だから国語の教師がその日記に書かれている内容を授業前の話題にしたとき、守秘義務はないのだろうかと疑問を浮かべた。
好意的な内容であるのなら、百歩譲ってまだ聞かないことに出来た。しかし国語の教師が語った内容は否定。
こういう勉強をしている生徒がいる。そんなもので身に付くわけがない。
こういうのが好きな生徒がいる。こんなもの、何の役にも立たない。くだらない。
昨日こんな生徒が――
日記に――
――――
――
名前こそは出していないが、話の対象にされている生徒は矛先を向けられているようなものだろう。自分がその生徒の立場になれば、日記を見返すことはおろか書くことが嫌になる。
しかし教師は言っていた。皆の日記を読むのは面白い。
学生の頃の幸哉の担任も言っていたことだが、この教師がその言葉を口に出すことを幸哉は良しとしなかった。
かといって、幸哉に何が出来るだろう。教師でない人間が、教師に対して間違っているなんて盾突くことは出来ない。口論の際に言い返すに当たって、資格というものが足りないのだ。
にもかかわらず、幸哉はクラスの担任に頼んで一人ひとりの日記を見せて貰った。国語の教師が語っていた生徒が誰か知りたかった。生徒からしてみれば知って欲しくないことは察しの上だ。