アパートに帰ると、まずはメイクを落として楽な格好になるのが毎日のルーティン。今日もそうしたところで、油揚げの調理にかかった。
 パックに入っていた二枚を、魚焼きグリルに並べる。

「この網って油を塗るんだっけ? ……まあいいか」

 コンロを点火して、準備完了。あとは小皿に醤油と七味を用意しておくだけだ。世の中にこんなに簡単なおつまみがあるなんて。発明してくれた人ありがとう。

「じゃあ、ビールでも開けて待ってますか」

 リビングのクッションに座り、プシュッと缶ビールのプルタブを開け、テレビの電源を入れる。

 へえ、この時間帯、けっこうおもしろい番組やってるんだな。おいしいおつまみさえあれば、宅飲みも悪くないかも……?

 そんなことを考えてテレビとビールに夢中になっていたら、コンロに置き去りの油揚げのことなんてすっかり忘れていた。

「……ん? なんか、焦げくさい?」

 異臭が鼻をかすめ、リビングと続きになっているカウンターキッチンに目をやる。
 すると、なんで今まで気づかなかったんだってくらい、白い煙が充満していた。