朝の通学ラッシュで混み合うバスに乗り込んで、私は息をつく。


今日は、最高気温が、10度を下回るって、ニュースで言っていたっけ。



ほとんどの学校が、今日から新学期。

でも、冬休み明けだから、バスに乗る人たちも、あまり以前と変わらない。


これが4月になって、進級すれば、またすこし変化があるんだろうけれど。



すっかり慣れてしまったこの生活の中にも、私は、ちょっとだけ、楽しみにしていることがある。



それは、バスが、駅前のターミナルに停まってから。


バスに乗っていた人が、ほとんど降りて行って。

今度は、入れ替わるように、ここからちょっと距離がある、共学の進学校へ通う学生たちが乗り込んでくる。


そして、定刻が近づいて、バスのエンジン音が、ほんの気持ち、大きくなってすぐ。



「あ、来た〜」



近くにいた女の子が、そうつぶやいたのが聞こえる。



「おはよ〜、夏樹(なつき)



私は、その声に、ふっと顔を上げた。



「おはよ」


衣笠(きぬがさ)、寝坊しなかったんだ」


「うん、余裕だった」


「ねえ、ぜったい嘘だよ。ほら、寝ぐせついてるも〜ん」