(これは……!?)
今、確かに背後からの視線を感じる。
何かまるで獲物に狙いを定める肉食動物みたいに様子を伺う視線が、背中に突き刺さっているのが伝わってきた。
私には才能というべき霊感とか言う物が備わっている、この感じは明らかに人間だ……
……って、前にも同じ様な事を経験した覚えがあるんだけど……。
私が振り返ると同時に、その視線の送り主が扉を開けて、勢い良く突然私に後ろからしがみついて来た。
「…………ひっ!!」
「あははは~、驚いた~?」
そう言って、私にしがみついた富岡先輩が笑った。
「なっ、何してるんですかっ!? 富岡先輩!」
「何って~……桃ちゃんと、裸の付き合いをしておこうと思ったに決まってるでしょ~」
「はっ!?」
理解するまでに数秒。
私の顔にみるみる血が集まって行くのがわかる。
「なっ、なにを言ってるんですか!?」
「アハハ、冗談冗談~」
「まったく、からかわないで下さいよ」
「ゴメンゴメン、でも、ちょっと本気だったんだけどね~」
富岡先輩は突然真剣な顔で、私の事を見つめた。
「ほら、前に言ったの覚えてる? オレ、桃ちゃん結構好みのタイプなんだよね」
このままだと、私は頭が沸騰して大変な事になりそうだ。
「知ってる? 一目惚れってね人を好きになる最も純粋な感情らしいよ」
「ま、また、ご冗談を……」
「う~ん、これは冗談じゃないよ?」
「ふぇっ!?」
こ、これは、これも全部含めての冗談! とかじゃないんだろうか?
「なんとなくね、桃ちゃんとオレは相性が合うと思うんだよね」
「あっ、相性ですか……?」
「そ、いろんな相性……これもカンなんだけど」
い、いろんな相性!?
富岡先輩はいつもみたいな子供っぽい笑顔ではなく、どこか大人びた表情で私に微笑みかけた。
恋愛経験ゼロの私には、これ以上返す言葉もどんな顔をしていいのかももうわからない。
完全思考停止状態である。
その時──
「キャ──────ッ!!」
悲鳴が家中に響き渡り、それは私達の耳にまで届いた。
「富岡先輩! 今のは!?」
「うんっ! リビングに行こう」
私達は瞬時に廊下から悲鳴の聞こえた方へと走った。
「ねねちゃんっ!?」
私は大きな声で名前を呼んだ。
先程食事をしたダイニングの扉を開くと、そこにはねねちゃんとカメラを構えた山寺先輩の姿があった。
そして、何故か満面の笑みでその場でしきりにガッツポーズしている持明院先輩。
この状況に私は全く事が理解出来ず、暫く三人を見比べてから、ようやく動き出した頭がした判断は[ねねちゃんに駆け寄る]だった。
「ねねちゃん! 大丈夫っ?」
私は震えるねねちゃんの両肩を抱いて、声を掛けた。
「…………おっ、女が…………」
「えっ…………? 女?」
私は持明院先輩の方に視線を移し、今度はそちらに問い掛けてみる。
「持明院先輩! 女がいたんですか!?」
持明院先輩は目をキラキラと輝かせ、私に駆け寄ると何故か両手を握りしめ、
「そうだっ!!」
と、今まで見た事もない眩しいスマイルをして来た。
なんでそんなに生き生きとしているのかは謎だ。
「状況を説明して下さい!」