真幸はいしる汁とごはんをカウンターに置くと、続けて、大皿料理として常に用意している筑前煮、かぼちゃの煮付、きんぴら、切り干し大根、肉じゃが、小松菜とツナと玉子炒め、オクラの豚肉巻き、鶏の唐揚げを少しずつ取り分けて出した。
ひとつひとつは凝ったものではなくても、全部が並ぶと途端に贅沢な食卓となる。
和食中心の店だから、どうしても色合いが茶色っぽくなってしまうのは否めないが。
「こりゃ豪勢だな。ありがてぇ」
落語の登場人物の江戸弁めいた口調で喜んで、正之丞は箸をつけていく。
緑茶割を飲みながら、ほんとうに美味しそうに平らげる。細い身体のどこに入ってしまうのかと思うくらいの食欲だった。見ているだけで楽しくて、嬉しくなる。
よく食べる人間は好きだ。
ひとは食べたもので作られるのだから、気取って小食のふりをするよりも、食べるべきものをちゃんと食べる姿のほうが素敵なのは当然なのだ。
「おかわりする?」
グラスの中身が残り少なくなったのを見て、真幸は訊いた。
正之丞は「う~~ん」と低く唸って、グラスの底の薄い緑色と、皿に残った惣菜を見比べた。
おかわりを頼むには、つまみが足りないということか。
「えっとさ」
「うん?」
真幸は、珍しく歯切れの悪い正之丞を見つめた。