時雨には美樹という、一つ上の幼馴染みがいた。物心つく前からずっと一緒にいたせいか、
家族も同然、いや、それ以上の存在だった。

美樹は時雨の初恋の人だった。

、、しかし、美樹は病気を患っていた。

『先天性心疾患』

生まれつきの心臓病だ。

時雨はそんな美樹を助けたくて、
医者になることを望んでいた。

しかし、両親はそれを許さなかった。

時雨の家族は音楽一家で、
父はプロのピアニスト、母は声楽家だった。
(母は時雨を生んだときに引退している。)

時雨はそんな両親から、
ピアニストになるための英才教育を
受けていたので、
幼い頃から時雨の将来は決まっていた。

だから時雨が医者になりたいと
言い出したとき、両親は時雨に猛反対をした。

けれど時雨の意思は変わらなかった。