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始業式を終え、教室に帰ってきた。

担任は去年同様ハゲゴリラで、教卓に立っている。

「えー、去年クラスが違った人もいると思うから、自己紹介しようと思う。」

当たり前のことをドヤ顔で言うハゲゴリラ。
教室は一気に騒がしくなる。
去年もほとんどこのメンツで自己紹介したのに、何がそこまで盛り上げるのだろうか。

──去年の自己紹介。

それはもう、中学からの同級生に、「よ!組長!」なんて野次を入れられて散々だった。
というか、私自身、何を自己紹介すればいいのか分からないから、自己紹介は嫌いだ。

とりあえず、今年も友達ができそうな自己紹介を考えるだけ考える。
私は、七桜。出席番号順だろうから、少し時間に猶予がある。

えっと、趣味は読書、部活は薙刀部、座右の銘は明日があるから大丈夫…。

「なぁ。」

隣の席に座る、例の知らない人に声をかけられる。正直、驚いた。だって、私に話しかける人なんて同級生なら葵以外いないから。

「…何?」

「お前が噂の七桜?」

あら、初対面なのに、口が悪い。
というか、私がヤクザの娘だってバレてる。
…まぁ、そりゃそうだよ。なんてったって、この街、牛耳ってるもんね。ウチ。

「そうだけど?」

私は、もうこの際だからと思い、堂々と返事をする。
すると、その人は、くくくっと笑い、

「覚悟しといてね。」

と一言残した。
「なんの話?」そう口を開こうとした瞬間、ハゲゴリラが手を叩く。

「静かに!じゃあ、一番の飯田から!」

私がモヤモヤしたまま自己紹介は始まった。