「確かに、線がブレていていつもの調子じゃないみたいだな」


先生の言葉にあたしは目を見開いた。


一応は生徒のことを見ていたのだと初めて感じた瞬間だった。


「でも大丈夫。次のコンテストにはこれを出すといい」


「え……?」


あたしは瞬きをして平山先生を見つめた。


コンテストの話なんて聞いていなかったのだ。


「高校のコンクールだよ。審査員は俺だ」


「でも、それならちゃんとした絵を描きたいです。コンテストに出す予定じゃなかったし、こんな絵じゃ話にならないし」


あたしの言葉を遮るように、平山先生があたしを抱きしめていたのだ。


一瞬、なにが起こっているのか理解できなかった。


頭の中は真っ白になり、ただただ平山先生の体温を感じていた。


しかし次の瞬間、平山先生の手があたしの胸に触れたので咄嗟に身を話していた。


体が机にぶつかり、広げていた絵の具が床に散乱する。


「なにするんですか!?」