帆高:(違う。やっぱり違う。あの時僕は…。僕達は確かに世界を変えたんだ。)
帆高:(僕は選んだんだ。あの人を、この世界を、ここで生きていくことを。)
帆高:陽菜さん!
陽菜:帆高!
(陽菜が帆高に飛びかかり、それを帆高は優しく受け止め、抱きかかえる)
陽菜:帆高っ、どうしたの?大丈夫?
帆高:…。陽菜さん、僕たちは、きっと、大丈夫だ。

陽菜:??。大丈夫なんだ。よかった。んーさては、三年ぶりに私に会えて嬉しかったんだね?
帆高:う…うん。陽菜さんがこうして暮らしている世界を選んだことは間違ってなかったんだと思えて…。
陽菜:んー君ぃ、大げさ過ぎる。そしてメソメソしない!
帆高:ご、ごめん。でも俺、ずっと考えてたんだ。雨が止まなくなった東京で陽菜さんがどんな風に暮らしているんだろうって。
陽菜:あ、そっか。あの当時私スマホ持ってなくて、帆高には連絡先教えてなかったもんね。
陽菜:心配かけちゃってごめんね。でも今は大丈夫。(ごそごそ)、これ私のスマホ。後で番号教えてあげるね。
帆高:…そうなんだ。ありがとう。
陽菜:あ、そうそう。何でこの坂の上に立って祈りのポーズしてたかわかる?
帆高:…え?
陽菜:あれね。さっき須賀さんから電話で連絡が有って、ああすると帆高が喜ぶよって。
帆高:…。
陽菜:さすが、須賀さん。同じ元家出少年だけあって、帆高が喜ぶポイントきっちり抑えてる。
帆高:…。
陽菜:んーなんか、顔しかめちゃって…。私、帆高を迎えに来てあげたんだよ。
帆高:…あ、ありがとう。陽菜さん。
陽菜:ちゃんとお礼を言える子になったね。えらい。
帆高:…。俺の方が陽菜さんより年上だぞ…。
陽菜:帆高は凪の『後輩』なんだから、私の方がお姉さん。それは譲れない。
帆高:…。わかったよ。
陽菜:よろしい。(ニッコリ)
帆高:…。
陽菜:そうそう。須賀さんから聞いていると思うけど、私の家、夏美さんが来てくれて保護者やってくれてます。
陽菜:おかげでこうして高校も行けてるし、凪とも離れなくて済んだし。
陽菜:ともかく、そんなわが家に、帆高を今からご招待!

(二人は陽菜の家に徒歩で向かう)
陽菜:なんか雨強くなって来たね。
帆高:陽菜さん、傘持ってないの?
陽菜:それって私が貧乏だから持っていないってこと?
帆高:えぇっ?そんな意味で言ってるわけないじゃん。
陽菜:ちゃんと折りたたみ傘有るよ。ほら。
帆高:言ってる間に濡れちゃうから、俺の傘に入りなよ。
(陽菜は帆高の傘の下に入る)
陽菜:うーん。もうすぐ家着いちゃうし、濡れた傘乾かすのも面倒よね。
陽菜:このまま家まで帆高の傘に入ってていい?帆高?
帆高:いいよ。
帆高:(経緯はともかく、陽菜さんとの相合傘は正直嬉しいな)

陽菜:帆高ぁ。今日須賀さんの事務所に行ったって聞いてるけど、夏美さんには会った?
帆高:取材で出張ってたみたいで、今日は会えなかった。
陽菜:じゃあ、今日はうちで夕食食べて行ってよ。そこで感動の再会だね♪
帆高:ありがとう。お言葉に甘えて…。