今日も動画を投稿した。
 厳しい親元で監視されながら勉強に追われる中学生が、宿題を燃やして一日思いっきり遊ぶというアニメーション。
 動画サイトの年齢層は広いが、やはり見てくれるのはそれ相応の年齢の人が多いらしい。
 まだ子供らしい純粋なコメントで溢れていた。だからこそ、時に皮肉なものもあったけれど。
 そしてまた一つ、目に付いた。
『もうすぐ死ぬ』
 まただ。この時の私は至って冷静だった。
 一体誰が死ぬというのだ。動画と全く関係がない。
 そりゃあ、主人公が後々親に叱られて心が死ぬということを言っているのかもしれないけれど。
 それにしたって、それを予言するようなコメントは他になかった。
「誰が死ぬの? 教えてください。貴方は誰ですか?」
 画面に向かって私は話しかけていた。もちろん、それに対して返ってくることはない。
 その時、肩に何かが触れるのがわかった。
『ねぇ……』
 冷凍庫の中にでも瞬間移動したように、背筋が凍る。
 ラジオから流れる砂嵐に紛れたような声を掛けられ、意を決して振り向いた。

「ねぇ、お姉ちゃん!」
 目が覚めると、日彩が私の布団を引き剥がしていた。眩しい光に、思わず目を細める。
「今日実力テストの日じゃないの!? それ終わったらうちの学校にも来るんでしょ! 遅刻するよ!」
 見ると、時計の針は七時半を指していた。私は慌ててベッドから飛び起きる。
 普段なら、こんなにも慌ただしい朝を迎えた時、夢の内容なんて一瞬で溶けていくが、『もうすぐ死ぬ』という言葉だけは、脳裏に焼き付いてどうしても離れてくれなかった。
 夢の出来事なんて、何の意味もない。それでも、これほどまでに何度も似たような夢を見ると、虫の知らせなのではないかと恐怖に襲われた。