五月といったら、端午の節句である。

 子どもの健康と、健やかな成長を祝う日だ。祖母は毎年、笹だんごを作ってくれた。小学生高学年くらいになると、作り方を教えてくれたのだ。

 使う笹はお店でも売っている。どうやら、笹だんご用の笹を売っているのはこの辺だけらしい。

 ふと食べたくなって、東京のスーパーで探したが一度も見つけられなかった。笹なしで作ってみたが、祖母の味にはならなかった。やはり、笹を使って作るのがポイントなのだろう。

 買い物はもっぱら宅配スーパー頼りだ。朝頼んだものは夕方までに持ってきてくれる上に、価格は店頭と同じ。

 五千円以上頼んだら、宅配料も無料なのでありがたく利用している。車を持っていない高齢者が多く暮らす町なので、利用率はかなり高いのだとか。

 久々に入手できたパッケージされている笹に、思わず頬ずりしてしまった。

「何をしているのですか?」

「ひゃあ!!」

 突然良夜さんが現れ、飛び上がるほど驚いてしまった。基本、狛犬である彼は気配というものがない。ぼんやりしていたら近くにいた、なんて瞬間がよくある。

「さ、笹だんご用の笹を、久しぶりに入手できたので、嬉しくて」

「笹なんて、買わなくてもその辺に生えているではありませんか」

「その辺の笹は、人様の土地の物ですし、笹の葉は一部地域でしか入手できないのですよ」

 良夜さんは東京を知らないので、信じがたいという目で私を見ていた。

「それはそうと、早く作りましょう」

「そうですね」