時間が止まって欲しい。

 生きている人間なら、一度は考えたことがあるんじゃないだろうか。


 どんなに望んでも、神様に祈っても、星に願っても、時間は流れ行く。


 決して止まらない。


 生きていられる限られた時間を伸ばすことも、止めることも、人間には出来ない。


 人間はそれを理解している。


 理解した上で、望んでしまう。



 口に出すだけなら、別にいいじゃないか。


 その願望が現実になるかもと、彼らは微塵も思っていない。


 きっと――








 きっと、私の目の前でスヤスヤと眠っているこの人も、思っていなかった。





「時間です、起きてください。先生」

「んー……」

「今城先生」


 ベッドの上ではなく、椅子の上。

 掃除の行き届いた保健室ではなく、砂埃で溢れる準備室。


 机の上で腕を枕にして眠っても、疲れは取れないだろう。寝起きの彼の目は、まだまだ眠たそうだった。床でもいいから、身体を倒して眠りたいと全身が訴えている。

 それでも私は、それを許さない。三時間だけ。そして五分だけ、さらに五分だけと彼は言ったのだから。私はそれに従うのみだ。