「狼さん。一体どこに向かっているの?」

そう尋ねた私に、「狼さんって呼ぶな。俺の名前は、キデス。街にある丘だ。そこは、星が良く見える。」

「わかった。キデスね。私は、森樹《シンジュ》」


「もうすぐ着くぞ。」

そうキデスが言うと、みるみるスピードで丘の上まで駆け上がって行く。

木と木の間を身軽な動きで、上へと上がっていくのを
キデスの腕にすっぽりと収まりながら彼を見上げる。

キデスが守るように抱えてくれているので、枝も当たらず痛くない。

(夢とはいえ、何か恥ずかしいかも)
そんな事を考えながら、顔を赤らめた途端、ゆっくりと地面に下ろされた。