話の内容を考えると、人の大勢いるファミレスって訳にもいかない。
かといって、蓮のテリトリーであるリーベルに行く気にもなれなかった。
自分の部屋にふたりを入れるのは気が進まないけど他に選択肢はない。
「その辺に座って」
雪香と蓮に告げると、私はキッチンでお茶の用意をした。
二人に気遣いなどするつもりは無いけれど、自分自身冷静になる為に間を開けたかったから。時間をかけてお茶を入れると、それをトレーに乗せて居間に運んだ。
二人は物珍しそうに、大して広くない部屋を見回していた。
駅から遠く不便な立地の為、一人暮らしのアパートにしては広く、ベッドの置いてあるスペースは仕切りで目隠ししている。それでも観察されるのは気分が良くない。
私は不満を吐き出すように息を吐くと、テーブルに適当にお茶を置き二人の前に座った。
「それで話って?」
余計な話は受け付けないという気持ちを表すように、固い声を出す。
「あ……さっきも言ったけど沙雪に謝りたくて」
躊躇いながら言う雪香を、私はじっと観察した。
最後に会ったときと比べると、やつれたように見える。艶やかだった髪も毛先が痛んでくすんでいた。
失踪していた間、楽な暮らしをしていた訳では無いと見てとれる。かといって態度を和らげる気は無いけれど。
「謝るって、何を? 心当たりが多すぎてどの件を言ってるのか分からないけど」
わざと嫌みな言い方をする。雪香は傷付いたような顔をした。
「沙雪、雪香は……」
「蓮は口を出さないで! 雪香の謝罪を聞くだけの約束でしょ?」
雪香のフォローをしようとする蓮を、キツい声で遮った。
私は蓮に対して、再び心を閉ざしていた。
彼は何か言いたそうに顔を歪めながらも黙る。代わりに雪香が口を開いた。
「まずは直樹の件……私は間違っていた。本当に後悔してるの……だから直樹とは婚約解消したの」
雪香は今日一番明るい表情で言う。
まさか、私が喜ぶとでも思っているのだろうか。そうだとしたら信じられないくらい無神経だ。
「知ってる。直樹に聞いたから」
そう言った途端、雪香は顔を曇らせた。
「え……直樹に会ったの?」
「雪香が帰って来る大分前にね。直樹はその時既に婚約解消するって言ってた」
こんなに詳細に言う必要はない。だけど、雪香と蓮に対する苛立ちが、私を意地悪くしていた。
かといって、蓮のテリトリーであるリーベルに行く気にもなれなかった。
自分の部屋にふたりを入れるのは気が進まないけど他に選択肢はない。
「その辺に座って」
雪香と蓮に告げると、私はキッチンでお茶の用意をした。
二人に気遣いなどするつもりは無いけれど、自分自身冷静になる為に間を開けたかったから。時間をかけてお茶を入れると、それをトレーに乗せて居間に運んだ。
二人は物珍しそうに、大して広くない部屋を見回していた。
駅から遠く不便な立地の為、一人暮らしのアパートにしては広く、ベッドの置いてあるスペースは仕切りで目隠ししている。それでも観察されるのは気分が良くない。
私は不満を吐き出すように息を吐くと、テーブルに適当にお茶を置き二人の前に座った。
「それで話って?」
余計な話は受け付けないという気持ちを表すように、固い声を出す。
「あ……さっきも言ったけど沙雪に謝りたくて」
躊躇いながら言う雪香を、私はじっと観察した。
最後に会ったときと比べると、やつれたように見える。艶やかだった髪も毛先が痛んでくすんでいた。
失踪していた間、楽な暮らしをしていた訳では無いと見てとれる。かといって態度を和らげる気は無いけれど。
「謝るって、何を? 心当たりが多すぎてどの件を言ってるのか分からないけど」
わざと嫌みな言い方をする。雪香は傷付いたような顔をした。
「沙雪、雪香は……」
「蓮は口を出さないで! 雪香の謝罪を聞くだけの約束でしょ?」
雪香のフォローをしようとする蓮を、キツい声で遮った。
私は蓮に対して、再び心を閉ざしていた。
彼は何か言いたそうに顔を歪めながらも黙る。代わりに雪香が口を開いた。
「まずは直樹の件……私は間違っていた。本当に後悔してるの……だから直樹とは婚約解消したの」
雪香は今日一番明るい表情で言う。
まさか、私が喜ぶとでも思っているのだろうか。そうだとしたら信じられないくらい無神経だ。
「知ってる。直樹に聞いたから」
そう言った途端、雪香は顔を曇らせた。
「え……直樹に会ったの?」
「雪香が帰って来る大分前にね。直樹はその時既に婚約解消するって言ってた」
こんなに詳細に言う必要はない。だけど、雪香と蓮に対する苛立ちが、私を意地悪くしていた。