲むように、
下のフロアーを覗く手摺に、
レセプションのスタッフが
並んでいるのが
1階ステージ裏から見えた。


『さあ、各部に無理を言った
お礼参りに行って!!
タムラさんは、備品搬出ある
でしょ!完全終了したら、
外部ヘルプに指示出しよろしく』


まだ、ステージは
メディアのフォト撮りが 続くが
バックのスタッフは
撤収をしている。


『バササッ』

出し抜けに ケイが探していた鳥、
ティカが、降りてくるのが
見てえ、ケイは安心した。
と、その ティカが止まった先を
おもむろに見る。

『キュイッ!』

ティカが、ケイに向かって
鳴いた。

!!!

誰の肩に、
留まって 頭を傾げているんだ!
ティカは そうそう人に
懐かない。

なのに、 当たり前の様に
その人物は指で ティカの
頭の後ろを なぜている?

再び ティカが独特の鳴きを
上げた、

『キューーーーイ、キューーーーーイ』

コイツは、、朝のオニギリ女神か

鳴き声を不思議そうに
聞いている
彼女の肩に ケイは手を伸ばす。

その 耳元に、

「ーー捕まえた。」

深い響く声で わざと粋で
なぜ上げてみる。
それは、ちょっとした好奇心だ。

ぎぎぎぎって、音がしそうな
固さで、オレの方に向ける
彼女の瞳は
困惑の色に染まっていた。
予想通りの反応に
ケイがニンマリしたが、

ん?
この瞳、、Something is wrong
違和感だと?

両手で
確保した ティカを
自分の胸元に仕舞ってさらに
確認をしようとする。

「あ、貴方の鳥でしたか。
すいません。勝手にさわって。」


目の前の 眼鏡の地味な
オニギリの女神は、
申し訳なさそうに、弱々しく
謝っている。

そうだった、朝と今のオレは
雲泥の差だ。しかし、
ティカは、間違いなく彼女に
鳴いた。

なら、この彼女が
運命の花嫁の確率は 高い、、

「・・━━━・・・」

凄く綺麗な白い歯をニカッて
見せながら、
オレは
明らかに、
胸元から出せそうにない
荷物を彼女に
差し出す。

朝のporchとwater bottleだ。
そして、

「ー You are my life saver ー」

覚えておけ、
『マジシャン』ってのは
『魔術師』を演じる者なんだよ。

キミは何者だ?

ああ、オレも人の事さ、
言えないんだったよ。
10年前に出会ったDestiny partner
運命の少女を探している。

ティカ、オニギリの女神は
運命の少女なのか?

オマエは誰だ。