歩きに歩き回って、足は疲れたが。
心は、充実していた。
美兎は火坑と一緒に、夕方あたりに宿屋に戻ってから。備え付けの露天風呂を堪能していた。
ひとりじゃなくて、今日守護として荷物持ちとしてずっと頑張ってくれてた、座敷童子の真穂もだが。
「ふぃ〜、極楽極楽〜!」
少し年寄り臭いが、実際に真穂は長命なので間違っていないかもしれない。怒られるかもなので、口にはしないが。
今の姿は、本来の子供のような姿。風呂はあまり広くないので省エネモードらしい。
「今日はありがとう、真穂ちゃん」
「大したことしてないわよ? 美兎が楽しめたんなら、何よりだわ」
「……うん」
彼氏と旅行だなんて初めてで。
こんなにも幸せでいいかってくらいに、素敵な日を過ごせて。
至れり尽くせり、だった。夕食はこれからだが、きっととても豪華なのだろう。
今日は甘いものを中心に食べ歩いたりしたが、満腹までは食べていないせいか少し空腹気味だった。
火坑もそれを見越して、エスコートしてくれたのだろう。
かけると肌がツルツルになるお湯で、今は真穂と一緒に楽しんだ。今日限りだけど、肌がツルツルになるのは嬉しかった。
「……まあ。あいつはほとんどなんもしないと思うけど」
「? うん?」
「何回か間違えられたみたいに、夫婦気分でいたいんじゃない?」
「ふ!?」
夫婦。
たしかに、何回か勘違いされてしまったが。
嬉しくなかったわけじゃない。だが、少し恥ずかしかった。まだまだ美兎は火坑に比べたら子供同然なのに、あの涼しい笑顔を向けられると心が蕩けてしまいそうになる。
決して、嫌じゃない。
だが、昼間。一つ目小僧の朔斗に告げていたように。まだまだ美兎を人間として扱ってくれている。
それに、ほんの少し。淋しいと思ったのも嘘じゃない。
なんて、あさましい思いを抱いているのかとは思うが。顔に出てたのか、真穂に鼻をつままれた。
「みーうー?」
「ふぁい?」
「ひとりで抱え込まないの! そう言うことは火坑や真穂とかにちゃんと言うの!!」
「だって……呆れない?」
「内容によるわね?」
「…………たい」
「ん?」
「…………もっと。火坑……さんに、近づき……たい」
ぽつり、と口にすれば。真穂は呆れるどころか口笛を吹いた。
「んじゃ、セックスは出来ないんだったら……添い寝とか?」
「そ、添い寝?」
「まだしてないでしょう?」
「……して、ない」
じゃあ、口にしてみろと言われたが。
それから、お風呂から上がっても。
美味しい美味しい京都の豆腐料理を堪能しても。
食後の日本酒のスパークリングを軽く飲んでも。
美兎は緊張でガチガチになって、なかなか言えずにいたのだった。
「……美兎さん。どうかしましたか?」
夜も猫人に戻らず、響也のままでいた火坑はピッチリと綺麗に着た浴衣姿で、優雅に日本酒のグラスを傾けていた。
それがどうしようもないくらい、綺麗で美兎は見惚れてしまいそうになったが。
彼の言葉に、すぐに首を横に振った。
「な、ななな、なんでもないです!」
「ふむ。なんでもと言う割には顔が赤いですよ?」
「……呆れ、ませんか?」
「ふふ。美兎さんからのお願いに、呆れはしませんよ?」
「!」
じゃあ、と二人以外に誰もいないのにひそひそ声で彼の耳元で呟いたら。
彼は、にっこりと笑って美兎の手を掴んできた。
「そのような可愛いらしいお願い、叶えないわけにはいきません」
「い……いん、ですか?」
「もっと先に進むのは、まだまだですからね? 添い寝であればお任せください」
そうして、軽いキスを何度かしてから。
美兎と火坑は、ひとつのベッドで仲良く眠りについたのだった。
心は、充実していた。
美兎は火坑と一緒に、夕方あたりに宿屋に戻ってから。備え付けの露天風呂を堪能していた。
ひとりじゃなくて、今日守護として荷物持ちとしてずっと頑張ってくれてた、座敷童子の真穂もだが。
「ふぃ〜、極楽極楽〜!」
少し年寄り臭いが、実際に真穂は長命なので間違っていないかもしれない。怒られるかもなので、口にはしないが。
今の姿は、本来の子供のような姿。風呂はあまり広くないので省エネモードらしい。
「今日はありがとう、真穂ちゃん」
「大したことしてないわよ? 美兎が楽しめたんなら、何よりだわ」
「……うん」
彼氏と旅行だなんて初めてで。
こんなにも幸せでいいかってくらいに、素敵な日を過ごせて。
至れり尽くせり、だった。夕食はこれからだが、きっととても豪華なのだろう。
今日は甘いものを中心に食べ歩いたりしたが、満腹までは食べていないせいか少し空腹気味だった。
火坑もそれを見越して、エスコートしてくれたのだろう。
かけると肌がツルツルになるお湯で、今は真穂と一緒に楽しんだ。今日限りだけど、肌がツルツルになるのは嬉しかった。
「……まあ。あいつはほとんどなんもしないと思うけど」
「? うん?」
「何回か間違えられたみたいに、夫婦気分でいたいんじゃない?」
「ふ!?」
夫婦。
たしかに、何回か勘違いされてしまったが。
嬉しくなかったわけじゃない。だが、少し恥ずかしかった。まだまだ美兎は火坑に比べたら子供同然なのに、あの涼しい笑顔を向けられると心が蕩けてしまいそうになる。
決して、嫌じゃない。
だが、昼間。一つ目小僧の朔斗に告げていたように。まだまだ美兎を人間として扱ってくれている。
それに、ほんの少し。淋しいと思ったのも嘘じゃない。
なんて、あさましい思いを抱いているのかとは思うが。顔に出てたのか、真穂に鼻をつままれた。
「みーうー?」
「ふぁい?」
「ひとりで抱え込まないの! そう言うことは火坑や真穂とかにちゃんと言うの!!」
「だって……呆れない?」
「内容によるわね?」
「…………たい」
「ん?」
「…………もっと。火坑……さんに、近づき……たい」
ぽつり、と口にすれば。真穂は呆れるどころか口笛を吹いた。
「んじゃ、セックスは出来ないんだったら……添い寝とか?」
「そ、添い寝?」
「まだしてないでしょう?」
「……して、ない」
じゃあ、口にしてみろと言われたが。
それから、お風呂から上がっても。
美味しい美味しい京都の豆腐料理を堪能しても。
食後の日本酒のスパークリングを軽く飲んでも。
美兎は緊張でガチガチになって、なかなか言えずにいたのだった。
「……美兎さん。どうかしましたか?」
夜も猫人に戻らず、響也のままでいた火坑はピッチリと綺麗に着た浴衣姿で、優雅に日本酒のグラスを傾けていた。
それがどうしようもないくらい、綺麗で美兎は見惚れてしまいそうになったが。
彼の言葉に、すぐに首を横に振った。
「な、ななな、なんでもないです!」
「ふむ。なんでもと言う割には顔が赤いですよ?」
「……呆れ、ませんか?」
「ふふ。美兎さんからのお願いに、呆れはしませんよ?」
「!」
じゃあ、と二人以外に誰もいないのにひそひそ声で彼の耳元で呟いたら。
彼は、にっこりと笑って美兎の手を掴んできた。
「そのような可愛いらしいお願い、叶えないわけにはいきません」
「い……いん、ですか?」
「もっと先に進むのは、まだまだですからね? 添い寝であればお任せください」
そうして、軽いキスを何度かしてから。
美兎と火坑は、ひとつのベッドで仲良く眠りについたのだった。