「和奏嬢ちゃん……またこんなところで寝ちょるの?」
呑気な声に呼びかけられて、はっと縁側で身を起こした瞬間、お腹の上に乗せていたらしいスマホが、ごつっと庭に落ちた。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げた私を笑いながら、ハナちゃんがそれを拾い、軽く手で汚れを払って渡してくれる。
「はい、どうぞ」
「ありがとう……」
三角に切られた西瓜を並べたお盆を私の横に置き、ハナちゃんもその向こうに腰を下ろす。
「太陽の下で小さい画面を眺めちょったら、目が悪くなるよ」
「うん」
スマホは時計としてしか使っていないと、わざわざ説明することはしなかった。
ハナちゃんが持ってきてくれた西瓜を食べるため、手を洗ってこようと立ち上がると、問いかけられる。
「お父さんには和奏嬢ちゃんが持っていくかい?」
「あー……」
きまり悪い思いで、私はハナちゃんの隣に座り直した。
「実は昨日、怒らせちゃって……」
「珍しい……」
私はハナちゃんに、簡単に昨夜の父とのやり取りを話した。
「それで……『成宮』って知ってるか? て訊ねたら、急にお父さんが怖い顔して、『誰に聞いた?』って……」
それまで私の説明を黙って聞いていたハナちゃんが、大きく頷く。
「あーなるほど」
いかにも事情を知っているふうのハナちゃんに、私は向き直った。
「どうしてなの?」
ハナちゃんはふぉふぉふぉと笑って、首を横に振った。
「それは私じゃなく、お父さん本人に訊いたほうがいいねえ」
「でも……」
父と再び暮らし始めたのは最近だし、それ以前も今も、あまり会話をする関係性ではない。
父にとってあまり好ましいと思われない話題を振るのは、不安なのだと、昨日の突然硬化した態度を思い返しながら、私はハナちゃんに説明しようとした。
しかしその前に、笑顔で後押しされてしまう。
「大丈夫。お父さんは和奏嬢ちゃんを、大切に思っちょるけえ」
「でも……」
「持っていって一緒に食べんしゃい」
強引に西瓜の載ったお盆を渡され、父のところへ行くしかなくなってしまった。
「うん……」
不安な思いで靴を履き、お盆を手に庭を歩き出した私を、ハナちゃんは笑顔で見送った。
呑気な声に呼びかけられて、はっと縁側で身を起こした瞬間、お腹の上に乗せていたらしいスマホが、ごつっと庭に落ちた。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げた私を笑いながら、ハナちゃんがそれを拾い、軽く手で汚れを払って渡してくれる。
「はい、どうぞ」
「ありがとう……」
三角に切られた西瓜を並べたお盆を私の横に置き、ハナちゃんもその向こうに腰を下ろす。
「太陽の下で小さい画面を眺めちょったら、目が悪くなるよ」
「うん」
スマホは時計としてしか使っていないと、わざわざ説明することはしなかった。
ハナちゃんが持ってきてくれた西瓜を食べるため、手を洗ってこようと立ち上がると、問いかけられる。
「お父さんには和奏嬢ちゃんが持っていくかい?」
「あー……」
きまり悪い思いで、私はハナちゃんの隣に座り直した。
「実は昨日、怒らせちゃって……」
「珍しい……」
私はハナちゃんに、簡単に昨夜の父とのやり取りを話した。
「それで……『成宮』って知ってるか? て訊ねたら、急にお父さんが怖い顔して、『誰に聞いた?』って……」
それまで私の説明を黙って聞いていたハナちゃんが、大きく頷く。
「あーなるほど」
いかにも事情を知っているふうのハナちゃんに、私は向き直った。
「どうしてなの?」
ハナちゃんはふぉふぉふぉと笑って、首を横に振った。
「それは私じゃなく、お父さん本人に訊いたほうがいいねえ」
「でも……」
父と再び暮らし始めたのは最近だし、それ以前も今も、あまり会話をする関係性ではない。
父にとってあまり好ましいと思われない話題を振るのは、不安なのだと、昨日の突然硬化した態度を思い返しながら、私はハナちゃんに説明しようとした。
しかしその前に、笑顔で後押しされてしまう。
「大丈夫。お父さんは和奏嬢ちゃんを、大切に思っちょるけえ」
「でも……」
「持っていって一緒に食べんしゃい」
強引に西瓜の載ったお盆を渡され、父のところへ行くしかなくなってしまった。
「うん……」
不安な思いで靴を履き、お盆を手に庭を歩き出した私を、ハナちゃんは笑顔で見送った。