「じゃあ、買ってくるね」

彼女はすぐにベージュのコートを棚にもどしてレジへ向かおうとする。

「いや、僕が買うよ」
「え? ありがとう! 」
「いいよ、別に」

僕はレジに並んで、支払いをした。
店員さんが、『プレゼントですか? 』とホクホクした笑みで訊いてきたから、僕は優しい彼氏を気取った。


支払いを終えると、店の前で待っている彼女のもとへ向かう。

「お待たせ」
「ううん。ごめんね、高かったよね?」
「大丈夫だよ、これくらい」

強がって言うけれど、僕の懐事情からすると確かにちょっと痛い額だ。でも、彼女が喜んでくれたからいいだろう。
そして、またバイトのシフトを増やさなきゃな、とも思った。
そして今日、気づいたことがある。それは、彼女が敬語を使わなくなったこと。親しくなれた証拠だと考え、僕はとても嬉しくなった。