彼女は相川泉(いずみ)といった。 「でさ、そっちは?」 「うちか? 一徹(かずゆき)。平賀一徹」 信号待ちをしている間は、そんな会話である。 「字で書くと一徹ってなるから、みんなイッテツって呼んどる」 国道を左に折れ、並木通りを入ると、駅のロータリーが見えてきた。 「もう着いちゃうんだ」 「バイクやからね」 泉は名残惜しそうにしていたが、 「ね、…もうちょっと乗ってたいって言ったら…怒るよね?」 泉は訊いた。