「はい、じゃあ出場種目はこれで決定で。」

森田くんの言葉に合わせて、
黒板に書かれた名前に赤い丸をつける。

体育祭が3週間後に迫った今日。
ホームルームの時間を使って行われたのは出場種目決め。

「さっちゃんやっぱ引っ張りだこだったね。」

1人2種目までの出場と決まっている体育祭。
総合優勝を目指すには出場種目の振り分けも重要ポイントで。

我がクラスは陸上部エースのさっちゃん、野球部の森田くん、サッカー部塚田くんら運動部メンバーをどう振り分けるかがポイントとなっていた。

「よっしゃお前ら優勝目指そうぜ!優勝したら・・・」
「「お?お?」」
「全員のファミレスのドリンクバー代出してやる!!」

はい、花ちゃんはやっぱりケチでした。
その言葉にクラスメイトからブーイングが起きて、
今度は「やっきにく!!」という声が飛び出す。

花ちゃんのおごりで焼き肉かあ。
上手い飯が食えそうだぜ。

「皆の期待にそえるかはわからないけどねえ。」
「またまた~」

こうやってさっちゃんは謙遜してみせるけど、
さっちゃんがスポーツで活躍していない所は今まで見た事がなくて。

「少しくらい私に分けてくれたっていいのに。」
「なに身長のこと?あ、ごめん運動神経か。」
「ダブルで抉るのやめてもらっていい???」

ごめんごめん、と1ミリも思ってなさそうな口調で謝ってじゃあまた明日、と部活へ急ぐ。

私も手を振って帰ろうと思ったが、
いけない、今日は体育祭の実行委員会があるんだった。

はあ、とため息が出そうになるのをこらえる。

実行委員に決まったあの地獄の日から今日まで。既にやる事はたくさんある。
これからは当日の為の準備も増えるのだ、また忙しくなるなあ。嫌だなあ。
ああなんかあの日の花ちゃんの顔思い出してムカついてきた。今度イスに両面テープでも貼っとこう。

「悪い秋山。俺今日委員会行けそうになくて…。」
「いいよ全然。部活頑張ってね。」
「ほんとごめんな。さんきゅー!」

森田くんは申し訳なさそうに両手を合わせて、
焦った様子で教室を出ていく。

同じ実行委員である森田くんが所属する野球部は、先生が厳しいことで有名で。
そのためなかなか委員会にも出れないことが多い。

部活もあり、そして体育祭で活躍を期待される選手の1人でもある。
…忙しいんだろうなあ、大変だ。

はい。対照的にわたくし体育祭での期待値ゼロの秋山結衣です。
こういう所の為の人員です。

ガラガラガラ、と委員会の会場である教室のドアを開ければ、
そこには既に数人の委員がいて。

1番端っこの窓際の席に座って、
涼しい風を受けながら全員が揃うのを待った。