秋は黄昏マジックアワー。褐色の王子と恋愛混合二重奏

その日
朝からメディアは
これから執り行われる
国家式典の中継をスタンバイし、
多くの人々は
その様子を 固唾を飲んで
見守っていた。

近づく開始時間にむけ、
厳かな空気が 映し出される中。

祝い 列席するため来日していた、
世界各国の王族や首脳などが
続々と
古風で奥ゆかしい宮殿に
到着する。

その度に、
テレビのコメンテーターが
称賛の解説をし、
国民はその優美な様子を
喜々と眺め。

男性は
燕尾服やモーニングコート、
紋付羽織袴。
女性はロングドレスに、
デイドレス 、白襟紋付。
それに輝く勲章が胸元に見える。

世界各国から集まった来賓は
伝統着や歴史ある衣装になどにも
彩られていた。

そんな中、現れた 王子の姿に
一同メディアは騒然となる。
褐色の肌に麗しく整えられた
黒髪は、好感がもてて、
純白軍服。
そのイケメンぶりに
惚れ惚れとした空気が色めく。

各国の王子達も見目麗しの中
特に話題になったその人物は
オセアニア地域の国、第6王子

『カイザー王子』

と、報道された。

褐色の王子の登場で、
来賓の入場は完了し、
晴れた空に、虹が掛かるという
神秘が起きて、式典は
開始された。


「ダーレーンー!!あれ!ケイ
イリュージョニスト・ケイ
ですわ」

中継を見ていたケイトウが、
オフィスで大声を上げて
ダレンを呼ぶ。

「成る程な。偽り者同士か。」

顎に片手をやって呟くダレンを
何かワメいて、ケイトウは

「Oh!アサミ見てないかも!
すぐにコールすべきだわ!↑
NO!!出ないガッデム!」

いいですわ!下のオフィスに
直接行ってやりますわ、と
ケイトウは非常階段を
バタバタと降りて行った。

「やれやれだな。」

ダレンは、オフィスの
大画面モニターに映る、王子を
見つめながら、腕を組んで
いたが、すぐにオフィス電話が
コールされ、表示に訝かしむ。

『ダーレン!!スキャンダル!』

さっき降りたばかりの
ケイトの大音量が 受話器から
ガナル。

『アサミいない!課長いない!
ミズキパニック!ヘルプ!!』

ケイトウの声に眉を寄せた
ダレンが、その内容を理解すると、即座にケイトウに指示をした

「ケイトウ!シオン姫に知らせ
ろ。ハジメオーナーもヨミ女史も
今なら一緒に同伴して船で向か
ってるはずだ。まず知らせろ」

警察に連絡する案件か?
判断が難しい。そもそも、
あの課長も?一体何が起きてる?

ダレンは、黙って目まぐるしく、
頭を回転させた。

大画面には 大写しされる、
『カイザー王子』の凛々しい
横顔が、国王の隣に 佇んでいる。

朝からケイは
白色の騎士軍服を
身に纏い、
来日した国王と、第4、5王子と
共に式典への参加準備を
していた。

メディアは
これから執り行われる
国家式典の中継をスタンバイし、
多くの人々は
その様子を 固唾を飲んで
見守っている。

本来なら
王位継承権第1の王太子
からはじめ、第2、3の王子が
来日となるのだろうが、

上位王子は、不在となる国王
代理として第1王子が。
その補佐として第2王子、

そして現在
軍府長官の第3王子が
国王留守の自国で采配を
振るう事となった。

近づく開始時間にむけ、
厳かな空気が 映し出される。

何より、
日本人である
第3側妃の同腹子の第5、
そして
第6王子のケイは、
友好王使としての意味合いも
あり、特にメディアが
その姿を
今か今かと待っている。

祝い 列席するため来日していた、
世界各国の王族や首脳などが
続々と
古風で奥ゆかしい宮殿に
到着する。

ケイ達は
メディアの勢いに
反して列席は最後。
それは、
招待された王族の中で、
1番王の在位年数が長い事を
意味する。

テレビのコメンテーターが
称賛の解説をし、
国民はその優美な様子を
喜々と眺めていた。

父親である
国王も、
兄弟である上の王子2人も、
ケイが
この式典に参加するのみが
来日の理由では
ない事を
知っている。

招待された 男性賓客は
燕尾服やモーニングコート、
紋付羽織袴。
女性賓客はロングドレスに、
デイドレス 、白襟紋付。
それに輝く勲章が胸元に見える。

世界各国から集まった来賓は
伝統着や歴史ある衣装になどにも
彩られていた。

その中にあって、
横並びに揃う
純白の
騎士軍服のケイ達は
とても目立つ。
それ以上に
現れた 王子達の姿に
一同メディアは騒然となった。

褐色の肌。
麗しく整えられた黒髪。
それは好感がもてる
純白軍服。
3人の王子は
年や、雰囲気は違えど、
そのイケメンぶりは
遠くからのカメラからも
確認出来る程で、
惚れ惚れとした空気に
辺りが色めく。

もちろん、
各国の王子達も見目麗しい。
それでも
特に話題になった
その人物は
オセアニア地域の国3人の王子。
一際目立つ 第6王子。

その名は
『カイザー王子』

と、報道される。


メディアに映される、
『カイザー王子』の凛々しい
横顔が、国王の隣に 佇んでいるが、
そのほんの数時間前に
国王王子が
親子のやり取りを
した事は
さすがに、解りようもない。

ただ、1つ言える事は

本来なら式典が終わり
1人の女性を連れてくる事で
契約満了となると
伝えられた執事から

護衛へと
渡された伝言紙に

一瞥を向けた 王子が
作り笑いの奥で
動揺を隠しているのを

メディアを通して

幾人かの視聴者が
見守っていた。



【『ケイトウ?どうしたのっ?え
アサミちゃんが辞表を出してっ?
連絡つながらないって?まって
っ!ちょっと落ち着いて』】


ローズガーデンの駅からは、
空港バスが出ているからさ、
ダンスする来場者の大波を
掻い潜る。


【『あ、初めてましてっ。
アサミちゃんの友達シオンと
いいますー。この間
ミズキさんの話は、電話で聞
いててっ、え、は?あー。
アサミちゃんが隠している
事情、そんな事がー。それで、
もとのアサミちゃんが表に
出たって事ですかっ?!』】


フラッシュモブの人波から
ケイはこない、これないよ。

1人で動く事なんて
考えれば出来ない。
ケイ=カイザー王子には
G.Bが付いてるはずだからさ。
それに
追いかてくる理由なんて、
あの王子にはないって事
気が付いたよ。

気が付いても、
すぐに、トイレでショールを腰に
結んで、帽子と付け毛に、
サングラスをする。
急ぐ理由なんてないのにさ。

昨日は、メディアが入ってた
わけじゃないから、変装も用心。
どうかなる事も ないけどね。

【『あれっ?ダレン?え?課長?
アサミの上司も仕事にこない?
わ、ミズキさん?えっとー、
アサミの置かれた辞表を見て、
課長さんが、アサミの住んでる
所行ったきり?ですかっ?』】

駐車場に抜けて、駅へ。
賑やかにダンスする女子達。

10年前。
学園の交流学生で友好
ダンスデモンストレーション。

交流の相手は
海外の御曹司とか王族でさ、
カッコいい海外男子に
お嬢様学園は、騒然だったな。

空港バスは夕暮れの高速を走る。

「まさか、さ、没落してから
カイザーに 再会するなんてよ。
神様は何考えるんだかさ。」

夜のグラデーションに染まる車内
ようやく、目的地に着く。

アサミはカバンのパスポートを
確認して帽子と付け毛を取った。
気が抜けたのか 喉が乾く感じ。


【『オーナーっ!なんだかっ!
とっかえひっかえ、電話に
皆んな出てきてー大変な事に、
え?!誰?!貴女、どちら様
住之江 繭さん?ごめんなさいっ
全然わかんない。あ、ごめん、
もう1度誰に何を言ったって』】


「今ならホノルルは、暖かいね」

ハロウィン仮装をした
スタッフが、アロハシャツ着て、
期間限定ジュースを
販売してるから
試し飲みさせてくれたのを買う。

【『ワアーっ!!オーナー!!
どうしようっ!この子!、
パーティー終わりにっ、課長って
上司に、「先ほどのダンサー、
華姉さまは、どちらにいますか」
って、聞いたって言ってるん
ですよっ!不味いですって!』】

アザミは呑気に袋を鞄に入れ
ながら、手続きに
カウンターへ向かう。

【『聞く人が聞いたらっ!バレ
ちゃいますって!アサミちゃん
の事!それを聞いた誰かが、』】

と、
アザミの両肩に 手が回された。


『西山 莇美さんですね。ちょっと
よろしいですか。警察とかは
御勘弁して、御同行を。』

全く聞き覚えのない声と、
プロの掌の感触を
肩に アザミは、抵抗を諦めた。
にわかに、目眩が
始まって足の力が抜けていく。

用心してたけど。
さっきのジュースよ。
抱えるように連れらて駐車場。
鈍くなる感覚の向こうで、
一瞬 何故か さ、

課長を見た気がするよ。

段々体が 鈍くなる。
究極に眠気が 襲ってくると、
ワゴン車のドアが
引き開けられる気配がして、

アザミの意識は
そのままブラックアウトした。


【『アザミちゃんのパパのせい
だと思うけどっ、アザミちゃんも
わからないんです。とにかく、
アザミちゃんを使ってっ、パパを
見付けるんだと、オーナー?』】


キューーーイキュィーーーーー

なぜだろう。
鳥、
鳥の声がするよ。空気が冷い。


少しずつ意識が覚めるけど、
すぐにはさ 動けない。
頭も痛い。気分もさ、悪いよ。
アザミは額に片手を当てて
ため息をつく。

「とうとうさ、つかまったよ。」

知らない天井に、蛍光灯が見えていて、背中の感じで、長椅子に
寝かされているとわかる。

耳を澄ます。無音。

目だけを動かすとさ、室内で
警備室?機械室?ボイラー?
って感じよ。
壁に無機質な時計。えっと、、、

体に力が入らないけど
目だけで確認したらさ、
辺り前だけど、
カバンとか電話は 失くなってる

でも、拘束はされてない。

四畳ぐらいの部屋。
アナログな壁時計は、1時過ぎを
指してるけどさ、
何時間たっての1時過ぎよ?

目の前に 事務机と椅子。
そこになんだか いろんなボタン。
配電盤かな?


【『もしも~しぃ。今はさぁ、
そっち電話口にはぁ、誰がいる?
シオンくん伝えで聞いた話を
さぁ、考えるとねん。
アザミくんはぁ、誰かに拉致され
た恐れがあるけどぉ、逃げただけ
かもしれない。
けどぉ、それならぁ、
課長さんがぁ、昨日に
アザミくんのぉ辞表を確認しに
アザミくんとこに~行ってからぁ
連絡がないのは~おかしい。』】


窓はなし。ドアが2つ。
壁も天井も床も
コンクリートで遮断性高そう。

換気口があるから窒息はしないね。ん、体を起こせそう。

アザミは事務長椅子から
ゆっくり上体を起して、
自分の体を確かめる。

乱暴された形跡はなし。
腕のラバーバンドは そのまま。
靴も、洋服もそのまま。

うん。よし、上々。
足や手に力も入る。立って、

1つのドアノブを回すけど、
鍵が掛かっている。
じゃあ、もう1つのドアを、
開けると、手洗い付きの

トイレだった。


【『ダーレン!アザミちゃんの
部屋を確認してぇ、
ケイトゥは課長さん がぁ
個人で鍵出入りできる場所を
ミズキ 女史に聞いてぇ。
あ~警察も連絡ねん。
うん、
今ってさあ、式典あるからぁ、
目立って移動とかはぁ、
引っ掛かるからぁ、今日は~
目の届く所に置いとくよねん』】


とりあえず用を足すフリで、
トイレに入って、
スカートのベルトに手をかける。

腕のラバーバンドは腕時計の
バンド。もう少し言えば、
携帯電話時計のラバーバンド。

着脱できる本体を、アザミは
ベルトのバックルに替えていた。

モールの入り口にある
あの書店セレクトショップで、
買ったんだよ。
ランニングのメディカルデータが
管理できるからと思ってさ。
GPS万歩計付属が役立ったよ。

電話帳登録が、出来ないけどね。

デジタル時計は、13:42

さて、どこに電話しよう。
警察?いや ここの場所が
説明できない。なら、

アザミは、シューズの中敷きに
入れていた 名刺を取り出す。

ランニングシューズには、
100円と1万円を
中敷きの下に入れてるのだよ。
諸君!!

“ 何かあれば、ここに
魔術師ケイとコンタクト
したいと言えばいい。”

ってケイに最初 出された、
大手企業名とカスガと印字
された名刺。

時間的にケイは式典に出てる、
のは承知の上。
それに、もう契約もしてない
王子さまと 一般人。

だからさ、この名刺先から、
援助を 請うしかないよ。
どっかの直通電話みたいだけど。
2度コールする。
良かった電波、届くみたいよ。
出て!お願い!


『はい!海外研究室準備部
カスガっす!いつも
ありがとうございますっ!』

???

『もしもーし!海外研部署、
カスガっす!お電話
ありがとうございますっ!』

「あの、、イリュージョニスト
・ケイに何かあれば電話する
よう言われて名刺をもらった
んですけど。すいませんが、」

『えー!またあの暴君王子っす
か?!参ったなあ。先輩!
なんか暴君にクレームっすよ。
また、スモークで迷惑とかっ
すか?どーもすいません。
本当に申し訳ございません!
え?違うんすか?誰っすか?』

ああ、もうハラハラする。
誰かくる前によ、

「あの、ケイの執事ヤマモリさん
に、すぐ連絡して下さい。
田村アサミを探してくれ、
田村の上司がいる場所にいる
から、内緒で契約したいと。」

『え?タムラアサミをさがす?
迷子ですか?先輩迷子捜索で
したっす。あ、いってらっしゃ
い。え?あ、迷子は警察にって、
そうっすね。警察に言った
方がいいっすよ。お客さま、』

こいつさ。通じんヤツだよ。

「だから、執事のヤマモリに、
タムラアサミを探して助けて
すぐって言ってよ。課長にラチ
られてる可能性大だからって、」

『ガチャン!!』

あ、きた『ザバー!!』トイレを
流して、すぐ電話を切ったら
急いで、電話をベルトにして

「は、はい!」

飛びだすと、事務机の上に
食事が載せられていた。
相手は、ご丁寧にサングラス、、

「ありがとうございます。」

一応 食事のお礼を言う。
でもさ、無言で出ていかれたよ。
鍵が掛かる音。


【『うん~ん、?ヨミくん 電話?
こっちも忙しいカスガ?
Assocくんかぁ。やあ
え、ちょっと待ってねん。
シオンくん!
Assocくんとこに
何故かアザミくんがSOSしてきた
って~!ヤマモリってぇ誰ぇ。
あ?今度はぁ、こっちの電話か
え~、
ヤマモリって知ってるって
ちょっと~待ってねん。
Assocくん~、
タムラアサミを
ケイのヤマモリ執事に探せ
って電話があったのん?ふん。
課長にラチられたとか言ってた!
え、
ミズキ女史?何?~もう』】


もう1度さ、電話。もっと他!
でも、番号わかんないよ!!
便利は不便だ!!

携帯電話時計、充電食うのにさ!
警察に電話する?

でもさ、ここ
どこだよ?何か手がかりわ?
水、水の音がするよ。それと

ティカ?

【『ヨミくん~。ボク両手に電話
でぇ、なんだかさぁ。
な、なに~シオンくん!は?
地下?私道の地下道?そんなの
あるのん?どこぉ。そんなに!
ミズキ女史さぁ、
もしかして~
課長さん地下の鍵あるぅ?
何ぃ、ボク?私わねぇ、
タケヒサ ハジメ。ギャラリー
探偵とか言われるけどぉ、
只の ギャラリストだよん~』】


それは、
とても突然な偶然だったのだと
今考えれば解る。

地下のEARTH POOLの水量管理室
どこからか、
水音がするのは、
EARTH POOLの水源が、湧水
だからだろう。

その手前にある 倉庫室は、
さっきまで EARTH POOLの
使用備品である
クリアボート20艇が積まれていた
のだが、今は
もぬけの殻となっている。

ふと、
私は 拘束される
手を動かして、なんとかこの
戒めを解けないかと思慮するが
そう簡単には
叶わないものだと、諦める。

そのうち義理弟家が、
約束の時間に
この場所へやってくるだろう。
その時に、
私は 罵られながら
救出されるのだ。

まさか こんな姿になるとは
思ってもいない日。

ビューティーパレスは、
ヒルズヴィレッジにある
オフィスタワーでも比較的オープンな美容関係がテナントで
入る階だ。

普段からもエステや
サロンはホテルユーズの
ゲスト、オフィスゲストで
なくても会員になれる。

その日は、
国内式典で、海外からの要人が
集まる週で、
その要人達と国内企業の交流と
なるイベントを
オフィスタワーで開催しなければ
ならなくなった日だった。

只でさえ、
タワーで使えるホールは
満室状態なのに、
どうやって大規模交流の会場を
捻出すればいいのかと、
私が悩んでいた所、
地下に非公開となる
EARTH POOLを部下から
示唆され、事なきを得る。

私の役割は
ヒルズヴィレッジ関係者、
所謂 ヒルズヴィレッジ所有の
関係者だけが使用可能な
エレベーターの稼働と、
そちらのVIPを対応する事に
尽きるわけだ。

如何せん、かくいう私自身も
ヒルズヴィレッジ所有財閥の
末族に縁あるのが
言っても
本当に薄い縁なのだ。

その縁あって、ヒルズヴィレッジのサロンホールを司る役職に
ついて、所有者ならではの
利便性に便乗出来ており、
所有者ならではの
サロンホール以下階の
設備采配を
振るう事は出来る。

そして、それは
とても突然な偶然だったのだ。

ビューティーパレスフロアに
配置したVIP控室は数ヶ所
用意している。

本来なら財閥一族が
趣向を凝らしたサロンホールに
VIP控室を作るところ、
やはりサロンホールは、
海外官僚補佐官同士の
個別ミーティングで満室。

そこから直接地下の交流
パーティーに顔出しする国も
あって、補佐官の控室扱いに
サロンホールフロアも
使用となる中、

必然的に 内装が
モード系ラグジュアリーな
ビューティーパレスフロアを
代室に設える事にした。

そこに、
大口協賛企業が 新作美容品を
テスティングを持ち込んだ為
パレスフロアの VIP空間と
テスティングブースの
住み分けが 困難になり
かなり雑多な手筈が多発したが、

EARTH POOLでのパーティーも
無事に終宴となり、
再び控室に戻るVIPの対応を
指示していた。

その中に 幾つか 下のガセボで
踊っていたスタッフの
問い合わせを受ける。

「?」部下のミズキ君の管轄で、
私にはどのような宴だったかは
把握しかねる。

無線シーバーで、
スタッフのやり取りはしており、
私のイヤホンにも
各部所の共有事項は入る。

先ほどから問い合わせが
多い案件だろうが、
VIPの中でも
西の筆頭財閥令嬢から、
その件を聞かれた時は 無下には
出来ず、形だけでも
無線で階下のミズキ君に
状況を訊ねる事にした。

よりにもよって
西は、妹が早くに嫁いだ家が
あり、この令嬢の心証を
悪くするのは 良くないのだ。

例えその家が 好ましくない
状況にあるなら、尚更。


【『ごめんね、ミズキ君、パレス
フロアの控室なんだけど、こちら
のVIP様が、さっきから問い合わ
せされてるスタッフにだと思うん
だけど、あ!少々お待ちを、今
確認をしてまして、ごめん、一旦
切りま、、ハナネエサマ?、、ザッザッ
ーミズキさん、ムラタさんて
ヘルプ部署どこだったかな?』】

この無線を、
傍受している無線マニアから、
ネットデータに載るとは
考えもしない。

そもそも『ムラタ』など、
ホテル本部で聞いた名前でも
ないなら、
階下のデスパッチセンターからの
派遣スタッフでもあり得る。

どちらにしても、
西の令嬢には 問い合わせの人物は
すでに業務終了している旨だけ
伝えて、個人の派遣情報は
把握していないと伝えた。

この日は、そのまま
撤収業務の指示と、引き続き
VIP送り出し対応で終わったの
だが。

次の早朝に、
義理弟家から 連絡が入る。

10年前に消えた『西山王の娘』が
昨日問い合わせがあった
人物であり、禍根の対象者。

すぐに 保護と言う名の
内々捕縛をするべしという
妹を使った脅しだった。

妹がすこし残念な恋愛で、
嫁いだ先は、西で元貴族家に
名を連ねていた旧家。

貴族は江戸時代から朝廷筋や、
貢献した一族、
明治政府立ち上げの報奨として、
それまでの家督や 役職によって
貴族になった一族がいる。

東の貴族なら
そこから貴族院に入閣し、
明治政界に躍進したのだが、
西の貴族は 政府が 首都で
あった為、立地から参会経費が
多額になり、
多くは貴族名を返却する家も
続出した。
その中でも 生き残る家もあったが
戦後の財閥や貴族解体にあい、
資産を没収されると 没落
していくのが末となった。
寺社貴族は その類からは
外れたが、義理弟家は そこから
一般の企業家に転身している。

貴族というのは、
江戸時代に置ける 藩主色が
思考に濃い所があり、
藩国の国主として、藩民からの
税で財を為す。
藩地への執着が大きかったのか
義理弟家は不動産を元手に
事業を拡大したが、
後の不動産ショックで落ち目に
なった。

そのような話は多々ある話。
問題は、同じ業界において
成り上がった『西山王』が
不動産ショックの憂き目に
会うことなく事業拡大をし、

その代理人が、落ち目になった
義理弟家の稼業を支援すると
詐欺を持ち掛けたのが
運の尽きだ。

そんな話に乗るのが悪い。

本来なら 自分達が 配当された
元貴族達の解体資産だとか、
元藩地の立木の権利だとか
耳障りの良い詐欺話。

なけなしの資金が騙し取られ、
被害にあった義理弟家は、
かつての旧家のみる影もない。

本当に『西山王』の代理人からの
支援金話かさえ 疑わしい。

にも関わらず、
義理弟家は、未だにその詐欺話の
恨みを根に生きていた。

その証拠に、こうして
私に、『西山王の娘』を
捕まえろと脅してくる。
本当に、一体いつまで
栄華の亡霊にすがり付くのか。

しかしながら、
そのような輩は 義理弟家だけでは
ないらしい。
何故なら、こんなに早く
その人物の足跡を
10年経て尚追うという、結束の会
があるぐらいなのだから。

それでも、
指定された人物に、覚えが
最初なかった私は、
早朝の電話を切って
出勤した我がデスクに、
辞表が乗せられているのを
見て、悟る。

部下の 『タムラさん』が
その人物だったのだと。

それでも 私は、まだまだ
迂闊だった。
そもそも義理弟家に脅された
とはいえ、部下である彼女も
その父親による被害者だ。

妹を保護する為にも、
又、義理弟家のような輩 から
一時的に彼女を囲うにも、
彼女の行方を隠して
交渉をするしかない。

そう判断をして、
先手を、打てていたのが。

まさか、海外の手からも
横槍を入れられるとは
考えが及ばなかった。

その浅はかさが
いまだ課長で位置付けされる
私の性分の
所以かもしれない。


「アサミが消えただと?!
どういう事だ!ヤマモリは!」

式典が終わり国王と 兄王子が
晩餐会に出席する支度を
始める中
1人晩餐会には
参加しない
ケイが
ヤマモリを呼べと叫ぶのを、
護衛が受け答える。

「ヤマモリは お分かりだと思い
ますが、こちらには参れません。
重要警備の厳しい宮殿です。
報告を受けた事項だけ 、私から
申し上げます、My road。」

国王と、兄王子達に礼を取って
ケイは国賓控室の1つを
退出した。

赤絨毯のひかれた 重厚な長い廊下

ケイは足早に玄関エントランスに
向かう。

「 アサミが会社に辞表を出して
いたのは パーティーの日か?」

晩餐会は夕方から、3回に
分けて行われる。
それまでを 賓客達は 歓談や
控室での準備に 動く。

「さようです。もともと次の日は
My roadとの約束で、お休みを
取られていましたから辞表が
机に出されていたのを 昨日、
気がついたのは、
彼女の上司である課長です。
パーティーの日は個別 解散を
しているので、
オフィスには上がらなかったと」

前後についた護衛の1人が、
ケイに説明をしながら
玄関に寄せている警護車の
ドアを開けた。

「連絡が誰もとれないと?」

開けられドアから防弾ガラスの
厚い、後部座席に身を沈めて
ケイが 問い返す。

「 はい。職場の先輩や、連絡を
最近とっていた友人が、
電話をしていますが、電源が
切れている様です。また、昨日
辞表を確認したという、課長が
住んでいる場所に行くといっ
てから、今日まで
消息を断っています。」

宮殿を出た警護車は、ほどなく
大使館について、
ケイと警護は その中に入る。

「昨日は、朝からオレといた。
上司が昨日会えるわけはない。
が、昨日から上司も連絡が
とれないのは偶然か?
巻き込まれたか、、元凶か」

大使館の1つの部屋を入ると、
そこには ヤマモリが
礼を取って佇んで

「御主人様、申し訳ございません
アサミ様の行方を捜索しており
ますが、未だ見つかりません。」

と、苦々しく謝罪した。

初めから晩餐会は、国王と
兄王子達に任せて
ヤマモリが連れてくるだろう
アザミと合流する為の
着替えを 大使館に用意していた
ケイは、
純白の騎士軍服を脱いで、
ヤマモリに渡していく。

「This was also bad。昨日オレ
の wasn't caught 事態失敗だ。」

警察にも連絡はしているが、
すぐに動く体制ではないと、
報告しつつ、ヤマモリは

「あと、気になる事項で、
住之江 繭子様が、課長に
パーティーの終了後に、問い
合わせた際、『田村 あさみ』
様を『はなねえさま』と言って
しまったと話されています。」

続けたが、
その内容にケイの眉間に皺が
寄ったのを 見て

やはり、課長が事態に関わって
ますねと、電話の表示を
確認する。

「ギャラリー 『武々1B』のダレン
さんが、アサミ様の住まいを
見に行かれましたが、家財道具は
全くなく、賃貸契約を解除して
いたと連絡をくれました。」

それを聞いた 護衛が驚いて

「はあ?随分計画的だな?!」

声にした。

「辞表を出していた。昨日の
アサミを考えれば、行方を 隠す
つもりだ。そこに 重なって 何か
起きたのかもしれない。」

そんな護衛を
宥めるように ケイが 呟いて
考える服装は、かなり軽装に
着替えられていた。

「ヤマモリ、アサミのfatherで、
Danger person に課長なるヤツは
list されてないのか?」

ケイが ヤマモリに依頼していた
アザミの父親の行方を探す
輩達の調査で 確認する。

「はい。直接関わりがあった
債権者達の現状把握ですが、
その中には入っていません。
ただ、親族関係では 、まだ
調査が追い付いていません。」

10日そこそこだからなと、
ケイはヤマモリを
追及はしないが、手詰まりかと
息を吐いた時、

ケイの電話がメッセージ点滅
している事に気がつく。

『カスガですっ!
執事のヤマモリさん宛てに、
タムラアサミを探して助けて
と伝言頼まれました!
課長にラチられるとか言って
ますっ!勘弁してください!
なんでもかんでも こっちに
クレームを回さないで下さい』

開いたメッセージに ケイは
目を見張ってから 静かに
ヤマモリに 見せる。

「これは?!アサミ様からの
SOSですよね?!なぜ?!」

ヤマモリが動揺するのを
ケイは 電話のメッセージを
再読して

「ヤマモリ、『課長』のhome
addressが 解るか?」と

詰めるが

「御主人様、さすがに自宅に
監禁はしてないと。専業主婦の
奥方や、家族が課長にはいます」

ヤマモリは あり得ないと
首を振って、

「ただ、課長の部下をはじめ、
個人的に所有する場所がないか
あたってみます。一時 私は
御主人様より 離れますこと
お許し下さい。」

とケイに許可を取って
出てい行こうとした。

そこに
再び、ケイの電話がコールを
告げる。

声の主は 軽快な声で、

『Hello emperor。Assocくん
からのメッセージでぇ、
アサミくんの 拉致が解ったと
思うんだけどぉ、課長さんがぁ
個人で鍵出入りできる場所を
こっちで探してるよ~。
うん、ヤマモリ?解ったよん、
合流してぇ、捜索だねん、
今? 海の上~もうすぐかな~』

あと少しで首都の湾に入ると、
続けつつ ノンキに話たのは、
ギャラリー探偵といわれる

武久 一こと ハジメだった。



『ドン、、ドン、、』

「ヤマモリ!ドア、音するわ!」

「ミズキ、退いておけ!
鍵こわすぞ。おい!タムラさん
ドアから 離れろ!ノブを蹴る」

漆黒の執事姿でヤマモリが 、
革靴の踵をドアノブに勢いよく
落とす。

「課長さん?!あんたが、どうし
て?タムラさんは?おい!
あんたが、タムラさん連れてっ
たんじゃねぇのか!何があ、」

拘束されて、ガムテープを口に
貼られる男を、ヤマモリが
せめると、

「ねぇ、課長、ここにあった
クリアボートは?あんなに
あった透明ボート全部どうし
たんですか?タムラさん、
ここに
いたんですよね?課長!!」

ミズキが
周りを確認して、声を震わせた。

地下、EARTH POOLの
手前にはボートの収納している、
倉庫。奥には水量管理室。

倉庫はもぬけの空で、
水量管理室の机には、食べた後の
食器が乗ったままに、男が1人
閉じ込められていた。だけ。


キュイ---ィィィィ… キュイィィィィィィ … キュイ…

タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、

波だよ。
波に揺られてるよ。

何だっけ、絵にあったよ。
ボート、違う、そのまま水に花に
囲まれて浮かぶ
女の人の絵よ。

食事食べて、考えてたらさ、
入ってきた人に今度は毛布に
くるまれて、その後に入れられたのが棺だと思ってたよ。

棺ごと縛られてるってさ。

まさか、あのクリアボートなんて
思ってないから、
ああ、棺ごと埋められるのを、
配信でもして、パパを引き摺り
出そうってしてるんだってさ。
なんとか毛布を解いて、
顔を出したら、
ボートは、、海!!。

だって、あれ工場夜景の
クルージングで有名なとこだよ。


タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、

「ハジメオーナー。
先ほどケイトウから地下には、
課長さんが拘束されており、
一足違いで
アサミさんは 別の人間に
ボート20艇と共に拐われた
様だと連絡ございました。」

瀬戸内から走らせた
メガヨットが
湾内に入った事を
ギャラリースタッフのヨミが
甲板のハジメに伝える。

「シオンくん~、ネットにさぁ
ボート 関係、近隣でぇ、
何か呟いてる人はいない~?
海かぁ、川、道路でぇ~」

トレードマークの、白スーツ姿。
ギャラリー武々1Bのオーナー
ハジメは垂れた目を、
同じくスタッフのシオンに
投げ掛ける。

「あっ!光るボートの行列がっ
クルージング観客からアップ
されてますっー。ハロウィン
イベントみたいな感じで 写真!
でもっ、場所が いろいろあって」

検索をかけた、シオンの答えに

「やっぱりぃ、人の呟きが~
1番さぁ 早いね、
どこかな~?全部言ってぇ。」

ハジメの垂れた目が細くなる。

「えーっ。海浜離宮、レインボー
橋、日の出橋、 隅田テラス、
両国水上乗り場、メッセンジャー
像、 みつまたわかれ、キリン
クレーン埠頭ですっ、てー
なんだかバラバラ過ぎですね。」

その答えに、満足そうにハジメ
が頷いた。

「いやぁ?そんな事ないよん。
2つのクルージングルートだね。
雷門方面とぉ、空港方面だ~。
さて、本丸は空港方面だけど、
ヨミくん行けるかなぁ~?」

ハジメの問いにヨミが、
手のファイルを 閉じて、
勢いよく

「無茶言わないで下さい。
今の湾内から川は、海の渋滞
時間 です。一方通行!我々は
湾内を 内陸に進む一択です!」

食いついた。

「じゃあ~、可能性を潰すって
ことでぇ、雷門へ乗り込もう!」

「 本気ですか?!よりにもよって
隅田川は銀座一丁目みたいな
ものですよ!川に無許可で
メガヨットが入れるかどうか」

「ならシオンくん~、
パーティードレス積んでる
よねぇ、仮装しよっ~!
船上パーティーしてたら~
迷い混んだってことで。アザミ
ちゃんの為だよん。さあ~、
ハロウィンメイクだよん。」

ハジメは楽しそうだが、

「ハジメオーナー!!」

ヨミの額には青筋が立つ。

「ヨミくんヤマモリ執事に連絡。
空港方面のライトボート列をぉ
追跡って。ボクらは~、
『風雷神門』側のライトボート
列を目指すよん。いいかい?」

それでも、ハジメの言葉に
メガヨットは 速度をあげる。

ググーーバシャッザーアーー

タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、


凄いね。考えたね。
逃げようない
真っ黒い海に、頼りないボート。
先頭にモーターがあるんだよね、
プレジャーボートってさ、
リモート?いっか。

ライトに照らして、
バックルの電話を見たけど、
充電は切れている。

心細いはずなのに、
そうじゃないのは、きっとこの
LEDライトのお蔭よ。

前と後ろに ライトが輝く
光の舟。上からLED点滅ライトも
かけられて。

今、わたしさ
光の舟の列に乗せられて、海を
進んでいる。

空には栗満月。
波に揺られて、ハロウィンだよ。


タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~

『えっえっ!!マジッすか?!
無理に決まってるっすよ!
水上ボートなんてチャーター
するしかないっす。無理っす』

電話の向こうで戦く男の声。

「カスガとか言ったか?使えない
Assocだな。うちのオーナーは
もう片方のボートを追跡中だ。
ヤマモリ執事は、ケイと連絡で
手段を考察すると見るが、
急を要する。最善を願い出る」

それをダレンは容赦なく
食い下がる。

『もう!!暴君王子にかかわると
録なことないっすよ!あ先輩?!
そうなんすよ、ギャラリー武々1B
のダレンとかいう人が、船出せって無茶苦茶いうんすよ。えー?!
そりゃ、空港海域っすから、
重工から、飛べるなら、でも、』

どうやら、電話の向こうで風向き
変わったか?

「カスガ氏!何か出せるのか?」

ダレンの問いに、

『いや、うちの先輩が 海浜の重工
に、国内製防災ヘリを開発した
ヤツが、テストで出せるって
言うんすけど、飛ばしても、、』

Assoc!歯切れが悪い!!


タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~


空港近いとさ
飛行機の裏側が間近に見えて
凄かったよ。
夜の海に未知との遭遇。
UFOが降りてくるみたいでさ。

空港の桟橋に行くって
思ってたのにまだ沖に進むよ?
沖に大きい船影が見える。
あれに、拿捕されたら?

寒さでさ、毛布にくるまって
仰向けになって
空を仰ぎ見る。悟りだよ。


キュイ---ィィィィ… キュイィィィィィィ … キュイ…

小鳥は夜に海を渡るって聞いた
かも?て、思ってた、けど、
あれは ティカ?

白い鳥達が光ってる。
と、
パタタッ。
胸の上に 一匹が降りてくる。
傾げた頭の後ろに、ハート柄。
足に小さなライトを着けてた。
だから、あんなに
白く光って見えるんだよ。

ティカ達は
上がったり、下がったりして

栗満月の海に、光る点が
流れ星になって動く。

右から現れ、左に向かい現れて、
光る編隊飛行は、
音もなく、月光を反射して。
見てると、
涙がツーと流れた。
だってさ、ほら、音がする。

『タクタクタクタクタクタク』

独特の旋回リズム、下降の音。

『シュゥーーザ、カチャカチャ』

ゴーゴーと低音の風に
煽られ波うち始めた海面から、
わたしは、飛び起きて

何で。と呟く。

離れてスーッと海面に
落とされた
ワイヤーの先で、ヘリに
ボート寄せを指示しているのは
信じられない人間なんだよ。

「ケーーイーー!!」

ボートのヘリに手を掛けて
海面から、自分のベルトに
引っ掻けた救助ベルトを

膝立ちする
股下に手早くかけるのは、
褐色の王子なんだよ!!

「なんでさ、貴方が来るのよ!」

「黙ってろ。舌をbiteする。」

ベルトを回して、
股下からのベルトと繋ぐと、
引き上げの合図。

凄い衝撃と共に
アザミとケイの体は、海飛沫を
撒きながら、1つになって
夜空に舞い上がった。

浮遊感に悶えて
アザミが瞼を閉じると、
目元にヒヤリと感触がする。

ケイがアザミの涙跡を吸って

「 Use magic、他に誰がいる? 」

ヘルメットから妖艶に笑った。

「王子なのに?」

きっと、前髪ボサボサだね。

「Military trainingだろ。いつもの
事だ。なんだアザミ元気だな」

ん?と思った瞬間、ケイの片手がしっかり、
アザミの胸を下から掴んだ。

「信じられないよ!ケイさ、
本当、エロ王子だよね!」

弄ぐる相手の手を叩くアザミに

「10年前から nice bodyな君
が悪いな。Sorry、アザミ 」

飄々と更にバックバグする王子は
さあ、機内に着くぞと、
上を仰ぐ。
ヘリの足が見えて、

「やあ、タムラさん。ご無事で
何より。大分、心配したよ。」

場違いな執事服が見えた。

「ヤマモリさん、救助アシストも
出来るって、どんなP.Bですか?」

呆れてその顔を見上げるアザミに

「お褒め頂き。SS級なのでね。」

執事は、手を出して
2人の体を機体に引き上げた。


海沿いぎっしりとライトされた、
プラントタンク、
倉庫にもオレンジライトが当たる
工場夜景の中。

「確かに、首都地下には 私道
といえる地下道網がありますね。
戦時中に張られた遺産ですよ。」

ケイとヤマモリ、護衛の1人に、
合流してきたのは、
いつかにケイが滞在する
レジデンスに急遽訪問してきた
『氷の貴公子』。
ハジメが、Dirと呼ぶ
若き企業研究所長だった。

「可笑しな話ですが、今まで
各動産企業は、自社開発をする
過程でその遺構が開発地下に
存在しているのは 解っていた
わけですが、特に動産企業で
情報共有することも、国に
問い合わせる事もしないまま、
固有の地下資産として 内密に
活用をしてきました。」

工場の高所からは
夜空にスチームがあがり
クールグリーンな内部ライトが
幻想的。

Dirの長身をソリッドに
闇に浮かび上げる。

ヤマモリの報告で、
アザミが勤務するバンケット
オフィスの上司である、
課長が オフィスタワーを所有する
財閥の末端に属し、
所有特権で 持っていた
オフィスタワーの
地下部に、アザミを監禁していた
事が解った。

「それが、皮肉な事に ヒルズ
ビレッジステーションに東西
地下メトロを開通させる計画で、
初めて動産企業が一堂に介して
独自に地下遺構を利用していた
情報をオープンしたわけです。」

ヤマモリをはじめダレン達も
すぐに 地下監禁場に入ったが、
一足遅く、アザミの姿はなく、
そこには 本来の犯人で
あるはずの課長が
拘束されているのみだったのだ。

「ハジメさんの所にいる
スタッフの話では、西の都市部に
同じような地下私道が存在した
様ですが、メトロ開発指定地下
でなければ まだ開示されて
いない 私道があっても 不思議
ではないでしょうね。」

拘束された課長への尋問で
他からの拉致犯が現れ、
当初、課長達が使うと計画だった
地下私道を利用し、
アザミを連れて行ったであろう
予想がされたのは容易で、

「問題は、何故 ボート20艇を
一緒に運んだのかという事です
が、わたしも、ハジメオーナーの
意見と同じ事を考えましたね。」

そこから、
ギャラリー探偵の異名を密かに
持つハジメが 出した答えは、

「国家式典で、海外賓客が首都に
まだ滞在する中で、陸路を車で
1人を隠して移動は検問が酷く
出来ません。なら、自由がきく
地下私道と、空、川、海を
私でも それは、使いますよ。」

地下私道から、川を下り
海か、特に規制が酷い区内から
離れた港に移動して、
程なくしてからの
拉致脱出ではないかとの
推測だった。

「そろそろ、用意が出来ました。
本当に運がいいですね。丁度
重工が開発した国産防災ヘリの
テスト飛行をする予定だったん
ですからね。ああ、緊急テスト
ですから、私も同行します。」

臨海工場地区は
ナイトクルーズで夜景を楽しむ
スポットにもなっているが、
今は、その隣にある
テストヘリポート。

離陸信号を赤く光らせ、
サーチライトを照らす 機体が
ヘリポートのライトに
照らし出しされる。

「Sorry、Dirにはsupportされて
ばかりだ。Thank Youしかない」

ケイは護衛と合わせて、
しっかりとヘリ防護服を着込み
アジャスターがついた
ベルトを体に回して、

ハンズフリーのイヤホンを
ONにする。

4人で、ヘリポートを出れば

『タクタクタクタクタクタク』

と、羽を旋回させてテストヘリは
準備音を立てていて、

「カスガからはよく、カイザー
王子からのクレームを聞いて
ますからね、今更ですよ。」

そうDirは口を弓なりにして
ケイにイヤホンごしに
笑った。

「御主人様!ハジメオーナーから
連絡です。2てに別れて、目的地
に救出の予定ですが、我々が
向かう湾岸に 信号を送らない
船が出ていると、船舶無線が
飛び交っているとのことです。」

何故か 執事服のままに
アジャスターベルトを体に
回して装着する
ヤマモリの声が、ケイの耳に
響く。

「But、さすがに Coast guardも
黙ってないだろう?偶々
By chanceじゃないのか?」

ケイが 呟くのを聞いた
Dirは、それを遮る。

「いえ、やはり本命ですよ。
海域によれば、湾岸署轄海上区域
との境界線になります。
海上保安庁区域との境で
もし クルーザー航路なら 判断が
緩くなりますね。」

爆発的な風圧をいなして、
すぐにコックピット後ろに
入れば
独特の旋回リズムと
『シュゥーーザ、カチャカチャ』

エアーを切る、機械音が
離陸体制に入って、全員が
シートセキュリティをセット
する。

「Why それでも Secret shipなら
侵犯で、emergencyになるぞ。」

ケイと護衛は、
ヘリシートで、部品確認を
していく。

「もちろん、侵犯航路を行けば
そうでしょうが、別に船で国外に
出なければいい。 とりあえず
拉致対象のボートを船で
確保して、すぐクルーザー航路で
陸路に戻れば。警戒体制は、
賓客が集まる、首都圏だけです」

いたって冷静な判断をする
Dirの台詞に、全員無言に。

それを、合図に
ケイ達を乗せたヘリは
夜の海へと 離陸する。

「結局、カイザー王子自ら ワイヤ
ーダウンして救出するつもりです
か?夜の海ですよ?」

まるで、緊迫した空気を
変えるようにDirがケイに
聞いてくる。

それには、護衛が 変わりに答え

「My road is genius!la
No problem!la」

ケイは、笑って

「Night jungle でもinvincible
オレは、無敵なんだ。」

だから行くよと 付け加えた。

眼下には、
白いスチームを高く吐き出して
赤い鉄塔ランプが輝く
メガファクトリーの姿が
海に浮かぶ軍艦のように
闇夜に浮かんで見える。




『バリバリバリバリバリバリ』

思うより night seaは明るい
のが
ケイには 意外だった。
自国の夜を飛ぶのとは
一味違うと。

空気を混ぜるプロペラの振動音に
揺られながら、
ケイは 眼下の黒い海原に
伸びる光の帯を
見ていた。

空に浮かびはじめた
栗満月は
まだ海に近く 黄色く、
大きいからか
真っ直ぐと闇の海に
光を落としす。

まるで、滑走路にも
レッドカーペットにも
見えた。


『お前が探していた娘が、
運命の花嫁でもあったというわけ
なのだな?ならば、受けよう。』

今日、
式典が始まるまでの時間。

国王である父親に、
これまでの 自分の行いと
花嫁候補について、
ケイは 兄王子達の前で
全て話して、
1つの
宣言を成したのだ。


キュイ---ィィィィ… キュイィィィィィィ … キュイ…

『ティカ』だ。
ふと、まだ下に見える月の空を
ケイは声のする場所を
探す。

先に
ヘリの旋風に
巻き込まれないよう放した、
『ティカ』の姿は
見えないのに、

鳴き声だけを
満月の光と同じように
波が
空に 反響させていた。

タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、

波。
夜の空気を孕んだ
機体の振動に揺られ
ケイは 王の言葉を
思い出す。

『しかし現実、その娘は、この
豊かに発展してきた国で育った
人間なのだ。我が国との違いに
驚くだろう。大丈夫なのだな?』

その意味は ケイにも分かる。

When I first met。オレも
考えた事だ。
Rich とはいえ発展途中の自国。
でも、

「Downfall したアザミは survive
しました。間違えず go straight
な 彼女です。伴侶となります」

きっと、躊躇う事なく
格差さや、貧富のある国を
見つめる事が
アザミには出来る。
そう、ケイは描いたが、

No、、それは excuseだ。


『バリバリ
タプントプン~タプン~トプン~トプン
タプンタプン~~トプン~~、、、
バリバリバリ』

『運命の花嫁』は
政略結婚の好条件な相手でも、
恋愛結婚の互いに望む相手とも
違う。
では、どんな 相手なのか?


ベルベットブラックの海を
イルミネーションの陸地が
囲んで、七色の橋や、
光の観覧車、
その光の下は パーティーや
イベントで賑う人の波がある。

そんな、気配に無性に焦燥する。


対して、
今 オレは Black oceanを
military suit を着てsurviveだ。

『ティカ』はケイが
ロイヤルクマリに望んで
自ら育てた
守護鳥だった。

本来なら、必ずしも王族が
育てるモノではなく、
史実では 王太子権の奪還に
利用した王子もいたが、

『運命の花嫁』の為にその鳥が
必ずしも
その王子の代で
鳴き声を上げるとも
決まっていない
賭のような存在とも言える。

キュイ---ィィィィ… キュイィィィィィィ … キュイ…

半信半疑に育てていた。
なのに、
『ティカ』が アザミを
Looking for and crying
泣いているな。
胸を握られる切ない 歌を。

「あれは、、、鳥?ですよね。」

操縦士の隣に座る
Dirが
ふと、外を見て 呟くのが
ケイと、全員の耳に
聞こえた。

まるで、ケイの心を暴いて
読んだような
タイミングに、
ギクリとしながら

「Amulet bird だ。」

ケイが短く 答えると、
Dirは、 静かにケイの方を
振り返る。

「 守護鳥?ですか、、
貴方の兄上に 話は聞きました
が、さすがに 初めて見ますよ。
運命を、、連れてくるの
ですよね、、。にしても、
巻き込まれないですか?」

Dirは
口を弓なりにしていた。

思わず、何に?と、
ケイは 返しそうになるのを

「慣れてる。No problemだ。」

ヘリに慣れているから
と、忌々しさ半分で付け加えた。

まるで、アザミを自分達に
これから巻き込むのか?と意味
含んでいるのではと。

子供の時にクマリ族の
幼なじみから聞いた話に、
憧れて 育てる事にした『ティカ』

オレは、、、

「My road!見つけました。」

白い鳥達の向こうを
スコープで見ていた護衛が
ケイに叫けぶ。


『バリバリバリバリバリバリ』

ヘリの音が降り注ぐ
眼下に、
点々と明かりが
繋がっているのが
ケイにも確認できた。

ハジメのが睨んだ通り、

ネットのつぶやきで
発見した 20艇のライトボートは、
その行き先を
雷門方面と、空港方面とに
2てに分けて
進んでいた。

ハジメ達が
『風雷神門』側のライトボート
を追跡してくれているお陰で、
ケイ達は、迷わず海側の
ライトボートを追えたのだ。


タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、

「あれは、、
先頭のライトボートに
簡易のリモートモーターか何か
つけて、プレジャーボートへ
変えてますね。これは、、
割りと新しいモノですよ。」

Dirが、下のライトボートを
見下ろして イヤホンごしに
説明する。要は、海洋拉致に
手慣れた国の関与も、
示唆しているのだ。

「間違いないです!人が
寝ています!My road!!」

スコープで引き続き確認をした
護衛がケイにスコープを
手渡した。

ググーーバシャッザーアーー

タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、

『タクタクタクタクタクタク』

独特の定位置旋回のリズムが
始まる。

そのスコープの、向こうに

ケイは

ボートのまま
水の上、光に囲まれて浮かぶ
見知った顔を見つけた。


キュイ---ィィィィ… キュイィィィィィィ … キュイ…

パタタッ。

ティカ達は白く光ながら
上がったり、下がったりして

アザミの胸の上に 一匹
降りていく。
アザミは
まるで棺に眠るようで、
顔さえ酷く白い。

!!!!!

『暗闇のジャングルを、息を
潜めて1人戦闘する 、 そんな
兵役さえある世界に、その娘を
連れて行くのだと 理解してか?』

王が重ねて問いかけた言葉に、
さすがのケイも
一瞬ためらったのを、

アザミの白い顔を
スコープごしに見て
思い浮かべてしまう。

Coup d'etat、、
文字通り、政変があってもの
世界で、

頂点に立つ王族と言えど、
奈落の底辺へと落ちる覚悟が
いつでも必要なのだ。

ならないように
幼い頃から 足掻くように、
中途半端な立場で尚、
国を導く礎の 道が

孤独で。孤独で。

タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~

栗満月に照らされたアザミ顔。

『アサミ様の住まいを 見に行かれましたが、家財道具は 全くなく』

ヤマモリの report は、
これまでのアザミの lonely を
映し出している。
そうだろ?アザミ。

ケイの目にツーーーっと
涙が筋をつける。

ならば、、

「found it!!」

ケイがイヤホンに叫ぶと
すぐにヘリは定位置飛行に入る。

『シュゥーーザ、カチャカチャ』

よく見ると、
ライトボートの沖に
大きな 船影が見える。

あれは?あれが、
Capture ship か!?

『タクタクタクタクタクタク』

独特の旋回リズム、下降の音。

ゴーゴーと低音の風に
煽られ波うち始めた海面に、
アザミが、飛び起きたのが
解った。

ああ、生きているな。

ここからのケイは、無心だった。

離れた位置に
スーッと海面上へワイヤーを
落として、ケイが降下。
海から
ボート寄せを指示すれば


「ケーーイーー!!」

アザミが 呼ぶ。

その場所を見定めて
ボートのヘリに手を掛けて
ケイはベルトに
引っ掻けた救助ベルトを
膝立ちするアザミの股下に
手早くかけた。

「なんでさ、貴方が来るのよ!」

非難するアザミをケイは無視
しながらも
ベルトを回して、
股下からのベルトと繋ぐと、
引き上げの合図をする。

とたんに
凄い衝撃に
ケイはアザミを抱いて、
海飛沫を撒きながら
ブアッと 夜空に舞い上がった。

「まるで、dance silhouetteだ。」

海面に出来た
光の道に
回るケイとアザミの影が
舞うように
黒く落ちている。

まだアザミは文句を言うのを

「黙ってろ。舌をbiteする。」

わざと 嫌味を口にするのと
裏腹に
アザミの目に膨らんでいる
涙を 慈しむように
ケイは吸って

「 Use magic、他に誰がいる? 」

ヘルメットから妖艶に
笑って流した。

容赦ない世界で、
2人身体を重ねると、

踊る様に
情事な熱が燃えて
アドレナリンが炸裂する。

踊る程に
隙間なく満たされて
その至高に恍惚と癒される。

「王子なのに?」

ああ、アザミの前では
オレはカッコ悪いPrinceだがな。

「Military trainingだろ。いつもの
事だ。なんだアザミ元気だな」

ん?と眉をあげた瞬間、
ケイは片手でしっかり、
アザミの胸を下から掴んだ。

初めて会った時と同じように
手の平が 甘く

「信じられないよ!ケイさ、
本当、エロ王子だよね!」

弄ぐるケイの手を叩くアザミに

「10年前から nice bodyな君
が悪いな。Sorry、アザミ 」

重なる心音の感触が
ケイには

「 美味くて 堪らないんだ。」

殊更 腕をすり寄らせて
バックバグしたまま
ケイはヘリの機体を仰ぐ。
ヘリの足が見えきたのだ。

「やあ、タムラさん。ご無事で
何より。大分、心配したよ。」

場違いな執事服が
お帰りなさいと 見える。

「ヤマモリさん、救助アシストも
出来るって、どんなP.Bですか?」

呆れてその顔を見上げるアザミに

「お褒め頂き。SS級なのでね。」

執事は、手を出して
ケイとアザミの体を機体に
引き上げた。

ケイには
まだ 『運命の花嫁』が
どんな存在なのか わからない。

ただ、腕に護ると溶けて
カイザーのままに
縋り付くことができる 体 だった。



I had a long long never dream 。

長い、夢を みた。

白くて
産毛の小さな
オウムを
両手に乗せると、
マスターが 男の子の額に
印を
指で描いて、
鳥を手に 男の子は、泣いた。

神殿を歩く男の子に、
たくさんの大人が

頭を垂れている

宮殿には 沢山の家族がいて、
仕える者が 礼をとる中、
男の子は 1人で
勉強に勤め、鍛練に励む。

沢山の人々が
押し寄せるテラスに
少年は 満面の笑顔で
手を振る。
羨望の人々に見送られ、
少年は
寄宿舎に入った。

同年代の少年達が、
少年を
何時も取り囲み
仕切りに話かける。

囲む男子達の向こうに、
彼は
凛とした女子の 横顔を見つけた。

彼女を
追いかけて 彼が
港に出ると、
ヨットの上に
白スーツの探偵 手を
ヒラヒラさせている。

探偵に、彼は
彼女の行方を聞く。
探偵は、
ヨットの鍵だと、
金の鳥籠を
彼に
渡してくれた。



「お~いぃ、emperor~。
グッドモーニングぅ?
お寝坊さんだなぁ emperorはぁ」

間の抜けた声と共に
顔を ペシペシと
叩く衝撃で、ケイが
瞼を押し開ける。

「Fast morningが どうして
オマエ、Sherlock、、なんだ」

額に片手を当てて
ケイは気だるそうに上半身を
ソファーから起こした。

朝の眩しい光に照らされ
周りは、
残念なほど荒れた
オフィスタワーに入る
ブランドホテルのスイート。

「Wau?!stormか?!オイ!」

ケイがハジメに叫んで、
はたと記憶を探るのは既視感。
ここと
同じように荒れ果てた
VIPルームを見たのは 確か、、

「Sherlock、KOBEの vip roomは
オマエだったか、、」

間違いないと、ケイは
ハジメに ホテルメイドを
今すぐ呼べと指示して、
シャワーに向かう。

そんな機嫌斜めのケイに
夢と同じ様に手を
ヒラヒラさせるハジメは

「えぇ、連れないなぁ。
昨日は、アサミくんに『Please
marry me、オレのものになって
手を取ってくれ、アザミ。』
ってぇ、あんなに可愛いくさぁ
プロポーズしてたのにさ~」

嫌味に、
ニカッと白い歯を見せて
笑って見せた。

それを聞いて、ケイは
顔面を真っ青にして ハジメの
襟元を両手で掴んで
ブンブンと揺さぶり。

「Stop!!Forget!ロクデナシ」

今すぐ忘れろと襟を締める。
そんな
ケイに、ハジメはさらに

「『I protect you 愛している
んだ』とぉ、
『10年。あの日からずっとだ
fell in one moment』だっけ?」

昨日 アザミを救出して戻った
ヘリポートで
ケイがプロポーズした言葉を
吐いていくから、

「NOoooooooo!Shut up!」

ケイは、掴んでいた
ハジメの襟を投げ放して
今度は
周りに散らばる
ハジメの着替えやら
小物やらを
投げつけまくって

「サイ、アクだな オマエ」

と、シャワールームに入った。

「よく言うよねん?その後さぁ
お尻を触るからぁ、アサミくん
に、ツネラレテてたよねぇ。
emperorってぇ エロ王子だよ」

しかも、プロポーズは成功なんて
爆発したらいいよねん~と、
ハジメは
シャワールームの前で
大声でケイに話してやめない。

「あ!ダーレンはぁ、もう先に
メガヨットに行ってるよん。」

洋服をかき集めるハジメの気配。

『ご依頼の、ホテルメイドです』

その時、
スイートルームのドアから
呼び鈴と声が聞こえる。

ケイがシャワールームから
出るのと入れ違いに
ホテルメイドが眉間に
皺をよせて、
出ていくのが見えた。

「 でぇ、コレは餞別だよん。」

片付いたスイートの窓辺で
コーヒーを飲んでいた
ハジメが
嗜好を凝らした細工の
金鳥籠を ケイに投げ 渡たし、
ついでと
ヤマモリが用意した、
スーツも指さす。


昨日、
アザミを救出したケイは、
そのままヒルズビレッジの
ヘリポートに
ヤマモリも一緒に降り立った。

アザミの無事を心配しつつ、
もう1つの
ライトボート列を追いかけた
ハジメ達、

監禁されるアザミを
捜索した先輩ミズキ、

自分の言動で迷惑を掛けたと
猛省するマユも、

ヘリポートで
ケイとアザミを待っていた。
そして、
ケイがアザミにプロポーズを
した事で 一気にヘリポートは
歓声に湧いて
そのまま女子会と男子会を
各々、ヒルズビレッジで
夜通し開催したのだった。

スイートルームの惨状は
その名残だったわけで。


「ねぇ、emperor。昨日言ってた
『運命神の使い、花嫁の鳥』
ってさぁ~、
そのオカメインコなのん~?」

いつの間にか、
スイートルームの天井を飛んで
いる白い鳥に、
ハジメが指を出すが、
その鳥は、見向きもしない。

「『ティカ』!」

なのに、ケイが呼ぶと
ティカは ケイの指に止まるから
ハジメは、肩をすくませて、
やれやれとポーズする。

「ガルーダ信仰だっけぇ~?」

ティカの後ろ頭を指で
なでて、渡された鳥籠に
ティカを大切に入れる。

そして、
ケイは 朝の都会のパノラマが
満面に広がる窓を背中に
座るハジメに

「Question『運命の花嫁』とは」

静かに聞いた。

ハジメは タレた目尻を
面白そうに上げて、両手を
顔の前で思案するかに、組んだ。

「何~?果たし状かなぁ?」

口をニマリと形づくる。

「 No idea なだけだ。Sherlock、
もしかしてアザミの事知って
いて、illusion offer したのか?
オマエの answer は興味ある。」

そもそも、アザミの名前さえ
ハジメにはしゃべっても
ないのになと、
ケイは 感嘆すると

ハジメは、夏の芸術祭で
ケイがクルーズギャラリーに
訪れた時
『聖母の青』談義をしたのを
覚えてないのかと揶揄して、
ケイが自分で
「探しているのは、
高嶺の ロザリオフラワーだ」と
呟いていただろ?と
声を立てて笑った。

「ねぇ、emperor? ガルーダって さぁ、 この国では金翅鳥
ーこんじちょうーとも呼ばれ
てるんだ~。金翅鳥はねぇ、
神さまを背負って
時間 三世、宇宙天地、全世界を
飛ぶ事がねぇ
出来る神の鳥なんだよね~。」

そういう、相手なんじゃ
ないかなぁと、
ハジメは 目を見開くケイを
優し粋な眼差しで見つめた。

Great ハジメ!Thank You。

ケイは おもむろに 自分の
左手の中指から外したモノを
ハジメに投げ

「God's blessing for ハジメ。」

瞳を滲ませる。

「そろそろ『嫁』を迎えにさぁ
いけばいいんじゃないのん?
ボク達のメガヨットも 出港
用意ができたってさぁ~、
ダレンから連絡入ったよ、、」

早く着替えなと、促した
ハジメも
顔をグシャグシャに歪ませてた。



甲板に、白のワンピースを着た
アザミを ケイは
後ろから
ガッシリ抱き締めて立つ。

見送りの顔は、それを呆れて
見ているのが甲板からも
分かるが、
ケイは気にしていない。

ケイのスタイルは、
ヤマモリが用意していた
白のオータムジャケットに
チーフを指した
アザミと揃いの
ブライダルホワイト。

そんな SS級な
ヤマモリの計らいを、
粋な事をと ケイは苦笑しかない。

次第に
甲板から デッキゲートが
上げられて、
白く輝くメガヨットのトビラが
ロックされると

出発の合図がする。

「ダレンは、アザミをmiss it
して、サヤンだろうな。」

手を振るアザミと、港に佇む
見送りの1人を
み見下ろしてケイが
満足そうに云い放つ。

嫌味なほど にこやかに、
アザミを抱きつつ 手を振るケイに

「えっ?ダレンってさ、もともと
シオンちゃんが好きなんだよ?」

アザミが 何言ってるのと
言葉を続けた。!!!

「シオンちゃん、学園の時から
男女年齢問わず 人タラシ 力が
凄かったんだって。
1つ上の学年でもさ、有名な
『花』の1人なんだから。」

いやだなぁ、とケイの
頭をなでるアザミの言葉に、
ケイは
港の見送りに混じるシオンを
見つめて

「Really?」
と、
アザミの空いた背中に
驚きの吐息を乗せて、
そのまま
信じられない自分の
バカさ加減に
顔を擦り付け埋めた。

本当にオレは
アザミしか見えてないな。
サヤンはオレだ。

始まりは
足を踏み抜かれた danceで、
mistakeは いつくもあって。

そんなオレの life cruze航海から
セラマ プーランと
友が 待つ場所に、、還れる。


キュイ---ィィィィ… キュイィィィィィィ … キュイ…


時間 三世、宇宙天地、全世界を
共に飛ぶ相手。

ふと

オレ達のPrinceやprincessも
『ティカ』を手にするか?

と近い未来に思いを馳せる。

何?と聞き返すアザミを
もう一度腕に力を込めて
ケイは
港の見送りに 大きく手を振った。

自分の腕に彼女を
抱くと
溶けてしまう様な 感覚襲われて
それに縋り付けば
何度も
「サヤ サヤング アワッ」と
口にしている。
そんな
褐色の王子の 恋愛旅は
無事にフィナーレを迎えた。