1
今城想という男は人間観察が趣味である。
何の知識も無いくせに、多額の資金もないくせに、学校を運営し、ドット絵の人間を何時間も見続ける。
そして、資金を増やす。
生徒に無理難題を突き付け、鬼のような授業を数秒間受けさせ、実績を上げる。
彼は、ほんの少し指を動かすだけで、それを成し遂げてしまう。
必要なのは、ずっと見続ける根気と、時間だけ。
今城想という男は学校運営ゲームが何よりも好き。そして、自分の運営する学校に通う生徒の、人間観察が趣味である。
例えそれが、今の彼にとっての、現実になっても──
「美味しいですか?」
賞味期限、消費期限なんてものはない。冷蔵庫の中で保管されている「栄養満点おにぎり」を、先生は無言で口の中に運んでいる。
「普通」
一緒に食べようと言った割に、随分そっけない対応だ。新聞から目を離す気配もない。別にいい。
「……不味い」
私が不味いと感じているのだから、「普通」という彼の言葉は半分嘘だ。おにぎりは「普通」、食べられる味。牛乳は「不味い」。飲めるけど、飲みたい味ではない。
私が顔をしかめると、先生は楽しそうに笑いだす。
いつの間にか新聞から顔を上げていた。
「私に自我があることを喜んでくださっているのですね」