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 月の柔らかな蒼白い光が照らし明かす、その場所で。

 ひらりと、同じ月の光を身に纏う小さな蝶が二匹、ゆっくりと寄り添いながら舞っていた。

 紺色の夜空には満天の星。

 時折優しく吹き渡る風に、ふわりと紅い花びらが無数に舞い上がり、とても美しい。

 その花びらは、優しい月明かりに見守られるように咲き乱れる、彼岸花のものだ。

「可哀想に。
皆と同じ場所には、還れなかったのか……」

 美しいその風景に佇み、蝶を見守っていた青年が静かな声で呟いた。

 ひらひらと舞っていた蝶は青年を見つけたのだろうか、ゆっくりと差し出された手に舞い降りる。

 まるで、舞い疲れた(はね)を休めるかのように。

「おいで。
もう一度お前達の魂が現世に還るまで、俺が守ろう」

 次に転生出来るまで、疲れて傷ついた魂の月蝶を守り、癒すのは、その青年の役目だ。

 神様により選ばれた、『月蝶の守り人』の____。



 その後、生け贄として捧げられた双子の少年の行く末は、誰も知らない――。