メールを読み終えたとき、喉の奥で何かが詰まったような気がした。
なんだろう、この違和感。全部見られているんじゃないか、と思うくらい、奇妙。
正常に処理が完了、結果の反映、理想通り、結果のみ操作しておいた、ってどういうことだろう。それに、私の学校が金賞を獲得したことも知られてる。学校名は一切伝えていないのに、どうして。
状況を理解しようとして、スマホをポケットにしまって、両腕を机の上に置いて俯いた。薄茶色の板に、平行に並んだ木目調、小さく空いた穴。机の模様はどれも、私をじっと見つめてくるようで、背中がゾクッと震えた。
頭の中が混乱している最中、朋美が目の前の空席に座って、私の前髪を掴み、私の顔を無理やり上げた。
朋美がまっすぐ私を見つめて、口角を上げる。目は光を失っていて、感情のないロボットに見える。数秒見つめ合った後、朋美は手を離して、私はその勢いで机に顔をぶつけそうになった。
「合唱部、辞めるよね? はい、これ退部届」
朋美がブレザーのポケットから、一枚のA4用紙を取り出して、見せつけてくる。
「早く名前書いて」
ほら、ペン。そう言われて、無理やり持たされた黒いボールペンは、私の意思ではなく、朋美に操られる形で「佐々木夕夏」と書いていた。
「なんでこんなことするの」
朋美の行動の理由が知りたくて、なんとなく想像はできるけど、それは違うと言ってほしくて訊ねた。
「歌わないんでしょ? だったら要らない。そんな人間、合唱部に居られても邪魔なだけだから」
やめて、返して。朋美が私の机からひらりと退部届を奪うなり、私はそう叫んだ。
もう、どうでもいい、どうにでもなれ、そう思っていたはずの自分が、心の中で「嫌だ」と叫んだ。
「やめなよ、桜木さん」
どこかで聞き覚えのある声がした。声がした場所を辿ると、さっき、廊下で話しかけてくれた同級生の女の子が立っていた。
「あんたに関係ないでしょ、これは合唱部の問題なの。部外者は引っ込んでて」
「でも、さっき何してた? 佐々木さんの前髪、その右手で掴んでたよね? ねぇ?」
その子に問い詰められている朋美を前に、すっと体が軽くなった。
……こんな風に止めてもらったの、初めてだ。
今までならありえない、諦めていたことだったのに。もしかして
(二つめの願い、叶い始めてる……?)
言い合いを止めない二人を横目に、私は教室を飛び出した。
さっきのメールに、タツさんに、「叶った」って嬉々と言いたくなって、誰もいないであろう屋上への階段を駆け上り、ドアを勢いよくバンッと開けた。
なんだろう、この違和感。全部見られているんじゃないか、と思うくらい、奇妙。
正常に処理が完了、結果の反映、理想通り、結果のみ操作しておいた、ってどういうことだろう。それに、私の学校が金賞を獲得したことも知られてる。学校名は一切伝えていないのに、どうして。
状況を理解しようとして、スマホをポケットにしまって、両腕を机の上に置いて俯いた。薄茶色の板に、平行に並んだ木目調、小さく空いた穴。机の模様はどれも、私をじっと見つめてくるようで、背中がゾクッと震えた。
頭の中が混乱している最中、朋美が目の前の空席に座って、私の前髪を掴み、私の顔を無理やり上げた。
朋美がまっすぐ私を見つめて、口角を上げる。目は光を失っていて、感情のないロボットに見える。数秒見つめ合った後、朋美は手を離して、私はその勢いで机に顔をぶつけそうになった。
「合唱部、辞めるよね? はい、これ退部届」
朋美がブレザーのポケットから、一枚のA4用紙を取り出して、見せつけてくる。
「早く名前書いて」
ほら、ペン。そう言われて、無理やり持たされた黒いボールペンは、私の意思ではなく、朋美に操られる形で「佐々木夕夏」と書いていた。
「なんでこんなことするの」
朋美の行動の理由が知りたくて、なんとなく想像はできるけど、それは違うと言ってほしくて訊ねた。
「歌わないんでしょ? だったら要らない。そんな人間、合唱部に居られても邪魔なだけだから」
やめて、返して。朋美が私の机からひらりと退部届を奪うなり、私はそう叫んだ。
もう、どうでもいい、どうにでもなれ、そう思っていたはずの自分が、心の中で「嫌だ」と叫んだ。
「やめなよ、桜木さん」
どこかで聞き覚えのある声がした。声がした場所を辿ると、さっき、廊下で話しかけてくれた同級生の女の子が立っていた。
「あんたに関係ないでしょ、これは合唱部の問題なの。部外者は引っ込んでて」
「でも、さっき何してた? 佐々木さんの前髪、その右手で掴んでたよね? ねぇ?」
その子に問い詰められている朋美を前に、すっと体が軽くなった。
……こんな風に止めてもらったの、初めてだ。
今までならありえない、諦めていたことだったのに。もしかして
(二つめの願い、叶い始めてる……?)
言い合いを止めない二人を横目に、私は教室を飛び出した。
さっきのメールに、タツさんに、「叶った」って嬉々と言いたくなって、誰もいないであろう屋上への階段を駆け上り、ドアを勢いよくバンッと開けた。

