・
・【野草摘み】
・
今日の放課後、早速紗英と野草摘みを始めた。
「何を摘みに行くんだっ? でも俺はどこでも大丈夫だぜ! 見よ! この抜群の運動神経をっ!」
そう言うと、側転3回、バック転2回、最後にバック宙を決めてポーズを決めた紗英。
「いやいいよ、毎日その一連の流れ見させられているよ、僕」
「でも見てほしいだろ! この圧倒的な機動力!」
「特注の戦車みたいな言い方しないでよ、機動力なんて元来小五が使う単語じゃないよ」
本当に紗英は校庭に一回でも出れば必ずこの一連の流れをする。
どんだけやりたいんだ、その動き。
まあいいや。
「今日はスベリヒユを摘むから実際紗英の力は借りなくてもいいんだ」
「おー、そうか、じゃあ帰るかー、じゃあなー……って! おぉぉおおおおおい! 帰らせるなよ!」
「いやノリツッコミみたいなテンションで言ってるけども、帰させはしていなかったよ、僕」
「いやもう”早々におかえりなさいませ”って言った」
「全然言ってないよ、そんな丁寧な邪魔扱いしてないよ」
「いやもう逆おいでやすみたいなこと言ったから」
「言ってないし、逆おいでやすって何っ? 急に方言出されても分かりづらいよ!」
いやもう紗英と会話していてもしょうがない。
さっさとスベリヒユを採取しよう。
スベリヒユは土のあるところなら、どこでも生えるような多年草の雑草だ。
いやまあ似潟県は勿論、日本は寒くなるから一年草になってしまうけども。
とにかくスベリヒユは地面に生える雑草なので、しゃがんで採取する。
「スベリヒユは、なんせ量があるから最高だよな!」
紗英は僕の倍のペースでスベリヒユを採取していく。
運動神経が良い人って、本当に動作速度が早いなぁ。
「ちょっとしたベビーリーフよりも量あるから、一回の摘みでいっぱい採れるね」
「……べびーりーふ?」
いや紗英、サバイバル以外の知識が無さ過ぎて逆にダメでしょ……。
「ベビーリーフというのは葉物野菜で、まあこういった感じのモノっ」
「何か言葉に伸ばし棒多すぎて、カスタードを思い出したわ」
「全然味違うし、カスタードは伸ばし棒1つしかないよ」
「じゃあマスタード」
「いやそれにしたって伸ばし棒1つだよっ」
「マスターーーーーーーード!」
そう言いながら腕を前で交差させた紗英。
いや。
「紗英が勝手に長く伸ばしているだけだし、そんな必殺技みたいに叫ばれても困るよ」
「めちゃくちゃ辛いビームが出るんだ、腕が交差したところから」
「いやだから必殺技を想像されても困るよ」
「太陽破壊するくらいのビームが出る」
「どんな勢いで出てるんだっ、もう辛いという特色いらないくらいの勢いで出ちゃってるじゃん」
「いやでも舐めたら辛いから」
「紗英の腕から出てるビーム、舐めないよ」
そう僕が言うと、紗英は僕の顔の前に腕を伸ばし、
「腕、舐めていいぞ」
「いや! 舐めないよ! ビームは勿論、マジの腕も舐めないよ!」
「なんだ、舐めたいって話だと思った」
「全然そんな文脈じゃなかったよ!」
と強めの叫びツッコミを言うと、紗英は
「元気だなぁ」
と言って、天を見た。
いや!
「青春劇みたいなリアクションしないでよ! 全然しょうもなかったよ!」
「こんなことだけして一生過ごしたい」
「無理だよ! 腕舐めツッコミに対して元気だなぁトークで過ごせないよ!」
「でも実際、腕からビーム出たらそんな生活もできるだろ」
「腕からビーム出たら、ちゃんとSPとか護衛の仕事をしなよ!」
僕がそう言うと、紗英はすくっと立ち上がり、その場でバック宙をし、
「まあこの運動神経があれば護衛だろうな!」
と言いながら、めちゃくちゃ良い笑顔をした。
いや。
「そんな行動はどうでもいいから、スベリヒユ採取するよっ」
紗英はやれやれといった表情を浮かべながら、こう言った。
「スベリヒユごときなら、俺が手伝うまでもないんだぜ? じゃあ帰るかっ、じゃあなー……って! おぉぉおいいいいいい!」
急にデカい声を出した紗英にちょっと驚きながらも、僕は
「いやもう完全に自己完結だったよ! というかもう、うん! 帰っていいよ!」
とデカい声返しをすると、紗英は慌てながら、
「帰っていいなんて言葉あるかー! 俺はずっと誠一と一緒に遊んでいたいんだよ!」
と叫んだ。
いやずっと一緒に遊んでいたい、て。
そんなハッキリ言われるとちょっと恥ずかしいな……。
でも紗英は言う人だ。こういう思ったことを素直に言う人だ。
「夕暮れになるまで校庭でスベリヒユ採取するんだからな! 帰っていいとか二度と言うな!」
「いやまあ分かった、分かったよ、完全に乗せられる形だったけども言わないよ、僕なりのノリ帰れだったけども言わないよ」
「それでいい!」
そう言うと、またしゃがんでスベリヒユの採取を始めた紗英。
まあ一人でやるよりも、二人でやったほうがいっぱい採取できるからいいか。
紗英の仕事量はただの二人ではないほど、素早いし。
「それにしてもスベリヒユってキングオブ雑草だよな、どこにでも、いくらでも生えているよな」
「そうだね、いろいろ味付けは変えていかないとダメだけども、食材としては優秀だよね」
「地面の毛だよな」
「いやまあそう言うと何か嫌な感じが漂うけども」
そう言うと、また紗英が僕の顔の前に腕を伸ばし、
「ほら、俺は毛が無いほうだろ?」
と言ってきたので、いやいや
「毛が無いから何なんだって話だよっ」
「舐めやすいだろ」
「いやだからって舐めないよっ、何でそう舐めさせようとしてくるんだっ」
「舐めているところ写真で撮って、子犬の動画みたいにしたいと思っているんだ」
「いや僕子犬みたいに可愛くないから! あと写真を動画にするって何だよ! 最初から動画で撮ればいい! それなら!」
そうツッコむと、紗英は全くもうみたいな感じで、口をムスっとしながら
「いや動画で撮ったら変態みたいじゃん」
と言ってきたので、
「腕を舐めらせる時点でだいぶ変態っぽいよ!」
「いや、それは子犬だから、まだ子犬の範疇だから」
「僕が人間だから子犬ではないよ!」
「ホント誠一は堅苦しい人間なんだから、中学行ったら苦労するぞ、そんなんじゃ」
「いやむしろ人間を子犬扱いする紗英のほうが苦労するでしょ!」
そう言うと、優しく微笑みながら、首を横に振った。
いやこんな会話の時に、そんな優しい微笑みをしないでよ。
紗英は言った。
「中学もメンバーが一緒の小さな村だから全然苦労しない」
「じゃあ僕もそうでしょ! 何で僕だけ、遠くのデカい中学行く設定なんだ!」
「いや、そんなつもりはない。誠一とも俺はずっと一緒、ずっと友達だ」
「いやまあたとえ離れたとしても、友達は友達だけども」
そう僕が少し照れながらそう言うと、紗英も『へへっ』といった感じに笑って、天を見ながらこう言った。
「スベリヒユって、マズそうだなっ」
「いやここは青春劇みたいな台詞を言ってよ! 急に現実が強いよ!」
「いやだってこんないっぱい生えていて、妙に肉厚な葉と茎、何か苦そうだなって、サボテンみたいな感じで」
「全然そんなことないよ! スベリヒユを食べたことないのっ? 紗英はっ!」
そう聞くと、少し渋そうな顔しながら紗英は言った。
「俺、料理が苦手で、全部焦がしちゃうんだよな」
「じゃあスベリヒユ本来の味を感じていない!」
「というかスベリヒユってどんな味なの?」
「少しヌメリがあって、でもシャキシャキで、で、ちょっと酸味がある感じ」
「酸味ということはイタリアンか……」
「そうでもないよ! 和洋中、全てに酸味の要素はあるよ!」
僕がそうツッコむと、うんうんと細かく頷きながら、
「俺のサバイバル、基本、水を採取するくらいだから料理とか全然分かんない」
「いや分かってないのに、頷いていたんだ!」
「もう全然分からない、料理ってどうすればいいんだろうな」
「でも僕、紗英から料理の仕方教えてもらったじゃん! 少ない水でも調理する方法とか!」
「あれはもうサバイバルの本を丸暗記で……」
唇を噛みながら俯いた紗英。
いやそんな悔しいなら、ちゃんと覚えればいいのに、と思いつつも、
「じゃあ僕がノエルちゃんへの料理作る時、横で見ていればいいんじゃないかな」
と言うと、紗英はパァッと顔が明るくなって、
「採用!」
と言った。
急に上から目線だな、と思った。
そんなこんなで、僕と紗英はスベリヒユを採取しまくって、採取したスベリヒユは学校の調理室に置いて、それから帰宅した。
・【野草摘み】
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今日の放課後、早速紗英と野草摘みを始めた。
「何を摘みに行くんだっ? でも俺はどこでも大丈夫だぜ! 見よ! この抜群の運動神経をっ!」
そう言うと、側転3回、バック転2回、最後にバック宙を決めてポーズを決めた紗英。
「いやいいよ、毎日その一連の流れ見させられているよ、僕」
「でも見てほしいだろ! この圧倒的な機動力!」
「特注の戦車みたいな言い方しないでよ、機動力なんて元来小五が使う単語じゃないよ」
本当に紗英は校庭に一回でも出れば必ずこの一連の流れをする。
どんだけやりたいんだ、その動き。
まあいいや。
「今日はスベリヒユを摘むから実際紗英の力は借りなくてもいいんだ」
「おー、そうか、じゃあ帰るかー、じゃあなー……って! おぉぉおおおおおい! 帰らせるなよ!」
「いやノリツッコミみたいなテンションで言ってるけども、帰させはしていなかったよ、僕」
「いやもう”早々におかえりなさいませ”って言った」
「全然言ってないよ、そんな丁寧な邪魔扱いしてないよ」
「いやもう逆おいでやすみたいなこと言ったから」
「言ってないし、逆おいでやすって何っ? 急に方言出されても分かりづらいよ!」
いやもう紗英と会話していてもしょうがない。
さっさとスベリヒユを採取しよう。
スベリヒユは土のあるところなら、どこでも生えるような多年草の雑草だ。
いやまあ似潟県は勿論、日本は寒くなるから一年草になってしまうけども。
とにかくスベリヒユは地面に生える雑草なので、しゃがんで採取する。
「スベリヒユは、なんせ量があるから最高だよな!」
紗英は僕の倍のペースでスベリヒユを採取していく。
運動神経が良い人って、本当に動作速度が早いなぁ。
「ちょっとしたベビーリーフよりも量あるから、一回の摘みでいっぱい採れるね」
「……べびーりーふ?」
いや紗英、サバイバル以外の知識が無さ過ぎて逆にダメでしょ……。
「ベビーリーフというのは葉物野菜で、まあこういった感じのモノっ」
「何か言葉に伸ばし棒多すぎて、カスタードを思い出したわ」
「全然味違うし、カスタードは伸ばし棒1つしかないよ」
「じゃあマスタード」
「いやそれにしたって伸ばし棒1つだよっ」
「マスターーーーーーーード!」
そう言いながら腕を前で交差させた紗英。
いや。
「紗英が勝手に長く伸ばしているだけだし、そんな必殺技みたいに叫ばれても困るよ」
「めちゃくちゃ辛いビームが出るんだ、腕が交差したところから」
「いやだから必殺技を想像されても困るよ」
「太陽破壊するくらいのビームが出る」
「どんな勢いで出てるんだっ、もう辛いという特色いらないくらいの勢いで出ちゃってるじゃん」
「いやでも舐めたら辛いから」
「紗英の腕から出てるビーム、舐めないよ」
そう僕が言うと、紗英は僕の顔の前に腕を伸ばし、
「腕、舐めていいぞ」
「いや! 舐めないよ! ビームは勿論、マジの腕も舐めないよ!」
「なんだ、舐めたいって話だと思った」
「全然そんな文脈じゃなかったよ!」
と強めの叫びツッコミを言うと、紗英は
「元気だなぁ」
と言って、天を見た。
いや!
「青春劇みたいなリアクションしないでよ! 全然しょうもなかったよ!」
「こんなことだけして一生過ごしたい」
「無理だよ! 腕舐めツッコミに対して元気だなぁトークで過ごせないよ!」
「でも実際、腕からビーム出たらそんな生活もできるだろ」
「腕からビーム出たら、ちゃんとSPとか護衛の仕事をしなよ!」
僕がそう言うと、紗英はすくっと立ち上がり、その場でバック宙をし、
「まあこの運動神経があれば護衛だろうな!」
と言いながら、めちゃくちゃ良い笑顔をした。
いや。
「そんな行動はどうでもいいから、スベリヒユ採取するよっ」
紗英はやれやれといった表情を浮かべながら、こう言った。
「スベリヒユごときなら、俺が手伝うまでもないんだぜ? じゃあ帰るかっ、じゃあなー……って! おぉぉおいいいいいい!」
急にデカい声を出した紗英にちょっと驚きながらも、僕は
「いやもう完全に自己完結だったよ! というかもう、うん! 帰っていいよ!」
とデカい声返しをすると、紗英は慌てながら、
「帰っていいなんて言葉あるかー! 俺はずっと誠一と一緒に遊んでいたいんだよ!」
と叫んだ。
いやずっと一緒に遊んでいたい、て。
そんなハッキリ言われるとちょっと恥ずかしいな……。
でも紗英は言う人だ。こういう思ったことを素直に言う人だ。
「夕暮れになるまで校庭でスベリヒユ採取するんだからな! 帰っていいとか二度と言うな!」
「いやまあ分かった、分かったよ、完全に乗せられる形だったけども言わないよ、僕なりのノリ帰れだったけども言わないよ」
「それでいい!」
そう言うと、またしゃがんでスベリヒユの採取を始めた紗英。
まあ一人でやるよりも、二人でやったほうがいっぱい採取できるからいいか。
紗英の仕事量はただの二人ではないほど、素早いし。
「それにしてもスベリヒユってキングオブ雑草だよな、どこにでも、いくらでも生えているよな」
「そうだね、いろいろ味付けは変えていかないとダメだけども、食材としては優秀だよね」
「地面の毛だよな」
「いやまあそう言うと何か嫌な感じが漂うけども」
そう言うと、また紗英が僕の顔の前に腕を伸ばし、
「ほら、俺は毛が無いほうだろ?」
と言ってきたので、いやいや
「毛が無いから何なんだって話だよっ」
「舐めやすいだろ」
「いやだからって舐めないよっ、何でそう舐めさせようとしてくるんだっ」
「舐めているところ写真で撮って、子犬の動画みたいにしたいと思っているんだ」
「いや僕子犬みたいに可愛くないから! あと写真を動画にするって何だよ! 最初から動画で撮ればいい! それなら!」
そうツッコむと、紗英は全くもうみたいな感じで、口をムスっとしながら
「いや動画で撮ったら変態みたいじゃん」
と言ってきたので、
「腕を舐めらせる時点でだいぶ変態っぽいよ!」
「いや、それは子犬だから、まだ子犬の範疇だから」
「僕が人間だから子犬ではないよ!」
「ホント誠一は堅苦しい人間なんだから、中学行ったら苦労するぞ、そんなんじゃ」
「いやむしろ人間を子犬扱いする紗英のほうが苦労するでしょ!」
そう言うと、優しく微笑みながら、首を横に振った。
いやこんな会話の時に、そんな優しい微笑みをしないでよ。
紗英は言った。
「中学もメンバーが一緒の小さな村だから全然苦労しない」
「じゃあ僕もそうでしょ! 何で僕だけ、遠くのデカい中学行く設定なんだ!」
「いや、そんなつもりはない。誠一とも俺はずっと一緒、ずっと友達だ」
「いやまあたとえ離れたとしても、友達は友達だけども」
そう僕が少し照れながらそう言うと、紗英も『へへっ』といった感じに笑って、天を見ながらこう言った。
「スベリヒユって、マズそうだなっ」
「いやここは青春劇みたいな台詞を言ってよ! 急に現実が強いよ!」
「いやだってこんないっぱい生えていて、妙に肉厚な葉と茎、何か苦そうだなって、サボテンみたいな感じで」
「全然そんなことないよ! スベリヒユを食べたことないのっ? 紗英はっ!」
そう聞くと、少し渋そうな顔しながら紗英は言った。
「俺、料理が苦手で、全部焦がしちゃうんだよな」
「じゃあスベリヒユ本来の味を感じていない!」
「というかスベリヒユってどんな味なの?」
「少しヌメリがあって、でもシャキシャキで、で、ちょっと酸味がある感じ」
「酸味ということはイタリアンか……」
「そうでもないよ! 和洋中、全てに酸味の要素はあるよ!」
僕がそうツッコむと、うんうんと細かく頷きながら、
「俺のサバイバル、基本、水を採取するくらいだから料理とか全然分かんない」
「いや分かってないのに、頷いていたんだ!」
「もう全然分からない、料理ってどうすればいいんだろうな」
「でも僕、紗英から料理の仕方教えてもらったじゃん! 少ない水でも調理する方法とか!」
「あれはもうサバイバルの本を丸暗記で……」
唇を噛みながら俯いた紗英。
いやそんな悔しいなら、ちゃんと覚えればいいのに、と思いつつも、
「じゃあ僕がノエルちゃんへの料理作る時、横で見ていればいいんじゃないかな」
と言うと、紗英はパァッと顔が明るくなって、
「採用!」
と言った。
急に上から目線だな、と思った。
そんなこんなで、僕と紗英はスベリヒユを採取しまくって、採取したスベリヒユは学校の調理室に置いて、それから帰宅した。