僕らのノイズ ~捨ててやる、こんなもの~

 (そういえば、帰りの電車で見つけたあのサイト、よくわからなくて怪しいからとすぐ閉じてしまったけれど……)

 私は、スマホの履歴を辿り、さっきのサイトに再びアクセスした。
 そこには、真っ白な背景色に、黒い文字で『あなたの願いを、叶えます。』と表示されていた。



********************




『あなたの願いを、叶えます。』




生きていれば、叶えたい夢や理想の一つや二つ、ありますよね。



管理人・タツといいます。
こう言っては怪しまれてしまいそうですが、
私は「すべての願いを叶える力」を持っています。



あなたの願いを、フォームに書いて送信してみてください。
どんな願いも、すべて叶えます。



あなたの個人情報は全て、厳密に守られます。



********************



 そこまで読むと、信じられなさのあまり、疑問符が浮かぶ頭のまま、一度スマホの画面から顔を離した。
 窓の向こうは、夕日が街をオレンジ色に照らし始めていた。

 もう、そんなに時間が経っていたんだ……。

 続きを読むため、私は、妙に間が空いている画面をスクロールした。
 すると、文章の雰囲気が少しだけ変わったように見えた。



********************



――ただし、”三つ”、お伝えしておかないといけないことがあります。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


一、願いが叶うタイミングは分かりません。

二、願い事は、おひとり様につき、生涯で3つまで。
 ※一度にすべてでもよし、一つずつでもよし、自由です。

三、『今、生きているその場所で、変わる覚悟はありますか?』
 ※最後の願いは、十分考えたうえで送信してください。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


上記全てご了承のうえ、
ぜひ、あなたの願いをお聞かせください。


一緒に、すべて叶えて、幸せになりましょう。





まぁ、必ずしも思い通りに、正確に叶うかは分かりませんが。




↓ 送信フォームはこちら ↓
~~~~~~~~~~~~~~~~~
名前:




********************




 やけに注意書きが多い。それほど、何かあるんだろうか。

 説明に流されるまま、画面を最後までスクロールすると、願い事を書くためのフォームが表示された。
 そのフォームは、真っ白な光を放ちながら、「今すぐ書け」と言わんばかりに、ずっとカーソルを点滅させている。
 
 (でも、願いが全部、どんな内容でも叶う……)

 それだけが頭の中に焼き付いて、支配している。
 願いなんて、叶えたい夢や理想なんて、数えたらきりがない。

 ……そうだ、今、叶えたい夢や理想、願いをルーズリーフにまとめて、そこから選ぼう。
 そうすれば、選べるし、三つなんて制限を無駄にせずに済むはず。

 思い立ってすぐ、椅子に座り、棚からルーズリーフを一枚取り出して、シャーペンをカチカチと鳴らした。