ミドリは秋穂さんの気持ちを思うあまり、雪香を強く責めたんだろう。
「怖くなって、ろくに話も出来ないままミドリから逃げたの」
「雪香が動揺するのは当然だよ、彼に妻子が居ると知らなかったんだから……でもどうしてその後も付き合いを止めなかったの?」
突然ミドリから責められた雪香を気の毒だとは思うけど、知ってからも付き合いを止めなかったのは許されない。
「ミドリと会った後、徹と沢山話し合ったの。お互い嘘をついていたのを謝った。でも嘘がなくなったら気持ちが近付いた気がした。何一つ隠さずに話せるのは徹しかいなかった。十年一緒にいた蓮より近い存在になったの……いけないと分かっていても離れられなかった」
雪香はとても切なそうに呟く。確かに悲恋だったのだろう。でも私は同情出来ない。
「そんなに彼が好きならどうして直樹に近付いたの?」
初恋は叶わず、ようやく好きになれた相手には家族がいて、悲しかったはずだ。
その痛みを分かっているのに、なぜ人を傷つけるような真似が出来たの?
「雪香は直樹が私の婚約者だって初めから知っていたんじゃないの?」
確証は無かった。けれど勘がそう告げている。雪香は観念したように頷いた。
「沙雪の恋人だとは分かってた。ふたりでいるところを偶然見かけたことがあったから」
確信していたのに、いざ雪香が肯定すると、気持ちが騒めいた。
「知っていながら直樹に近付いた理由はなに?」
雪香は躊躇いつつも、語り始めた。
「徹とは話し合って別れたの。でも気持ちは治まらなくて自棄になって一人で夜で歩いていた。そこで直樹を見かけたの」
少しだけ動揺した。直樹は仕事が忙しくて会えない日が多かったけど、出歩いているなんて知らなかったから。
「直樹は雪香と知り合う前から遊び歩いていたってことなの?」
雪香は気まずそうに頷く。
「彼は見ていて不快になるくらい女性にだらしなくて、そんな人が沙雪の恋人だなんて信じられなかった……直樹は私にも平気で声をかけて来たの」
「それは……雪香が私の双子の妹だって分からなかったからでしょ」
私たちは顔の造作は似ているかもしれないけど、醸し出す雰囲気はまるで違う。直樹が分からなくても無理はない。そもそも彼は私を真剣に好きだった訳じゃないのだから。
「そうみたい。私、すごく驚いた。本当に恋人なのかって。それで興味を持って話をしていたら……」
「怖くなって、ろくに話も出来ないままミドリから逃げたの」
「雪香が動揺するのは当然だよ、彼に妻子が居ると知らなかったんだから……でもどうしてその後も付き合いを止めなかったの?」
突然ミドリから責められた雪香を気の毒だとは思うけど、知ってからも付き合いを止めなかったのは許されない。
「ミドリと会った後、徹と沢山話し合ったの。お互い嘘をついていたのを謝った。でも嘘がなくなったら気持ちが近付いた気がした。何一つ隠さずに話せるのは徹しかいなかった。十年一緒にいた蓮より近い存在になったの……いけないと分かっていても離れられなかった」
雪香はとても切なそうに呟く。確かに悲恋だったのだろう。でも私は同情出来ない。
「そんなに彼が好きならどうして直樹に近付いたの?」
初恋は叶わず、ようやく好きになれた相手には家族がいて、悲しかったはずだ。
その痛みを分かっているのに、なぜ人を傷つけるような真似が出来たの?
「雪香は直樹が私の婚約者だって初めから知っていたんじゃないの?」
確証は無かった。けれど勘がそう告げている。雪香は観念したように頷いた。
「沙雪の恋人だとは分かってた。ふたりでいるところを偶然見かけたことがあったから」
確信していたのに、いざ雪香が肯定すると、気持ちが騒めいた。
「知っていながら直樹に近付いた理由はなに?」
雪香は躊躇いつつも、語り始めた。
「徹とは話し合って別れたの。でも気持ちは治まらなくて自棄になって一人で夜で歩いていた。そこで直樹を見かけたの」
少しだけ動揺した。直樹は仕事が忙しくて会えない日が多かったけど、出歩いているなんて知らなかったから。
「直樹は雪香と知り合う前から遊び歩いていたってことなの?」
雪香は気まずそうに頷く。
「彼は見ていて不快になるくらい女性にだらしなくて、そんな人が沙雪の恋人だなんて信じられなかった……直樹は私にも平気で声をかけて来たの」
「それは……雪香が私の双子の妹だって分からなかったからでしょ」
私たちは顔の造作は似ているかもしれないけど、醸し出す雰囲気はまるで違う。直樹が分からなくても無理はない。そもそも彼は私を真剣に好きだった訳じゃないのだから。
「そうみたい。私、すごく驚いた。本当に恋人なのかって。それで興味を持って話をしていたら……」