ケイは
シューズロングソファーに
アサミを 座らせて、

「すぐ、シャワーをした方がいい
服はランドリーに出すから、
すぐ乾く。バスタブも使え。」

言いながら、クローゼットから
バスローブをアサミに投げる。

「いいってさ、あ、大した事ない
ですから、このままで帰ります」

渡されたローブをケイに
突き返すアサミを、ケイが忌々し
そうに見て

「その、underwear、見せて
アサミは、歩くのか?」

あまりに無防備な
アサミの言葉に、思わず
ケイは
隣に ガッと腰かけて、
パウダールームの鏡を
見ろと、仕草した。

Big problem!やめてくれ!
underwearまんまだろ!!

椅子の背もたれを、掴んで
アサミにワンピースのボタンを
思わず外して
ケイは
器用に、アサミの上半身から
剥ぎ落としてしまう。

「ランドリーに出す。このまま
破かれたくはないだろう?」

言うが早いか、見覚えのある
剥き出しの
ウエストラインを嘗めた。

アサミの腰が 浮く反応に
つい、ケイは
口を弓なりにしたのを
隠すように

「酷い、makeだぞ。」

言い放って
足からスルリと濡れたワンピースを抜くと、パウダールームを
出て行く。

濡れたアサミのワンピースを
手にパウダールームから
出てきたケイを
マユが やや侮蔑の色を出した
顔で見てくる。

「Hello、Concierge!
Speed laundry OK?Thank You」

そんな視線をものともせず
ケイはコンシェルジュに
コールをして、

「How are you? マユ。Why?」

新しくソファーを入れ替えた
ヤマモリに、ワンピースを
渡しながら、マユが手にする
ペーパーバックを
『テミヤゲ』か?と白々しく
奪って
マユに 笑う。

「ケイ様、貴方どういう
つもりですの? わたくしが用意
した部屋で、女性を呼ばれて
戯れるのは、遠慮して下さら
ないかしら?別の場で どうぞ」

未だに 立ったままのマユに、
ケイは リビングの自動カーテン
ボタンをオンにして
照明を落とした。

「『ティカ』が選んだ lady だ。」

ダイニングテーブルに
マユを促してケイが
口にした台詞に

「『運命の花嫁』?でしたか?
ケイの国は、イスラムの教え
でございますでしょ?
そんな伝説信じていますの?」

訝しむ声で、マユが
テーブルの前につくと、
ヤマモリが マユが持ってきた
スイーツを
サーブして出す。

「God of Allah が来る前から
我が国をguardianしてきた
古代神、 Garudaーガルーダに
よるHistory of faithは長い。」

そして、
ヤマモリに合図を
送ると、ケイも テーブルにつく。

「マユ、約束の mapping magicだ
illusionを見たいと言ってただろ」

見ると、
スポットライトが当たる
テーブルのティラミスに、
小人が 登ったり
降りたりする
マッピングマジックが
スタートしている。が、

「ケイ様、凄いですわ!なんて
素敵な サプライズでしょうか」

ケイのアザとさを
見通して マユが ケイに 嫌味気味に驚いて見せただけ。
納得していない顔のままだ。


『シャワー、お借りしました。
ご迷惑を、かけて すいません』

そこに
ロフトの吹き抜けから見下ろす
アサミの声が落ちてきた。

ケイとマユが見上げると、
階段を降りてくる、アサミの姿は
もうすっかり乾いた
いつもの地味なワンピースを
着ている。

テーブルを見ていたマユが、
アサミの姿に一瞬固まったのが
隣のケイにもわかって、

マユにバレたか?まだか?何より

ケイが思いを巡らせる間にも
2人がいる
ダイニングテーブル
を見つめるアサミを観察して

アサミがマユを認識していない
事もその瞳に感じてしまう。

「服も乾いたな。アサミ本番だ」

ケイが、ヤマモリに
指を鳴らした。

オレもマユも サヤンだな。

心中で苦笑した。


今度は
ペントハウスの広いリビングが、
海の中に沈んで
天井から 壁、床面に 海が投影
される。

「これ、最初のプレス、
ショーの 、海? 」

走るような映像が、部屋を
船に変えればケイが答えた。

「祖国の海だ。
キャンプアースで世界中を
廻ってもThe most beautifulだ」

ケイは眩しそうに、光景をしばし
眺める。

『バシュッ!!』

炸裂する破裂音とスモークから
白い鳥、ティカ達が室内を
飛び回って、アサミの肩に
ティカが留まった。

リビングが、ゆっくりと
部屋へと戻っていけば、
ケイが手に薔薇の花を持って
アサミの前に立っている。

「コンダクターは、明後日に。
それが Last tourだ、アサミ。」

ケイの後ろに、離れて
マユが アサミを呆然と見ている。


差し出した、5本の薔薇を
ケイは
祈る気持ちで アサミに出している

ケイの頭に浮かんだのは
明後日が Last tourだという事と

そして、
10年の時間を10日間で
埋めて アザミである
アサミに 好意を、

恋心を持たせる miraclemission
への焦燥感だった。