高校三年の春、本当に鵠の姿はなかった。 誰もがそれを寂しがっていたけれど、桜が全て散る頃には皆受験に目が向いていた。 俺の母親も春休み中には帰ってきて、ストレス発散のように部屋のものを片端から片付けていた。 鵠とは連絡先も交換していなくて、どこに引っ越したのかも聞かなかった。 それでもいつか、どこかで会えるんじゃないか、という期待もあった。 そう、期待だった。 俺たちは子供で、住む場所も好きには決められなかったけれど。 心の深い傷は、優しさに変われば良い。 あわよくば、強さにも。