そんな彼から突然の夜のお誘い。

デートに誘ってくれるなら、前もってアポを取っておいてくれれば、こっちだってちょっとはおしゃれしてきたし、さりげなくレストランでも予約しておいたのに。

「すみません、お待たせしました」

 同じ部署で同時にあがったはずなのに、なんで私より出てくるのが遅いんだろう。

「で、用事ってなに?」

「告白しようと思うんです」

 驚いて彼を見上げると、やっぱり真っ赤な顔をしたまま、前を向いて歩いている。

「どうやって告白したらいいですかね」

「誰に?」

「好きな人に」

「その相談?」

「そうです」

 雨上がりの濡れたアスファルトを歩く私の足は、本気で滑りそうになった。

「あぁ、そういうことね」

「ダメですか?」

「いいよ、別に」

 世の中そう甘くはない。

そうだよね、彼氏いない歴五年を迎えようとする三十路手前の先輩社員に、年下のかわいい男の子がふり向くわけがない。