申し訳ないとは思ってる。

きっといつまでも、こうして俺がだらだらしているから、彼女もイラついてんだ。

だから俺からちゃんと、言ってやらないと。

「山崎くんに頼めばいいじゃない。副部長なんだからさ。私は入部したての、新入部員だよ?」

いつか、いつかと思いつつ、ずっと引き延ばしてきたその思いを、俺は今、どうしようかと悩んでいた。

彼女の柔らかな唇が開く。

「だから、そういうこと言われても、困る」

そう言って、奥川は黙りこんでしまった。

俺はそんな彼女の横顔をのぞきこむ。

「悪いけど、もう少し、待ってくれないかな」

今、俺の心臓は最高潮にバクバクしていた。

こういうのは、やっぱり男の俺の方から、言わないといけないよな。

「俺だって、はっきりさせようとは思ってるよ。だけど、今はマシンの制作に集中したいから、だから……」

それが終わったら、ちゃんと彼女に言おう。

「は? なにを?」

奥川は立ち上がり、飲み終わったパックを俺の膝に放り投げた。

「私もマシンの制作に集中したい。なんせ部活入ってからの、初めてのまともな活動だからね」

「だ、だから、俺もそうなんだって。お互いに、今は大会に集中しよう」

「そうね。だから、お互いにちょっと、距離を置きましょう。私もこういうワケの分からないことに、もう関わりたくないし」

彼女はくるりと背を向けると、空っぽの紙パックと俺を残して、軽快に走り去ってゆく。

「ねぇ、それ、捨てといて」

いつもとは違う奥川の態度に、俺は正直とまどっていた。

いつもの彼女なら、なんだかんだと文句を言いながらも、最終的には何でもやってくれていた。

それが今日は、拒否する彼女の決意が固い。

何に怒っているのだろうか。

彼女がやっと電子制御部に入ってくれたのを、すぐにありがとうって、言わなかったから? 

何かプレゼントとか、お礼でもしておけばよかった? 

大体、入部していたこともちゃんと知らせずに、俺に察しろっていう方が、難しくね?

ため息をつく。

奥川との関係が、変わろうとしている。

それを変えるのは、俺自身の決意だと、そう思っていた。

一年とのもめ事の方を、先に聞かなかったのが、悪かったのかな? 

ふいに俺は、「それか」と正解に行き着いて、頭を掻いた。

そうだよ。

奥川が一人で理科室に来たときは、そうやって言ってたじゃないか。

彼女はきっと、そっちの話しのつもりだったんだ。

だからきっと、彼女は怒ったんだな。

女の子って、難しい。