売れたってこと？

　それしか考えられないけれど、それでも私がお昼を食べに行っていた三十分ほどの間にこんなにもたくさん一気に売れるのだろうか。

　私が一人で店番をしていたときは約二時間で十人ほどが購入してくれた。立ち止まって商品を手に取って見てくれた人たちはたくさんいたけど、実際に購入してくれたのはそれほど多くはなかった。それが、店番が由貴ちゃんに変わっただけでこれほど売れるとは……。

「由貴ちゃん、何したの？」

「いや、特に何も。ただここに座って店番していただけ」

　それなのにこんなにもたくさん一気に売れたのってもしかして……。

「イケメンずるいっ！」

「え？」

「イケメンな由貴ちゃんにはたい焼きあげないから」

「え？　なに急に？　なんで怒ってるの？」

　由貴ちゃんの隣にストンと腰をおろすと両手に持っているたい焼きを頭からかじった。

　本当にイケメンは得をする。急に私の作品が売れた理由はきっと由貴ちゃんだ。私の作品に惹かれたのではなくて、店番をしている由貴ちゃんに惹かれたから。購入することで由貴ちゃんと話をしようと思ったに違いない。

　たまに忘れそうになるけど私の幼馴染みの由貴ちゃんは誰もが振り向くスーパーイケメンなんだ。