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・【テーマを決めよう】
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普段は夕方の六時になると、私たちは帰っていいという感じになるんだけども、今日は二人であやかしさん側のカフェに残って、話し合いを始めた。
勿論、ツバツさんの食欲を、そして元気を取り戻すためのメニュー作りだ。
「さっきさ、琢磨、外見てたじゃん。何か考えていたの? それとも考えていたフリ?」
「フリなんてするはずないじゃん。あのタイミングでフリするほど度胸無いわ」
「じゃあ何か考えていたわけだ」
「うん、やっぱり食欲を元に戻したりするのって、ハーブが良いと思うんだよね。だから外にあるハーブ畑を見ていたんだ」
このカフェの周りには、ハーブの鉢植えをたくさん飾っている。
勿論そのハーブをハーブティにしたりすることもある。
ちなみに畑と呼ぶほど大規模なモノではない。
まあただの鉢植えと形容するよりは、たくさんあるんだけどね。
ちょっとは庭に直接生えているハーブもあるし。
「ハーブね、食欲を増進させるハーブって言ったら何かな」
「まあ食欲増進だけじゃなくて、疲労回復でもいいと思うけども。まあ食いしん坊なオミソはそればかりだろうけども」
「いや琢磨が最初に食欲を取り戻すって言い方したんじゃん、それに乗っかっただけだよ」
「そうだったっけ、まあいいか」
まあいいかで済ますな、自分のそれは。
「じゃあまあちょっとそれぞれハーブの辞典を使って、何が合うか考えるか」
ここはお洒落なカフェなので、お洒落そうな本が置いてある。
その中にハーブの辞典が二冊ある。
何で二冊あるんだろうと思っていたが、ついに真価を見せる日が来た。
こうやって同時に見るためね。
いや本来そんな日無いわ。
何で二冊あるんだろう。
まあいいや。
私と琢磨でそれぞれハーブの辞典を読んでいき、そこで私はすごく良いハーブを見つけた。
「このガラナってヤツ良くない? 疲労回復に滋養強壮だってさ!」
「……いや、どこで売ってるんだよ、そんな感じのヤツ」
「いや、えっと、探せばあるんじゃないの?」
「それにコーヒーの5倍くらいのカフェインって、そういうの歳とったあやかしさんが摂取するものじゃないだろう」
「歳とったって、実際ツバツさんの歳が人間から見て何歳か分かるのっ?」
「いや分からないけども、きっとそんなに若くは無いだろう。見た目も白髪だし、落ち着いているし」
「じゃあ琢磨は良い案無いのっ?」
「俺はそうだなぁ、ショウガとか……」
「いや普通! ショウガなんて普通に全料理に入れるわ!」
「全料理って! さすがにヨーグルトケーキには入れないだろ!」
「いやショウガは甘いモノにも合うからヨーグルトケーキにも入れますぅー!」
「まあそうかもしれないけどさ……」
よっしゃ! 琢磨を論破してやった!
……って、そんなことをするために会話しているんじゃない。
ちゃんと考えなきゃ。
「そうだ! 庭に生えているレモンバームなんてどうかなっ! 良い香りがして良いと思う!」
「良いに良いを重ねて喋るな。語彙力消失しているのか」
「それくらいいいじゃん! 語彙力は大人になってからが勝負でしょ!」
「今の積み重ねだろ、語彙力も。それにレモンバームは、まあ強壮作用はあるけども、メインの部分がイマイチだな」
「まあ頭痛とかに利くことがメインみたいだけども……あっ! じゃあこれは! クコの実! クコの実も疲労回復にいいんだって! あれって甘くておいしいから私好きっ!」
「クコの実か、乾燥したヤツはある程度どこでも手に入るな……いいかもしれない」
「というとスイーツかなぁ」
「いや、甘いモノよりも、もっとほっこり食べられるモノのほうがいいだろう。そこからすぐ甘いモノにいくなんて安易だな」
「別に安易じゃないし! ちゃんと考えての発言だし!」
「クコの実と言えば、やっぱりお粥だろう」
「お粥! それなら食べやすそうだ!」
「じゃあお粥でいいなっ、これを軸にどんな食材を入れていくか考えていこう」
そして私と琢磨は、田中さんや溝端さんが帰る時間帯の八時まで、二人でみっちり会議をしたのであった。