カフェに戻ると、ハトリさんは何かを飲んでくつろいでいた。

 カイさんが街の案内のことを頼むと、ハトリさんは快く引き受けてくれて再びハトリさんは私の隣に立つ。

「行ってくるね」

「おう」

「行ってきます」

「あ、そうだ。行く前に、これ、付けた方がいいかも」

 それは、皆が頭に付けている動物の耳で、ハトリさんは慣れたように私の頭にもつけた。

「一応、ね。あ、因みに、僕達のは本物だよ」

「本物……」

「まあ、歩きながら話しましょうか」

 外に出て、赤茶の煉瓦で作られた道を歩く。

 こつんこつんとハトリさんの下駄と煉瓦が作り出す音が、なんだか耳に心地よい。

 一定のリズムで刻まれるその足音は、不安を取り除いてくれるような気がした。

「ここにいる皆には、動物の妖が付いているんだ。主に哺乳類のね。僕はリスでカイはオオカミ。偶に、その中には昔人間にいじめや虐待を受けていた動物の妖が付いている人もいて、人間を酷く嫌っている」

 虐待、いじめ、という言葉に心の痛みを覚えずにはいられなかった。

 ギュッと胸元の服の布を掴む。

「じゃあ、私……」

「まあ、出かけるときはなるべく僕かカイと一緒に居るといいね。でも、さっき飲んだお茶あるだろう? あれを飲めば人間の匂いが消えるから大丈夫さ」

「なるほど……」