夏は境界。ギャラリストが移転を決めた旅。~和光時計の街編

それは、急にやってきた。

いつもなら、必ずといっていい程
アザミちゃんは 教室に
先に来ていて、

アタシが 下から上がってくるのを
挨拶をして
待ってるのに。

この日は
『学校』の授業が、先生が
入ってきて 始まったのに
隣の アザミちゃんが
来ない。

担任?でもない先生に
聞くことなんて
出来なくて、
そのまま 古文の授業が
流れるのを
アタシは 受けとめていた。


ふいに、
何か?が呼んだ気がして、
先生の言葉から

自分の意識が 切れた。

風の音?

きっと 煽られる風の声!

そしたら、廊下を
走る音がして
『ガターーンッッ』

て、教室の戸が 思いっきり
引開けられた ドア口に、

ハアハアって
凄い息をして、

真っ白な顔の アザミちゃん?

ゼイゼイして、
なんだか 言葉にならないみたいで

ただ、
その手に握られたのを
アザミちゃんは アタシに 見せた。

『黒のカードキー』。

!!!

ああ、片道オープンの
『飛ぶ』時のヤツ

だって
頭が認識したら、そのまま
アタシは

自分が 座ってた
椅子を『ガターーンッ』って
ぶっ飛ばして
廊下に 走る。と、
アザミちゃん!!って叫ぼうって
なのに

『アザミーーーー!!!』

聞いたことない 大声で叫ぶ
アザミちゃんの お母さんの声に

アタシが 思った口の動きが
かき消された、、、、、っ!

扉に掛けられた
アザミちゃんの 手に
自分の手が 少し触れたところが

すぐに 離されたら、
アザミちゃんは、エレベーターに
向かいながら 走ってんのに。

泣きそうなのに、
凄く笑ってて、何笑ってんだよ
って、
アタシは 廊下に追いかけながら

よくわからないけど、
めちゃくちゃ 涙流しながら、

降りてきて、中に
アザミちゃんの お母さんが
呼び叫んでる、
そこに走り行く アザミちゃんの
背中に手を伸ばして、
伸ばして、伸ばして!

閉まる エレベーターの扉に
ガシッて 両手をかけてた。

ぐいぐい閉まる、
エレベーターの中の
アザミちゃんのお母さんを
見たら
背中に、ちっさい仏壇だけ
しょっててさ。
笑いそうになったら
手の力が ゆるんじゃうよ。

アザミちゃんは、

『シオンちゃんさ、絶対手紙
出す、出すからさ、』

って、アタシの 今の、それに
これからの住所なんか、
アタシだって
どーなるか わかんない くせに
約束を叫ぶんだよ。

『バカッッ!!幸せなれーー!』

って、それで いいんだよっ
叫んでやって、

気が付いたら
そのまま 先生に
羽交い締めされて エレベーター
から
引き剥がされて 嗚咽して
床に座りこんで
号泣して、

隣の教室にいた
中学組の子達も、気がついたら
みんな 廊下出てきてて、

泣いてるのを
ようやく 自分が 気がついた。


朝から、
凄い車が並んでるなあとか、

駅ビルの 両側のスーツが
やけに 多いなあって
思って 迷宮を

『登校 』してきた アタシは

頭で わかってたと思う。

気持ちが ついてかなくて。
ただね。

1人にしないでよって。

明日から 1人で 授業なんて
涙が出るよ、ほんとって。


入校の時に聞いた。

黒いカードキーは
『学校』を出る時の

片道カードキーだ。

いつもの 聖域エレベーターに
タッチすれば、

もう 途中下車はできないまま、
迷宮駅ビルの
深部階まで 降りて、

地下私道を走る ターミナルに
つくとだけ
聞いた。

ターミナルといっても、
きっと 止まってるのは
ワゴン車一台だろう。

そして
地下私道を走った後
どこからか、地上にでて、
どこか飛行場にでも
いくんだと
アタシは
どこか 思っている。

アザミちゃんは、
デイバック1つだけ背負って
仏壇しょったお母さんと
この日消えて、

アタシの手ある

『白いカードキー』では
あのシンデレラの隠れ家への
非常階段は

開かなくなってた。

アタシは箱庭に取り残された。



1つぅ。 階段を 登るとぉ
そこからはぁ、飛び立てる
ポート。

1つぅ、階段を降りるとぉ
昔、僕が 母と住んでいたようなぁ
仮初めに 休む宿。

もう1つぅ
階段を下ればぁ、日々の糧を得る
主戦のオフィス。

1つ向かいには~、、、
僕が まだ見た事の無い

家庭のあるぅ 居住の城。

今日も シンデレラはぁ
白亜のお城を 夢見て~

エレベーターを上がって下がって
働くのさぁ。


この都市は いつも生まれては
変わる。

世界から魅力的に見えるよう。

シンデレラが
カボチャの馬車にのって
住んでいる屋敷から
摩天楼に通勤するのは昔。

もう次のステージなんだってぇ。

摩天楼はぁ、ビジネスだけの
場所から~、

クオリティのいい住環境とか、
彩り多いカルチャーとか、
よりどり選択肢の購買提供とか、
ストレス0交通とか、
エコで計画された癒しのぉ
自然とか
内包したぁ

多機能複合都市になりつつある。

その構造はぁ、
高く高く 上に環境を伸ばす
垂直利用タワーで
可能にするようだねぇ。

これからもっと
この都市はぁ、摩天楼が 木々めく
ようになるのだろうねん。

今の
シンデレラは
エレベーターで お城に登る?

ある日、最上階から
天上に飛び立てる日が
くるのかなぁ~。

僕は、この人生で~
隣にある 家族と住まう塔を
ステージにさぁ 帰れると
思う~?

「ねぇ?君はさぁ?どう思う~」

初めて出会ったシンデレラはぁ、

まだ高校生でぇ、
なるほど 凄く美人でもないけどぉ
人を惹き付ける 雰囲気が
あれだなぁ、
庇護を刺激する感じ?
だなぁ。

色素が薄いのかなぁ。
明るい茶色の髪にぃ、
反射しそうな 色白で、
瞳も 色が薄い。

どこかねぇ、母と同じ
雰囲気あるねぇ。


「母に似てるかなぁって。
だからぁ、、諦めないでね、
生きて行ってくれるといい。」


思わずねぇ、面談した彼女に
それだけ言ったのがさぁ、

昨日のようだよねん。

亡くなった母の名代として
出会うことが なければねぇ

君に声をかけてぇ、
今、
一緒に仕事をしてはないよぉ。

人の繋がりは ミラクルだ。

僕はぁ、母の変わりに
魔法使いになったわけだよん。
これがねぇ
プリンスではなさそう。

ガラスのハイヒールも
ドレスの 1つも
用意できていないから
かなぁ?

「ねぇ~?君もぉ そう思う?~」

ハジメは 摩天楼の夜景を
眼下に 唄う。

近代日本における
『貴族』とは
明治に在した『華族』と
いわれ、その類は
出自や、明治政府誕生に
おける貢献などで、
報奨されたりなど
いくつかに分けられる。

江戸において公家に由来する
『堂上華族』、

江戸大名家に由来する
『大名華族』、

国家勲功により賜る
『新華族』、

公家出身で神僧籍から還俗した
『奈良華族』といった
『僧華族』『神門華族』、
である。

原則、華族は東京に住を
置く事が定められ、
華族の教育のために開校された
一環学院にて教育され
貴族院、帝国軍、明治政府官僚
そして皇邸庁といった公政務に
ついた。
多い時は110家ほどの華族が
名を連ねている。

皇族が婚姻を結ぶのも
華族からとなり、
華族は宮内庁管轄。
時代は
現代となり、華族制度は
終わり
旧華族の扱いである。

ハジメの母親は

還俗からの華族家から
元大蔵省を司る一族に
嫁いだが、
ハジメを出産して後に
治らない病により
離婚させらた。

旧華族の実家には戻らず、
ハジメと籍を興して
母親とハジメは
各地を静養巡礼するかのように
ホテル住まいをしていく。

そんな母子2人の
仮住まい生活も
ハジメが大学に通う頃
終演。

たった1人の家族でもあった
母親が 亡くなった。

本来なら 実家門から
重々たる送儀になるのを
ハジメと 母親付きの
執事と侍女で葬くり
相続の手続きをしていた中

毛色の違う封書を見つける。

西の財閥企業家、本人からの
ある学校への特待生支援の
寄付願い。

経緯はわからないが、
母親が 首都圏でもない
西の特殊な学校に
寄付者として名を連ねて

学校から遠く住し、尚且つ
女性旧華族の血縁である事に
縁を繋げてきたらしい。

母親が亡くなる数ヶ月前に
届いていたままに
なっていた封書。

唯一の家族であった
母親の死は辛く、
その中にあって整理に
忙殺される世界で
気力を削がれていた
ハジメは、

何もかも捨て置いて
封書を言い訳に
首都を出た。

気分転換や、慰労の旅に
出るなんて 今は
気持ちにならない。

母親は、沢山のモノを
残してくれた。

けれど、たった1人になった
孤独の中で
追い立てられるように
それらを
整理をする虚しさに
耐える煩雑さ、

胸に虚空を開けた
ような
生きてないような感情を
蓋している
自分を見続けるのも
限界になった。

何もかも滅茶苦茶になって
壊し巻くって
何処かに 行ってしまいたい。

誰かが待つ
そんなシガラミさえ
もうないくて 1人きり
誰か 片付けてくれよと
笑うしかないのか。

ハジメは、空笑いする
灰色になった世界から
少しだけ
自分を隔離したくなって

新幹線の
当日券を買った。
目指すは、西。

特殊な学校の 『名刺』だけを
手がかりに。



アザミちゃんに会うのは
あのエレベーター以来だからっ
一体何年ぶりだろう?

『飛んだ』後に届いた、、
エアメールは、『学校』を通して
届いたっけ?

その後も『学校』から
アザミちゃんの手紙は届いたよ。
アタシからも『学校』挟んで
アザミちゃんに手紙を
書いてた。

重厚でオーセンティックな
エレベーターの扉が 開く。

そんなやり取りをしてた
アザミちゃんの手紙がっ
『普通』にアタシんとこに
郵便されて、
アドレスをようやく
交換したんだよねーっ。

扉が開くと
そこは 豪華な白亜のエントランス
ホールだー。

うわあー。

西の公会堂で
最古の近代建築っていわれる
バロックとかね、
ネオロマネスク調の
場所が あるんだけど
そこをもっと 今風にした感じ?

サロンホールって、
なるほどねー。セレブリティー。
ブライダルでも
使うんだろうねっ。
いいなあ。

エントランスの左右に
廊下があるけど。
隣のファシリティの日本庭園が
ちょうど見えるホールが
ありそう。
そっちの方に行ってみよっかなー

廊下も天井がアーチで
ヨーロピアンスタイルかあー。
うん、本当に お城チック。
どこかクラシカルだし。


欧米の富裕層が
建築した 公共建築に、
感銘をうけた 明治の日本人が

自国にその文化形式を
持帰ったモノを
つぎ込んで
建てられた建築スタイルだねっ。


海外の賓客をもてなす場所。
いわゆる舞踏会とか
オペラとか出来る建物を
経済家とかが
共同出資して 建てるんだよ。

てっ!!
ほら、まるで そんな宮殿!
みたいなホール?

空いてる装飾ドアを
くぐるれば、、

ほの暗く照明を落とした中に
天井のダウンライトが
アーチに浮き彫りにして。

はあーーーーーー!!!
なんじゃっ?この天井!

天空に四大天使や
ケルビムだっけ?
天地創造だよね?このシンボルな
天井絵画ってやつだよー。

古代神話を天井にね、
壁には 豊穣神話っぽい
布画なんてっ。

ロマネスクの柱装飾がね、
シャンデリアのホールを
ぐるりと アーチ回廊で囲んでる。
んだよー!

あー、上ばっかり見上げてたら
口開けっ放しだわっ。

まるで、
宮殿の大広間だねっー。
モダンで豪華って、
天井の間接照明が天空を照らす
から、青い光なんだけど、、

それが四角いプールみたい。

黒に浮かび上がる
プールライト、、そうか
それは、ボールルームダンスの
本場じゃん。


『カツーン!カツーン!カッ』

大理石調の床に ヒールの音が
一定の音を響かせる。

どこか和洋折衷な
ステンドグラスが上部はまる
窓から差し込む

ネオン?まさかね。

ああ、向かいの日本庭園が
ライトアップされてるんだっ。

ほの暗く浮き上がる
ステンドグラスとライトアップに
シルエットを作りながら

ホールに ヒールを響かせる。

「アザミちゃん!!」

『カッ!カーーーツ!カツーン』

「アザミちゃん!!ってば」

『カツン、、』

丁度、シャンデリアの下

ロングヘアを後ろで束ねた
長身の彼女が

「気が付かなかったな。」

振り向いた。

「アザミちゃん、アザミちゃん!」

なんでだろ?
いろいろ 元気だった?とか
久しぶりとか、言えるはずなのに

馬鹿みたいに
名前だけ叫んでね。

アタシは 涙を生み出す事しか
出来なくて
言葉にならない。

「、。シオンちゃん。」

アザミちゃんも やっぱりそうで、
クロブチの眼鏡から
キラキラ 涙を 雫にしてる。

だから、

アザミちゃんに ハグして、
涙を お互いに誤魔化すね。

「あ、シオンちゃん。名前、
わたしさ、名前変わったの。」

出された、名刺には
このヒルズビレッジのブランド
ホテルと ホール部が
脇書きされて、

真ん中に

『田村 あさみ』 って、

印刷されている。


「あさみちゃん。なんだ。」

「悪いんだけどさ、
そーゆー 事で いいかな?」

改めて、名刺の名前と
アザミちゃんを 見比べるとね。

一見、アタシが知ってる
彼女と 印象が変わってるっ。

「そっか。ううん。いいよ。
アサミちゃん。だねっ。」

そうは、
言うんだけど、口がね
ワナワナってなる。
胸が 潰れそうなんだよ。
ダメだー。喋ると
泣きそうだよーっ。

ふと
壁画の 豊穣の女神が
ニンフ達と 輪舞しているのを
見つけた。

だから
「一曲いかが?」って、

それだけ精一杯に
我慢して
彼女に手を 差し出せたよ。

アサミちゃん。は、
眉を真ん中に寄せて
ハの字に下げながら
笑うように 手を取ってくれる。

2人で、礼をして

追憶をBGMに、
ゆっくりと2人で、
ワルツもどきを スタートさせる。

回路のアーチが影を伸ばす中

くーーーるーーんんん、、

ゆるやかにカーブを
滑るように ナチュラル
スピンターーーン

なんてね。

アタシは 見よう見まねで、
足運びも ままならない
のに、

彼女は 優雅にリバースターン。
リード
してくれるっ。

黄昏はもう 帳が降りて
並ぶ窓から 差し込む
ライトアップの光が
色鮮やかになる。

普通なら
薄暗くなって 心細くなる
ホールでしょ?
でも、
アタシ達には 馴染みの空気。

スローモーな流れで
つむじ風そのものになったような

アサミちゃんの体躯は
相変わらずで、静寂と
ダンスするみたいに、

心落ち着く。
懐かしいのかな。
それには、少し悲しい
共有の時間だったと思う。

走馬灯のように
回転灯篭みたいに
あの『シンデレラの隠れ家』での
時間とかが

ターーーンすると
目の前に揺れて、ホイスク?


頭上の大天使様が 見守る様で、
あの時の景色が 浮かぶ。

光る絹の糸を
針に通して、繋ぐレース。

手にしている
光沢の感触と 裏腹な
息を殺して生きる時間、、



シャッセもどき!って!
そんな 踊れないよ、アタシ。
アサミちゃん!
思わず 睨んじゃうって。

あ?流されたっ。

つーーーーん。だって

ナチュラル スピンターーーン。

シャンデリアが揺れる。

無言で 踊るしか
息抜き出来る事 なかったね。
あの頃。
だって、何にもないんだもん。

壁の妖精たちみたいに
ターーーン。する。

アサミちゃんは、泣きそうに
楽しそうに
また
ターーーン。

すると、
アタシの手をフワリと
放して そのまま タンタタンって
フリックして、カーテシー。

そのまま、佇む 2人。

踊ると 分かるよね。
いろいろな 気持ち。

だからアタシは、

「アザミちゃん。
幸せ、なれてる、かなあ、、」

そう 投げ掛けて、
彼女の胸に着けたままの
『田村 あさみ』
という ネームプレートを
見つめて しまったんだよね。



ハテナ?デスネ?

シオーンが、
フレンドとご一緒して
ディナー出来るのですわ。
Why?何やら
オーナーとヨーミー?おかしい。

「田村 あさみです。図々しくも
お食事をご一緒させて頂きます。
あの、よろしくお願いします。」

お見えは、
丁度ドライシェリーを
ギャラリースタッフで
アペリティフにと
口にした すぐ後ですわ

シオーン
フレンド、『アサミ』。

少し意外でしたわね!
控え目なレディですわ。

同じムードを見たよーなって、
首を傾げましたわ。
そうですの、ハジメオーナーに
似てますの。

オーナーは
イケメンですわ。なのに、
印象に のこらないのです↑↑。

『プライベートアイ』

それっぽいのです、彼女も。

「田村 あさみさん~かぁ、、。
シオンくんも 久しぶりなんだ
よねぇ?ごめんねぇ。
こっちが 無理言ったみたいに
なっちゃったねぇ~。」

珍しいですね!
あんなにオーナーが
上から下まで ゲストをサーベイ
するなんて!

ヨーミーも、
芳醇な コンソメスープが
スプーンから 口に 入ってません。

「ダレン。
スープ!超デリシャスですわ」

「うむ。スッポンと思う。濃厚で
深いのに、澄んだスープだと」

「スッポン?↑↑」

「アジア圏やロシアにいる
亀だが?初見か?ケイトウ?」

「ダーー!タートール!!」

「いや、欧米ではカタツムリも
食するではないか?同様だろ
しかも、これ美味じゃないか?」

Wーoooーー、🖤ナイスですわ。
確かに スッポンコンソメ、
ディープテイスト、、。

じゃあ、アンティパスト。
サーモンのソースシャンベルタン
ですわね♪
フフっ↑↑ビューティフルね↑!

「アサミさんは、
このヒルズビレッジで
お仕事、されてたのですね。」

ヨーミーが、立て直した
みたいです。
あら?ヨーミーも、アサミも
眼鏡女子ですわね。

ヨーミーはね、お洒落ですから
纏め髪に スカーフをナイスに
編み上げてるのです↑

アサミはー、、
アンダーで後ろ バレッタくくり
ですわ。ナデシコですのね。

「このタワーに入る
ブランドホテルのバンケット
ホールでコーディネーターを
してます。また お世話になる
事も、あると思いますので、」

Oh 彼女 バンケットスタッフ?

ずいぶん綺麗な ムーブメントで
トリュフとフォアグラの
鴨ロール包み を
食べるのですもの。
なかなか
キャリアあるのかもですね↑↑

「ケイトって、さっきから
やたらアサミちゃん、
見てるよねっー。なにー。」

「ノー!『ショサ』?キレイと
思ってるのですわ。シオーン、
睨んでも カワイイだけね。」

Fuu、誤魔化しておいて。
このパーフェクトに
芳ばしい香りのスタイル◎な
鴨ロールをパクリと口にして♪
Uh〰️☆☆

「ケイトウ。先程より 百面相が
酷いが、大丈夫か。実際この店は
ハイ クオリティと思うが、、」

客人が、お前に驚いている。と、
ダレンに顎で アサミを
示されて、ケイトウは

「sorry。あまりにデリシャスで」

そこで アサミに、スマイルして
「おお!黒トリュフ良きっー」と
カワイくなってる
シオーンに

「タワーのサロンホールは、まだ
見たことないのですわ!
イントロダクションでならパレス
スタイルとあったのですけど?」

話題をフリますです。
それに ここは チェーックで↑↑。
た・い・せ・つポイントですの。


「あっ!そう!そうだった。
オーナー、ここのサロンホール!
本格派でしたよっー。
例えるなら、
中之島のと 桜ノ宮にある
公会堂を 足して割ったみたいな
作りで、
アールデコなステンドグラス
まで、ありましたからっ!
ギャラリーでも
使えそうですよっ充分!!」

ナカノシマ、サクラノミヤ、?
ノー。わかりませんです。

「OK~。今のでぇ、
雰囲気わかったよねん。モダン
アートでもぉ マッチングしそう
なのかなぁ? どう、アサミくん」


なによー、ダレンだって
ナカノシマもサクラノミヤも
ノーチェックですわ。
だって、彼も
ラムにベルグーソース、口にして
目、開いてるだけですもの!

え?まずは食せよ?
わ、
ソース!ミントテイスト!繊細!
うんうん、ダレン これ
ファンタスティックよね↑↑!


「実は、サイドの壁画部分は
ミラーとか、天井空から 黒に
グラデーションした カラー壁に
入れ替えができます。
ボールルームダンスや、
晩餐、授賞式にも 対応できる
仕様なので、ホールの対応は
多角的に可能です。なんなりと」

アサミが答えると
ヨーミーが 眼鏡をキラリと
させるです。

「じゃあ、本当に鏡の間みたいに
なると。向かい庭園が 映りこむ
と、印象かわりますねこれは。」

Funu funu
近いうちに バンケットホールを
チェックに降りますわ。

Haaa〰️☆
シルキーな中に スミレのブーケ
このワインと ミントソースが
フォレスティック!!
森、森ですわ

オイシイはジャスティスです!

「確かにっ、先輩の言う通りなら
天空から地上までのイメージを
あのホールは 表しているって
事かもっですかっ?深ーい!!」

カワイイもジャスティス🖤!

シオーンはですね、
ロイヤルカワイイなのです。
ダレンが、呆れてます。
オ・シ・ゴ・トしろ?ですわね。

「では、オーナー、!
バンケットホールで 開催する
ギャラリーアート作品!リスト
アップですわね。ラジャー」

「ケイトゥ、よろしく~。
この夏のクルーズギャラリーが
終わったらぁ、すぐにフライヤー
印刷手配してぇ、あ、その前に
アサミくんにぃ
ホールスケジューリング
しといてもらわないとねぇ。」

あらまあ、もう そう言いながら
オーナーってば
デザートしてるのです!

「クルーズギャラリー?という
ことは、船をギャラリーですか?
ゴージャスですね。初めて
聞きました。勉強になります」

「あぁ、そっかぁ~。今回はぁ
神戸港から チャーターなんだよ
ねん。アサミくんも 案内した
かったなぁ。残念だよぉ~。」

ハジメオーナーは
フラワーデコレーションの
カシスシャーベットを
楽しそうに すくって
ますけど、
あのアンダークリームは☆?

「ケイトウ、他は
サフランのパンナコッタと、
フランボワーズのムースだと
思われる。垂涎だよな。」

ダレンもスイーツに目がない
ですものね。

「もしなんでしたら、最終の
返却マリーナを こちらにすれば
宜しのでは?ダレンやケイトウの後学の為にも。変更しましょ。」

Uwu!楽しみですね↑↑さすが、
ヨーミー。ナイスアシスト。
それに
Wooon
まんぷくでーす↑!

ナンバーリング『夏秋』の
プライベートルームで ディナー。
ゆっくり コースを楽しめたのは
オーナーに感謝ですね。

この国のフレンチは
どうしてこんなにグレートなの?
スタイルもエクセレント☆

アーンド、プライスは、、
マイガっ!


今日は、
ホテルルームも ギャラリーで
リザーブ。この後
真夜中の女子会です!

「アサミ!この後!女子会です」

もちろん!シオーンのフレンド
ですものね。

「すいません。今日は、ディナー
に呼んで頂いただけでも 。
有り難うございます。明日の仕事
の準備もあるので、お暇させて
頂きますね。お声かけ 嬉しい
です。またの機会には、ぜひ!」

Yaaan!いいこなのです!

「イエス!またランチプリーズ」

まだ、知り合いすくない タワー
です。ランチフレンドゲット!
ダレンオンリーだと 飽きますわ。

「この出会いに 主よ感謝します
といった、顔かケイトウ?」

こんな ダレンにはムカつく
ですけど、

「イエスですわね!」

ランチは絶対女子オンリー!!
ダレンはロンリーランチですわ、
ザマアです。

再び、そして
今度は 1人で戻ってきた
ヒルズビレッジにある
タワーオフィスのエレベーター。

エントランスに 佇む 。

昼間に訪れた
巨大な総合病院も
リュクスなホスピタルセンター
だったが、
このタワーもモダンだ。

何機もあるエレベーター。

意匠として
アンティークシステマチックに
動力部分をオープンさせた
エレベーターホールは

巨大な時計の歯車が 銀河の様に
回転し、重厚な
デザインを加える。

そんな風に
考えて、レンは 昼間に
渡された
ヒルズビレッジ関係者だけが持つ
専用カードキーを
手にした。

召還した、エレベーターの
扉が開く。

中から 1人、
長身の女性が
降りて、レンの横を スッと
通り過ぎれば
やや 胸元より下

懐かしい香りが、僅かにした
気がして 思わず
レンの 瞳孔が開く。

一瞬にして 脳裏に浮かぶ
愛しく 遠い情景。

どうやら、呼び出したは
唯一自分が拘る
情念らしい。

見知らぬ 女性が見せる
一纏めにしただけの
後ろ姿を、
エレベーターの内側から
暫し
ほの昏く 見つめる。

泡立つ 心を静かにして
カードキーを タッチさせてから
フロアボタンを

レンは 押した。

↓↓↓


「奇遇ですね、ハジメさん。
こちらで お会いできるとは。
新オフィス、 移転。
おめでとうございます。
先日は 指輪のメンテナンスも、
ありがとうございました。」

まるで 予定調和の如く 台詞吐き
出現した 彼。

ハジメオーナーが
ディレクター(Dir)の略呼で
話かける
男が 自分の眼前に
降り立ったのは
ディナーを終え、ラウンジで
2人。
オーナーは 『ヘネシー』、
自分は『バランタイン』を
傾けていた頃だった。

ギャラリーの女性陣は
『女子会』だとホテルへ下り、
ギャラリーメンズ
水入らずと言った 一時だ。

彼のDir。
いつもならば、
ケイトウが お相手をしている、
確か 企業研究センターの
人間だったはず

『氷の貴公子』と敬称するが
ピッタリの、長身の美丈夫。

自分と 正式に挨拶するは
初めて故に
まずは 名刺を交換す。

それを確認しつつ
いや、これは なかなかの
企業戦士と、紙面より認識。

合わせて
濃紺スリーピースの下。
護身術、嗜むかの 上腕を
盗み見る。


「やめて~。相変わらず喰えない
挨拶だよねん。私は Dirと、並び
たくない~。黒髪がなびくとか
さあ、Dir やめて~。Assoc君
は?ほら?爽やか脳筋くん。」

どうやら、Dirな彼は
ハジメオーナーと 気の置けない
仲と見える。
しかもAssocと呼ぶ脳筋部下にも
気安いと推測。
にしても総じて、
如何な カンパニーか。
いや、よく知る大企業だが。
何奴?

「カスガはもう上がりましたよ。
その節は、ハジメさんには貸しを
作ってしまいましたね。
ダレンさんは、、、
お茶を嗜まれるの ですか。
いや、失礼。移り香でですよ」

「クックっ、Dirも 鼻が効くよねん
Assoc君を置いてきぼりで
ここで 休憩なのぉ~?」

微笑みの指摘に
思わず自分のスーツから
『オマッチャ香』するのかと
然り気無く
腕を上げて 嗅いでみる。

「いえ、人と会う約束を。
わざわざ、キーまで貸して頂いた
もので 断れなかっただけですが。
ハジメさんがいるなら、上がって
きた甲斐が、ありましたね。」

彼のDirは クールに
笑みを浮かべるが、なんだ?


「ふ~ん。なるほどねぇ。
ならぁ、
1つさぁ、前から気になって
いたんだけどさぁ、シオンくん
って
「従姉妹ですよ。 ハジメさん」
え!
えっ?そうなの~、てっきり
元カノかと思ったんだけどぉ。」

はい?!
オーナーの言葉に
被せてきた Dirの台詞は、
聞き捨てならぬ。
このDirなる男、シオン姫の
従兄弟と!

改めて
目の前の 貴公子を
頭のテッペンから、足の先まで
観察する。

ほう、それでか。
先程オーナーと 話していた
メンテナンス済みの指輪。
あれは、確か シオン姫が
ギャラリーディスプレイにと
彫金したモノだ。

「まさか、元カノと思われて
いたとは 考えもしません
でしたね。意地悪く、へんな
B面を 推理しないで下さいね。
『武々1B』オーナー武久一さん」

ハジメオーナーに
あぁ。本当に 綺麗に、
口を弓なりにして
表情固定のスマイル、怖い。

よくも またオーナーは、

「アハハは!って爽やかに笑って
くれちゃって! そんなとこ
嫌いじゃないんだよねぇ。」

どこ吹く風で Dirの肩を
叩いてるから、こちらも
怖い。

「よろしければ、Dir、
何か、頼まれますか?」

風向きを変える為にも、
自分が グラスを振って
彼のDirに 声掛けを

した途端だった。

バタバタと エントランスから
1人の男が 足早に 向かってきて
彼のDirに声を かける。

どうやら、待ち人の 様だ。
Dirは その男と 短くやり取りを
して、

「すみません、待ち合わせの
相手が来ましたので、ここで
失礼します。
ハジメさん、ダレンさん、また
お会いした時にでも。では。」

スタッと それでいて
覚えとけと言わん眼差しで
頭を下げつつ
行ってしまう。
相手の男も、
こちらに きっちりと会釈。

そのままラウンジを使うのかと
思えば、
折り返して、
エレベーターホールに 2人は
消えた。

「慌ただしそうですね。」

自分が 誰となしに 呟くと、

「急用なのかもねぇ~。」


ハジメオーナーは呑気に
空になったグラスを振るので、

「じゃあ、オーナー 追加で
何か、頼みましょうか。
お供しますよ、自分も。」

そうして、
ハジメオーナーと2人
窓際からの夜景を
愛でながら
追加のグラスを傾けた。

先程の 貴公子に関しては
ノーコメントで。

↓↓↓↓↓

スイートルームには
2つシャワールームがあったから
ヨミ先輩と ケイトウに
先にシャワーをしてもらったー。

ルームサービスで頼んだ
フルーツ。

コアントローとペパーミントの
香りがする フィズは
ピンク色に冷たく、それを

1人で
楽しんでいる。

2人が出てて、シャワーを
交代したら、
『まくら投げ』だって
ケイトウが 張り切ってたからっ
今のうちに
飲んじゃうのだよっ。

アサミちゃん ことアザミちゃん。
今はまだ
帰りの電車かなー。とか
考えてしまう。

今日、本当に短い時間の再会。
あまり 沢山は話、
しなかった なあー。

会ったけど、、、。
良かったんだろうか。
きっと アザミちゃんも
ようやく 色んな意味で
日常になったはず。

アタシも、結局ギャラリーで
お世話になる頃まで、
かかったもんねっ。

夜逃げた 気持ちも、
パパの会社、整理する事も。

「・・・・」

窓際のサイドテーブルに
フルーツとカクテルグラスを
持って行く。

目の下に見える
光の流れの どれかは
アザミちゃんの乗る電車かも
しれないなと 今度は
思う。
そして 街の灯りから 夜空に
視線を上げた。

「後輩ちゃん、シャワー
あいたわよ。お先に頂きました。
あら、もう貴女は飲んでるの!」

先輩が、
ドライヤーを 持って
悩ましきかなバスローブ姿で
こっちの 窓際にくる。

「先輩!あれっ。ヘリですよね。
もしかして、ここのヘリポート
着くのかもですよっ!今って、」

迫る特徴あるライトを
指さして、先輩に言えば。

「ほんとだわ。ここ、
そういえば、ポートあったわね」

「でも、先輩、こんな
今規制して、 厳戒体制の時
なのに、 ヘリ飛ばせますっ?」

「 それでも 飛ばすということは
要人だわね。オーナーも
見てるハズだから、また忙しく
なるかもね、後輩ちゃん。」

えーっ!それどーゆー事ですか!
って 目を白黒させてると、
ヨミ先輩が、
ツーブリッジの眼鏡を
指先で、押し上げて

「このヒルズビレッジは、
ナショナルゲートって事よ。
下手したら、大使会議とかの
対応が、例のホールでもある
かもって話だわ。なら、
『サブスクリプション』する
作品も出てくるでしょう?」

はあーっ、
文字通り 雲の上の
話ですねと 言いつつ

シオンは 1つ
フルーツから イチゴを
摘まんで かじった。


ヒルズビレッジは
その一番地下に、
直結する 新しいステーションが
建設されている。

オフィスタワーの地上階からの
沿線と
地下階からのメトロ。
クリスタルガラスの吹き抜けが
至るところデザインされた
構内の 地下階段の途中で、
アザミは 大きい天窓を仰いだ。

規則的で、独特な飛行音が
頭上に開けた空を
横切り 旋回している。

どうやら、
今週に入って情報オープンされた
要人輸送ヘリだろう。

明日職場に出勤すれば
また何かしらの
スケジュールが発表される。

世界の貴賓を招待しての
国家行事を秋に控え、
出来たばかりの
ヘリポートの離着テスト。

そうアザミ達、
スタッフは聞いている。

これまでに
首脳会議のセッティング
経験者は
チームのリーダーとして
立案に忙しいが、
アザミ達は 完全にサポート。
呑気なもの。

旋回して着陸態勢のヘリの音を
聞きながらも、
止めた足を また下り階段へ
運ぶ。

地下に目をやる。

「シオンちゃん、驚いてたなあ」

思わず
溢れた言葉の意味を、
確かめるように
クリスタルガラスに映る

自分の姿を アザミは
一瞥した。
それでも、、

「会えてさ、良かったよ。」

あの頃の自分とは
違う形かもしれないけれど、
かつて同じ『学校』で
束の間の
人と、どこか 違う青春を
共有した 友。

「うん。帰ってきたってさ
ようやく 実感できたかも。」

そうして、ぐっと 力を込めて
右の手を 握りしめる。
祈るようにそれを、
開いて
何もない 手を見る。

よし!と、

メトロステーションへの
地下階に降りれば
同じように改札を目指す
仕事帰りの人混み。

どこにでもいるような
後ろ姿をして、

アザミの姿は
雑踏に紛れて 消えた。


↑↑↑↑↑


ヒルズビレッジオフィスタワー。
そのVIPラウンジで
待ち合わせをしていた 相手に
引き摺られ
エレベーターホールに
連れられた、レンは

「こちら、お返ししますよ
ドクター。わざわざ 此のような
モノまで渡して、何事でしょう」


おもむろに、
手にしたカードキーを
相手に返す。

今夜の迎合相手は、
このヒルズビレッジにある
セレブリティな
巨大総合病院のドクター。
普段は『読影』で引っ込んでる
はずの画像診断医だ。

「こうでも、しないと君、
来てくれないでしょ?」

出入りする大学病院でも
たまに、ラジエーションハウスで
同類のドクターを
見かけるが、
この相手は レンより 少し
年齢が上程度の若さで、
それは 珍しい、、、

そうでもないか。

「どこに拉致されるのでしょうか
できれば、厄介事は遠慮します」

そもそも、
レンが 懇意にしているのは
研究ゼミ時代のME、
臨床工学技士の友人だった。

「ちょっと相談に乗って欲しい」

その繋がりで、何故か
紹介されたこの相手は、
院内でも 服装は Gパンの
ラフスタイルで、
今も 秒速エネルギーゼリーを
口に咥えている。

はあー。
レンは、わざとらしく溜息つく。

そんな
レンにお構い無しに、
相手は、器用にゼリーを咥えた
ままに

「ところでだけど、君って結婚
してたんだね。まあ、イケメン
だし、モテるだろうけど。でも
今、その指輪、気がついたよ。」

言い寄ってくる。

渡したカードキーを持つ
掌で、メンテナンスした指輪が
よけいに 目立ったか。

レンは、その環に唇を寄せて

「最愛の人の リングですよ。」

とだけ伝えると、相手は
特に 気にしない素振りを見せる。
これで、この話は打ち止めだ。

その証拠に
呼ばれたエレベーターが開くと
無言で 乗り込む 2人になる。

相手が カードキーをタッチして
フロアを指定。
その階を理解した レンは、
思わず
相手を静止した。

「ドクター!!どちらにいかれる
つもりですか。上なんて、、、」

「悪いが、ヘリポートだ。君、
高所は平気?無理でも 連れて
いくけれど。すまんね。じゃ」

そう言って、
自分の耳を指さして、
ハンズフリーをONにするのを
レンに強要した。

「高所は、平気です。日本で
一番高いビルのヘリポートに
上がった事も ありますので、
ご心配無用ですよ、ドクター?」

だから何故ヘリポートなんだ?

抵抗するのを早々に
諦めたレンは
思っ切り、口を弓なりにして、
自分のハンズフリーイヤホンを
耳にする。

エレベーターは ガラス張りの
手狭なエントランスに開く。

360度、
視界良好なせいで
重厚な扉が開いたとたん、
同じ目線に 夜空が広がる。

ふと、宇宙まで続く
エレベーターの計画があるが、
こんな感じかもしれないなと
レンは 考えた。

「ここ、防音効いてるけど、
出たら凄いから。もう旋回
始まってるしね。」

レンを拉致した相手は、
エントランスから外を指さす。

なるほど、上空には
着陸信号を赤く光らせ、
サーチライトを照らす 機体が
腹を見せていた。

2人で、エントランスを出れば

『タクタクタクタクタクタク』

と、独特の旋回リズムと
『シュゥーーザ、カチャカチャ』

エアーを切りながら、機械音を
出して 下降始めた
ヘリコプターが 一代、
さっきの 夜空から
着陸してくる、風圧。

「なんだ、有名ブランドが
作ったっていう、例の
ヘリコプターじゃないんだ?」

耳の奥から聞こえた
相手の言葉に、

「やすやすと襲撃を受けて 良い
人物では、ないのでしょ?
このヘリ、要人輸送ヘリですよ」

まあ、この時期に
首都ど真ん中を、『飛べる』のは
どんなセレブでも無理だろう。

『ヒュンヒュンヒュンヒュン』

ポートに就いて、暫く回る
ヘリのプロペラを 見つめて。
隣で 白衣をバタつかせる
ご仁を 盗み見する。

「そもそも、 出迎えが
私と、貴方だけ なのですか?」

合わせて、ゼリーは
白衣のポケットに 仕舞っては?

との レンの問いかけに

「今日はヘリの離着訓練だとさ」

このご仁は
飲み干したゼリーのゴミを
無造作に 白衣に突っ込んで 答える

「訓練ですか。初ヘリポートの
使用が、今という事にしたと。」

安全確認だろう、
ヘリのドアは すぐには動かない。

「親日国で 何人目かの王子が
技術省補佐官をしてるって
言えば、予想できる?そこの
補佐官が、メディカルチェック
しに来たついでに、国益になり
そうなモノを相談したいってさ」

1人 警帽被りの男が 出て来た。
航空警備隊だろう。

「ドクター、そういう事は 閣僚や
官僚での案件ですよね?あと、
要人には ボディガード、ついて
くれますよね。狙撃対応なんて
出来ませんよ。さすがに。」

左右や周りを確認して
向こう側に 警備隊員は 回りこむ。

「君、格闘技できるよね、確か」

2人並んで 直立をしたまま
とんでもない台詞を吐く ドクター

「護身術を、嗜む程度です。
あと、今は 亡き者になる
つもりもありませんよ。」

眼光を鋭くして、睨むレン。
勘弁してくれ。

「骨は拾うし、ちゃんと読むよ」

「埋める墓も決めてますし、その
手も、決めてます。結構です。」

やれやれ、冗談も通じないか。
と、相手は肩をすくめ、

「もと我が国の官僚が、今は
退官して、彼の国に移住して
てね。その人間が繋ぎでね。
出来れば民間を希望なんだと。
ぴったりでしょ?旨味あるよ」

君なら、この国の開発とか
研究途中の技術でも モノでも
解るよね?と 隣で笑う。

さっきの話は無視され、
レンは 忌々しく舌打ちする。

「確か、天然ガス資源が 豊富で
シンガポール並みに、国民利益が
ある国のはず、ですよね?」

そうだ、
唸るほどゴールドがある国だ。
確かに 資金があれば
進む研究を抱える処も
国内には多い。

それも合わせても。

なんの因果か。


向こう側から、
スーツ姿の日焼けをした
恰幅のいい 男性が
ボディガードや 警備隊員に
囲まれて、歩いてくる。

「未来への政策を探して この国に
来たんだろうよ。あ、日本語で
十分話できるって。切るよ。」

ハンズフリー会話が終わり、
ドクターは 向かってくる
要人男性に 挨拶をする。

ドクターは、手短かに
レンを すぐその場で 紹介した。

腹を括るか、、。
レンは 密かに 息をはいた。

そして、予め
すでに 手の上に出していた
名刺を その要人に
見せ、一旦、
秘書を介して 渡す。

思えば、これまでも
この紙一枚で 幾つの縁を掴んで
結んで、
繋げてきただろう。

初めは、まだ力の無い自分が
大切なモノを守る為に
その 紙を手にした。

そんな事を
要人が、秘書の手から
名刺を見る姿を、
表情を 固くして
見つめる。

彼の国の要人が
穏やかに、それでいて威厳ある
顔で、話かけるのを
ドクターとともに
受け答える。

「一枚の縁が、人生決めたな」

誰にも聞こえないよう声にする。


回りを 人の砦に囲まれながら、
ドクターが
エレベーターへと 誰もを
案内をすれば。

召還される扉を前に、
夜風が 自分の額の汗を
冷やしている事に
レンは
気がついた。

「見事だな。」

レンは ようやく、ここで
足下に 何処までも続く
この街ならではの 無限夜景を
眺める。

迎えた要人を前に、
迎えられた 歓迎を前に
どちらも 緊張からか、

この夜景に気がつかない。
だから、
1人で 眺めるのは 残念だ。

「ますます、
君から 遠くなる気がするな。」

落とした視線が、自分の胸元に
降りる。
ふと、
さっきの情景が浮かび上がる。

ーさっきの彼女。
シオンの、何だろうか。ー



エレベーターから 見送る 後ろ姿。

彼女は、
キラキラと輝る
最愛の従妹の 『薫り』を 夜風に
昇華させて、
消えた。

出来れば、会えない薫りを
もう少し、堪能したかったと
思う レンの
目の前で、

未来を乗せた

エレベーターの扉は 閉じた。




END
2020・9・1~26
『夏は境界。ギャラリストが移転
を決めた旅。~和光時計の街編 』
脱稿


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