ギャラリストである、
『武久一』こと、ハジメは
自身が 企画する 夏の
クルーズギャラリー 開催の為、
夜の 神戸に バスルームに
ライムの香りを 泡立てて、
まだ いた。

「おやん?花火じゃないかぁ~」

ジャグジーに 浸かりながら
眼下の港 景色を 見ていると、
埠頭の あたりで、急に
青い花火が上がったのだ。


神戸港は。
世界初の 「AIターミナル」の
実現に向けて、
港湾 デジタル化に
取り組んで いる。

いわゆる 自働化や 遠隔操作と
いった『情報通信技術』による、
港湾の スマート化だ。

貨物を ビッグデータ管理。
AI解析で 動かして
コンテナ 置計画を 瞬時に
最適化させるという 国の政策。

今まで、渋滞していた
港湾物流の手続き、
貨物、車両、船舶を
1つの プラットフォーム上で
リアルタイムに データ連携する。

「あぁ、なんか サプライズ
花火ってやつかなあ~。
だって、全然人が集まって
なかったもん ねぇ。」

ジャグジーの淵に、両腕を掛けて
ハジメは、嬉しげタレ目の瞳に、
青い花火を 映す。

港に上がる 噴水のような青い花。

「そうかぁ、始めは 豪華客船からだったなあ。自粛 騒動とかぁ。」

複雑で多用になる 物流と、
少なくなる 人口。

『港湾の進化』がなければ、
輸出入によって もたらされる
この先もある 生活ベースの
安泰はあり得ないだろう。

港は、モノと ヒトと、
エネルギーの 集まる場所だ。

神戸港。
島国、日本の貿易の 出入り口。

山側の窓 からは
100万ドルの夜景が 広がり、
ジャグジーは 海側の窓。

ひととき サプライズ花火
なるものが 咲くのを 楽しむ。

「あ~、もう花火終わり~?
ほんのちょっと
見れただけだよん~」

ハジメは、ジャグジーから
上がって、頭からシャワーを
浴びて、ミラーを見て、ポーズ。

「あぁ、ジムいかなきゃ~」

毎年、この国における、
輸出の 金額ベースなら約70%、
重量ベース なら99.7%が
港湾を 通過して 国内に流れいく。

要するに船で、海外間の物流は
なされるわけだ。当たり前だが。

「まあ、周りを海に囲まれて
るんだからねぇ~」

ハジメは、シャワーで濡れた髪を
用意されていたタオルで 乾かす。
秋に両足骨折した足は、
ようやく、違和感がなくなった。

「でもっ、油断大敵~」

島国 日本には、
無数の港が あるが、
港湾法上で、『国際戦略港湾に
指定されている港は 5つだ。

神戸港は『スーパー中枢港湾』の
指定を 受けている港。

日本の 港湾は、
地形的に 埠頭の水深が
浅い。

「逆に、そのお陰で、
景勝ある大小の島が2000も、
あるわけ だけどねん。」

そう独り言を 言って、バスから、
バー カウンターに 裸で 出て、
ハジメは、セラーを開ける。

タワーの形をしたペットボトル。
KOBEウォーターを見つけ
キャップを開けた。

「すごいよねぇ、鼓形した
ポールアートが リアルな
タワー型だ。キラキラの
クリスタルボトルだよぉ~」

そうして、ハジメは
ペットボトルに 口を着けた。


水深14mより 深い埠頭整備で、
パナマ運河を いくような、
パナマックス船を、24時間稼働化
した拠点港に つけて、
内航コンテナ船で 地方港に輸送。

そういった、
ターミナルビジネスを拡大させて、
船社のコンテナ輸送・物流
戦略と連動した
ターミナルネットワーク化をする。
それによる
『メガターミナルオペレーター』
の出現をという構想が
この国には ある。

「たしか、神戸ウォーターって、
大航海時代からあったよねぇ?」

ハジメは、改めて
KOBEウォーターのボトルを
見つめる。

香港、シンガポール、アラブ、
オランダに
メガターミナルオペレーターが
存在するのみで、
未だ日本は 遅れている。
というより、
港湾の観点からいえば、

末端国なのだ。

かつて、
神戸港は世界トップクラスの
コンテナ港湾だったにも
かかわらず。

「世界の船乗りは、
『赤道を越えても腐らない、
奇跡の水』って、六甲山系
の水を詰めて、
帰りの船に 乗せたんだよね~。」

窓の外には、
観覧車の鮮やかな
イルミネーションが 見えた。

瀬戸内海、韓国・中国から
小型コンテナ船が 集められると、
今度は 北米・欧州方面の
大型 コンテナ母船に 積み
替える『トランシップ貨物』に
神戸港は かつてあった。

「荷物を下ろして、今度は水を
積んで、
また神戸から世界へとかあ。」

ハジメは、
タワー型のペットボトルを、
窓辺に置いて、電話で写真を撮る。と、今回の
クルーズギャラリーに連れて
来た、女社員2人に 送った。


神戸港が、
近隣港のコンテナターミナルの
拡充に押され はじめた頃、
阪神・淡路大震災に見舞われる。

またたく 間に、
韓国・釜山港が トランシップ港に
代わってしまった。

国際ハブ港湾 としての
神戸港の地位は失われた。

「震災から どれだけ
たったかなあ…」

であっても、
国内でのコンテナ保管は、
神戸は1、2位だ。

メガターミナルオペレーターに
よる 港湾経営、
スーパー中枢港湾政策港の
筆頭に なるべく
コンテナターミナルの
世界水準規模化を 目指している。

「地震にぃ、津波、、新型の
ウイルスかあ。未曾有の災害に、、
色んな事が 起こる時代だよぉ。」

まだ、世界には
AIを使って 港湾の
ターミナル運営を している国は
存在しない。

『AIターミナル』

これにより、日本の港湾は
世界一の能率性を 有する。

また エコ化の流れで、
RORO船舶という、自走コンテナ
による国内輸送の活用も
積極的に取り組まれている。

『ブーッブーッブーッ』

ハジメの電話が着信を告げ。

「ハイは~いぃ!って、あれぇ。
もう、そんな時間~?うん、
行くよ~。ホテルメイドに
来てもらうから 10分で
降りるよぉ。う~ん、
はい!切っちゃえ~!」

今度は 室内の 電話に
ハジメは手をかけて、コール。

『AIターミナル』
熟練技能者が 行っていた
作業のデータを デジタル化して、
次世代継承していく 意味もある。


港湾に関わる人間は
国民全体の ほんの1部だ。

「あ、武久で~す。悪いけど、
荷物まとめてくれるぅ?
10分でフロント降りたい
なあ。ごめんね。」

そうフロントに伝えると、
自分がいる スイートの部屋を
見回す。

部屋には、着替えや資料、
ハジメが滞在した日数分だけ、
荷物が 散乱している。

「さて、裸は不味いよねぇ~。」

ハジメは、鼻歌まじりで、
新しいスーツを取りに
クローゼットへ消える。

神戸港。

毎日使っている紙や、
今飲んでいるコーヒー1つも、
港を通って モノやエネルギーは
運ばれる。

港を通過する、私達の日常物資は

とてつもなく 多い。