――中学三年。
三度を記録した冬の日。
夕日が沈んでいく中で暗さが目立つ公園のベンチに腰かけ、バッグから入試前最後の期末考査四十点の答案用紙を取り出した。
私はため息をつきながらそれを両手で丸め、目の前のゴミ箱に投げ入れる。
部活を引退してからというもの、どうにもこうにも、受験勉強に集中できない。
中学三年間、合唱コンクールの全国大会で歌うために、勉強そっちのけで歌ってばかりいたから。
ひたすら、歌うことだけを考えて生きていた。
だから、部活を引退してから初めて模試を受け、学習全体の基礎が不安定であることや、公立高校の受験には間に合わないことなどが判明し、急遽、私立高校を受験することになった。
合唱の世界に飛び込んだ人間なら、誰もが一度は憧れるあのホール。
秋、関東大会突破後、全国大会で歌うことを許された。
何度も泣いて、何度も苦しくなって、仲間とぶつかって、やっとの思いで、その場所で歌えた。
自由曲の終わりかけで、客席にきらきらとした雨が降りはじめているように見えた。
他のどんなステージからも見たことがない、光の輝きに溢れた雨。その雨に圧倒され、手足がじわっと滲んで、震えたのをよく覚えている。
歌い終わると同時に、私の目から温かい雫が頬を伝った。
ただただ、静かに泣いていた。
* * *
あれから、どれぐらいの月日が経ったんだろう――――。
いつから、人間は、ここまでダメになった――――?
嘘でまみれた世界に、大人たちはいったい、何を期待しているのか。
自分の意思が消え、操られた時間。
そこに私は生かされているだけ。
"心"があるから、苦しくなる。
それなら――そんな、"ノイズ "としか言いようがないものなんて、この手で消してしまえばいい。
最初から、存在しなければ良かったんだ、こんなもの。
* * *


