部長は私を甘やかしすぎです!




二人は買い物に出て行き残されたメンバーは美咲の方を見た

「美咲、お前諦めたの?」

広樹が尋ねた



「うん、竜二が選んだんだもの。それにね、この間私仕事で会ったのよ。すっごく気が付く子でね、かなわないって思った。竜二が求めてたのは家庭的な子なんだと思う。私料理できないし、今日見てれば多分わかるはず(笑)」


美咲ともう一人、綾と言う女性がいた


「大学の時は二人お似合いだと思ってたけど結婚は別ってことね。この中に結婚しようと思ってる人いるの?」

「俺、来年する予定」

紀之が答える



「おー、竜二が帰ってきたら乾杯しようぜ、おっ、この料理うめえ。さっき出してくれたやつ」

広樹は料理に食らいつく


みんなは次々と料理に手をつけていく


「ただいまー」

「おかえり」

全員が迎えた



「竜二さん、空いてるお皿下げてきて」

「はーい」



雫は飲み物をすぐ冷やしていく

リクエストのあった焼酎とワインを作っておぼんに載せ竜二に渡す



雫が料理を作っていると竜二が呼びに来た

「雫ちゃん、来年結婚が決まったやつがいるんだ。乾杯するから雫ちゃんも呑もう」

「あっ、はい」



雫は竜二の隣に座った

「そんなに急いで作らなくても大丈夫だから……」

耳元で竜二が囁いた

(わかってはいるんだけどね……足りないのは駄目なんだよ、もてなす側としては……)



雫はつまみを作りたくてウズウズしていたがとりあえず乾杯に参加することにした

広樹が指揮をとる

「じゃあ、紀之の結婚を祝って乾杯~」

「乾杯~」




忍が紀之に尋ねた  

「いつするんだ?」

「来年の二月だよ。会社の子」

竜二も聞く

「社内恋愛か?」

「まあな」



「俺らも婚約はしたよ」

竜二がさらっと言った

「えっ、決まったの?」

美咲が驚いていた

「お互いの両親に挨拶したよ」

事情を一番よく知ってる忍が呟く

「付き合って何ヵ月だよ(笑)」



竜二は聞こえてたようで

「確かに……この間(笑)今月の四日に婚約指輪渡した」



みんなが雫の指を一斉に見た

雫は手を隠した

「大切にしまってあります(笑)」



「ちょっと、竜二、四日って私と仕事した日じゃないの」

「そう、誕生日だったんだよ。夜にプロポーズして指輪渡したんだ」

「誕生日だったの?」

「はい」

「ごめんなさいね、手伝ってもらって」



「いえ、楽しかったです(笑)多分一生忘れられない日になりましたよ」


「美咲の会社の企画で俺の会社で夏祭りしたんだよ。そしたら俺の両親に会って、次の週に向こうの両親に会って、ちょっとバタバタしたけどな」

「うん」

「結婚はまだ先だけど」



雫は空いたお皿を下げて席を立つ

新しい料理と焼酎に変えた忍におかわりを渡す

「ありがとう」

「いえ(笑)」

雫はまたダイニングに行く



(何を作ろうかな~)

冷蔵庫を覗く

「何か手伝いましょうか?」

美咲がダイニングにやってきた


「あっ、美咲さん、そんなお客様ですから座って呑んでてください(笑)お仕事の方はどうですか?」

「そうね、まあまあね。これからまた秋に向かって何かいい企画ないかしら?」



「そうですねー、行楽シーズンですね。家族持ちの人は忙しいですけど独身の人も何か楽しめたらいいですね、一人でも足を運べるようなイベントとか」

「そうね!みんな今独身だものね。みんなに聞いてみなきゃ!」



「男の人でもきっとやりたいことありますよ、あっ、これ持っていってもらっていいですか?」

「えっ、今話してる間につくったの?」

「これは簡単ですから~」

「今度料理の企画考えてみるわ、私全然できないのよ」

「はい(笑)」


美咲はお皿を持ってリビングに戻った






雫はもう一品作り焼酎を歩(あゆむ)に渡して竜二の隣に座った


「よく見てるね、ありがとう。えっと……竜二、俺らも雫ちゃんて呼んでいいのか?」

「えー」



竜二は露骨に嫌そうな顔をした


(竜二さん、そんな顔もするんだ(笑)友達といると色んな顔が見れる。かわいい……)

「お前は何で自分の女なのに呼び捨てにしてないんだ?」

だいぶ酔ってきた広樹が口数が多くなる



「そうよ、竜二が呼び捨てにしてないなんて逆に貴重なくらいだからね、この人は名字覚える方が苦手な人だから」

綾も絡んできた



竜二と雫は顔を見合わせた



「何かイメージかな~、年も離れてるし可愛いんだよね。雫!っていうより雫ちゃんって感じしない?俺の店で雫ちゃんは見つけたんだけどお客さんは雫ちゃんのことを若ちゃんて呼ばれてるんだよ」

「若ちゃんも可愛いけど名字で呼んでたら結婚したら名字が変わるじゃん」

広樹が竜二にビールを注ぎながら言う



「そうだなー」

「名前でいいですよ(笑)」

「雫ちゃん……」

「いいじゃない、呼び方くらい」

「じゃあ、俺が雫って呼ぶ」

「別にいいけど……佐和子さんも呼び捨てだし……」


「ん?佐和子さんて?」

「えっ、自分のお母さんの名前でしょ」

「何で?」

「えー、だってお母さんて呼ばないで名前で呼んでって言われたから」

「いつの間に……」



みんな、大笑いする

「竜二、お前のイメージ変わったわ」

紀之がお腹を抱えて話す

「そうそう、いつもかっこつけの竜二が雫ちゃんに敵わないって、メロメロだな(笑)」

広樹のつっこみも入る



「うるさいよ、お前ら」



俊(とし)が口を開く

「雫ちゃん、竜二ね、いつも呑みに行っても格好つけてるんだよ。足組んでふんぞりかえってる」



「でも、いいと思います。それが竜二さんらしいなら……人に迷惑かける態度は駄目ですけど、みなさんの前だけならきっと気を許してるんじゃないでしょうかね。お仕事でいつも謝ってますし」

「なんて、いい子なんだ。雫ちゃん感動したよ。美咲と別れて正解!」



「ちょっとー、ひどい……でも私この間竜二に謝られたんだよ、びっくりしたよ」

「雫ちゃんの言うことなら聞くよ」

「絶対亭主関白だと思ってたのにな」

広樹が竜二の肩に手をまわす



全員が頷く

「雫ちゃんはお酒強いの?」

綾が尋ねた


「程々です。竜二さんと軽く呑むくらいですね」

「テニスの打ち上げもここでしようぜ」

「いいけど、金集めるぞ」

「オッケー、オッケー」


だいぶお酒が回ってきたのか次々とおしゃべりがみんな止まらない




「周り気にせず話せるな。店なら人数多いし、テーブル分かれるしな」

「食べたい物あったら作りますよ」



「やった、雫ちゃんの料理旨いよな」

「ありがとうございます。いつですか?」

「十一月三日だよ」

「十人みんな出るんですか?」

「今年は久々に全員だな」

「だな、みんなだいぶ仕事が落ち着いてきたってことかな?」

「確かに仕事にも慣れて休みやすくなってきたわね。後輩もできてきたし」

「美咲なんかは平日が休みだから特にな」



「竜二さんは毎年出てるんでしょ?」

「うん、忍と」

「何も練習してませんけど、大丈夫なんですか?」

「これからかな(笑)」

「みなさん、そんな感じですか?」



「忍以外はそうだな……忍はテニスのインストラクターしてるから」


「ラケットは持ってるけど、指導だけじゃなー、自分の練習はやっぱり別でしないと」

「竜二さん、頑張らないと……」



「そうだな、雫ちゃんの料理が美味しくてビール飲み過ぎだから走ろうかな(笑)」

「私見に行っていい?」

「いいよ」



「やった!楽しみ~」





雫は席を立って素麺を茹で始める

「雫ちゃん、素麺?」

「うん、竜二さん、空いてるお皿下げてきて」

「わかった」



「竜二が動いてる(笑)」

「うるせーよ(笑)」

「一人の女でこれ程変わるかね?」



雫はみんなに素麺のダシを配る

「おっ、素麺?」

食欲旺盛な広樹がすぐに手をつける



「はい、竜二さんのリクエストです」

みんなで素麺をすする

「うめえ」

「うん、美味しい。手作りのダシ」

「だろ?」


竜二は得意気にみんなに勧めていた


みんなはお腹いっぱいになり横になる者もいた

「もう、食べられないし呑めないお腹はち切れそう」

「店より食った気がする」

「確かに(笑)」



「あー、明日仕事だから俺そろそろ帰るわ」

「貴志(たかし)はそうだな、いつも悪いな、土曜日がどうしても多くて」

「いや、大丈夫。それこそ、店に一番に出なくてよくなってきたから」



「お店やってるんですか?」

雫が聞いた

「貴志は美容師なんだよ」

「へえ」



「雫ちゃんの髪もカットしてあげるよ。ご指名お願いします」

名刺を渡す



「えっ、ここって有名なお店……高いところですね?」


「竜二と一緒に来るといいよ、竜二に支払いしてもらうといい(笑)」

「いいよ」



「貴志もだいぶ指名増えてきたよね、予約が取りにくくなってきたし」


「おかげさまでな(笑)綾にはいつも指名してもらってるから」

「私、短いからさ、やっぱりショートカットは月一くらいでいかなきゃね、襟足が気になっちゃって」


「俺とほぼ同じ頻度じゃねーかよ」


「竜二さん、いつカットに行ってるのかわかんない(笑)」


「貴志の一番最後が空いてる時に行って食事して帰る」

「なるほど~」


「雫ちゃん、今度行こうね、貴志の店」


「ヘッドスパしてあげるよ。気持ちいいよ」



「あれは気持ちいいわよ、雫ちゃんお勧めするわ」

「贅沢ですー」



「あっ広樹、起きろ。お前寝たら運べないんだから」

広樹は大きな背伸びをした

「あー、眠い。そろそろ帰るか」


「電車まだあるか?タクシー呼ぼうか?」

「ギリギリいけそう。出るか」


皆は重い腰を上げて帰っていった



雫は洗い物を始める

「疲れただろ?明日でいいよ」

「すぐ終わるから大丈夫、それより忍さんのお布団敷いてあげて」

「わかった」



竜二はリビングに布団を運んでくる

「忍、ここで寝てくれ」


「うん、ありがとう。遠慮せずにヤっていいから(笑)」

「(笑)バーカ、しねえよ」


片付けも終わり二人は寝室にいた


「今日ありがとね。バイトもあったのに疲れたでしょ」

「ううん、十人はびっくりしたけど」


「この間六人だったからな(笑)十一月はまたよろしくね」

「うん、大きい鍋が欲しい」

「買おう(笑)今日はみんなに紹介できて良かった」


「私もありがとう」


二人は抱き合って眠りについた

朝、竜二が先に起きシャワーに行く


リビングに戻ると忍が座ってぼーっとしていた

「起きたか?」

「ああ、喉乾いた。水もらう」




竜二はカーテンと窓を開けて換気をする

忍がシャワーから出てきた

「この間言ってたように部屋の印象変わったな」


「ああ、二人で選びにいった」

「お前が婚約ねー(笑)」

「何?意外?」


「まあ、俺は結構お前と対等な女を選ぶと思ってた。まあはっきり言うと美咲みたいなタイプ」



「美咲と付き合ってる時は確かに結婚まで行くかもと思うこともなくはなかった……浮気してたのも事実だけどバレなきゃいいと思ってたし、しっかりした女も嫌いではない、それなりに多分付き合えると思うんだけど……」



「次期社長としたらどうなんだろうな。社交性も必要だし、内助の功とどっちがいいのか……雫ちゃんは派手なほうじゃないだろ?」



「派手じゃないけどとにかく可愛い(笑)俺は癒しをとったんだよ。お客さんともかなり話せるから意外と社交的なのかもしれない、親も気に入ってくれたしな」



「癒し系か……」

「忍は好きな女とか気になる子はいないのか?」

「そうだなー、昨日の竜二見てるとそろそろ俺もって思うな。最近夜のレッスンに来始めた子がいるんだよ」



「おっ、積極的に行くのか?」

「いや、まだ行けないな(笑)」


「少しずつでいいから話かけろよな」

「お前みたいにその日に誘うとかは無理だから(笑)」

「確かに(笑)店にいけば会えるはずなのに仕事にかこつけてすぐ誘ってしまった」





「おはようございます」

「おはよう」

「あの……忍さん目を少しつむってもらえると……」


「忍、目をつむれ」

雫は自分の部屋に走っていった



「俺、今日服着てるけど……」

「(笑)パジャマ姿が恥ずかしいらしい」

「成る程(笑)」



雫は服に着替えて朝食の支度を始め三人で朝食を食べた



「じゃあ、俺帰るな」

「ああ、仕事が早く終わる時はそっちに練習に行くよ」


「おう、連絡してくれ」

忍は帰っていった



「ねぇ、昨日後半セーブしてた?」

「少しな、何でわかった?」

「なんとなく?今日仕事行くの?」

「雫ちゃんにはかなわないなぁ、昨日途中で電話かかってきてたんだよ。でも雫ちゃん午後からバイトいくからその間に終わるし……と思ってさ。

仕事行くって言うと朝ゆっくりしたいのに雫ちゃんは色々準備してくれるからさ、今日は片付けもしてくれるだろうしやることあるから雫ちゃんが出てから仕事行こうと思って」



「気をつかわないで下さい!だっていくら私に隠したって洗濯機のとこいけばシャツ着たのわかるでしょ?」

「そうだね(笑)確かにだ」



雫をお姫様抱っこして寝室に連れていく


「えっと、起きたばっかだよ?」

「ん?だね(笑)」



雫にキスをしていく

「んっ、こういうとこ、強引……やっ明るいの恥ずかしいって言ってるのに」

「可愛いよ、雫ちゃん全部俺に見せて」



「だから恥ずかしいってー」

「でも、だいぶ慣れたよね。雫ちゃんの反応可愛くてつい……チュッ」

「もう~でも、竜二さんの不意打ち好きかもです……」



「俺、酒くさくない?」

「大丈夫、ちゃんとセーブしてた……っ」


竜二の身体をぎゅっと握りしめる


「あっ、竜二さんのそういうとこ尊敬するよ……」



雫はベッドの上で激しく竜二に抱かれる

竜二の仕事用の電話が鳴った



「出て……ください……」

竜二は雫の頭をなでながら電話に出る

電話をしながら雫の身体をいじめていく



(んっ……声……)

竜二は電話を切りベッドに放り投げる



「ごめんね雫ちゃんを満足させてあげれない俺だけ…………ごめん」



竜二は雫を後ろから抱いた……

「っん……」





竜二はシャワーを浴びスーツを着る


「雫ちゃん、もうすぐワックスが無くなる」

「あっ、買ってます」

「さすが(笑)ありがとう。じゃあ先に出るね。バタバタしてごめん」



まだベッドで動けないでいる雫にチュッと軽いキスをして部屋から出て行った

「いってらっしゃい」


雫は竜二が出てからベッドからゆっくり出る



(最近休日出勤減ってたのにな、お盆シーズンだからかな。お弁当入れて私も支度しなきゃ)





平日、本社ビル

竜二は外出から戻ってきた


「部長、社長が戻られたら部屋に来るようにと」

「わかった、行ってくる」


竜二は八階に行きドアをノックする

「例のもの届いたぞ」



「ありがとう。俺が買ってもよかったんだけど、そんなことしなくていいって言いそうだし、仕送り止められたんだから家賃もいいって言ったんだけど言うこと聞かなくてさ。

せめて携帯代だけでも負担してあげようと思って」


「しっかりしてるな(笑)」

「うん、定期預金もしてるみたいで、今は夏休みだから少しバイトも増やしてる」

「卒業したらすぐ結婚するのか?」



「俺はそのつもり。年齢的にもいいかなって、でも雫ちゃんは資格を取りたいっていう目標があるから、合格してからだと思うけど、試験に合格したら式の準備にとりかかるよ」

「わかった」

「じゃあ、これ、ありがとう」



竜二は自分の部屋に戻った

夕方、美咲からメールが入る



‘今、企画で仕事終わって下にいるの、少し話がある’

‘六階に来いよ’


「今から一人友人が上がってくる、来たら通して」

「はい」

美咲はエレベーターで六階に上がってきた


「いらっしゃいませ、こちらへ」

部屋をノックして美咲を通す

美咲は部屋をキョロキョロ見回す

「すごいね、個室で秘書付きなんだ」

「みんながそうではないけど、客の多い人や、俺は逆に外に出ることが多いから連絡事項は秘書が聞くことになってて外出先からでも対応できるようにしてる」



真木がお茶を運んでくる

「すみません」



「で、話って?」


「この間ね、竜二が買い物出てる時に広樹に言われたの。竜二のことはもういいのか?って、まあそこはみんなの前でもういいって言ったんだけど」


「うん」


「帰りにね、広樹が送ってくれてね……付き合わないかって言われたの。大学の時から実は好きだったって……」

「大学から?……全然知らなかった」

「竜二には敵わないと思ってて言えなかったんだって」


「広樹はいつもニコニコしててムードメーカーだし、美咲のわがままを聞いてくれるよ」

「うん、まあそうだと思う。で、付き合うことにしたの」



「よかったな、大きな身体で気は小さい奴のことだからお前に言うのは勇気を出したと思うぞ。呑んでたから酒の力も借りれたかもしれないが、大事にしてやれよ」

「うん、でね、雫ちゃんの料理を美味しいってバクバク食べてたから今度教えてって言っておいてね(笑)」



「お前が料理?無理だろ(笑)」

「だから初心者でも作れる簡単料理をちょっと企画のことも考えて」



「仕事にするのかよ……広樹ならお前の料理なら食ってくれるよ」

「まあ、聞いてみといてね」


「あー、でもちょっと試験受けたいらしいからそれが終わってからだな」

「試験?大学の?就活?」

「管理栄養士の資格らしい」


「あら、そうなの。肩書きがついていいかも(笑)わかったわ、企画眠らせておくから、まあ、一応報告に来ただけよ、帰るわね」

「ああ、またな」

美咲は帰っていった



真木がお茶を下げにくる

「今の方は夏祭りのイベント会社の方ですね?お見かけしました」


「ああ、大学時代の彼女だ」

「お綺麗な方ですけど、雫様のほうがお似合いです」

「そうか(笑)」


「結婚と恋愛は違いますものね」

「君もそうか?」


「私は大学時代からの付き合いなので一緒でした(笑)」


「まあ、お互い仕事を選んだ結果だ」

「そうですね、またそれも運命です」



竜二のマンション



(もうすぐ雫ちゃんのバイトが終わる……走って迎えにいこうかな)


竜二は着替えてマンションを出て三沢店へ向かって走っていく


ハア、ハア

「あれ、竜二さん」

「えっ」



竜二は時計を見た

「もう、こんな時間?俺の予定では雫ちゃんの終わる時間に着いて一緒に帰ってくる予定なんだけど」

「九時とっくに過ぎてますよ~(笑)」



結局、雫の自転車の後ろをついて走ってマンションに帰る


「ハアハア、雫ちゃん、先……お風呂いいよ……少し休憩してから入る」

「急にはだめだよ、ゆっくり走ってね。じゃあお先にです」


竜二が浴室から出てきた

「竜二さん、食事は?外で食べたの?」

「いや、まだ」


「お腹減ってたら走れないよ、少しは何か食べないと、帰るの遅い時は無理しないで」

「そうだな、食べる」

「じゃあ私も少し(笑)」


「乾杯~」

「今日、美咲が来てね」

「うん」

「広樹と付き合うんだって」

「広樹さんて身体の大きい人?」

「えっ、自己紹介してないよね?」



「みんなが会話して名前呼んでたら覚えた。名字はわからないけどね。

女の人は美咲さんと綾さん、あとは竜二さんと忍さんはわかるでしょ、広樹さんが身体の大きい人、眼鏡かけてた人が俊さん、髪長めで束ねてたのが貴志さん、少し小柄の人が祐介さん、結婚する人が紀之さんで短髪で角刈りの人が歩さん」



「すげっ!そういう特技もあるんだ」

「特技ではないけど話を聞いてたらわかるよ(笑)」

「広樹が雫ちゃんの料理をよく食べてたから美咲が教えて欲しいって」

「いいけど……」


「試験終わってからにしてって言っといたよ」

「ありがとう」

「そしたら肩書きがつくから待つって(笑)」

「この間も何かいい企画ない?って聞かれた」

「まず、包丁握れって感じだよな」



竜二は寝室に行くと袋を持ってきた

「これ、親父から雫ちゃんへ」

「携帯?」

「うん、今俺と契約会社違うでしょ?」

「うん」


「同じにしてって。いずれ家族になるんだから、それと海外対応になってるからね。兄貴が海外にいるからみんな同じ契約の仕方になってるし携帯は俺も親父がお金は出してくれてる。家族って認めてくれたってことだね」



「いいの?」

「うん、データ移して使うといいよ」

「ありがとう、明日お父様に電話入れる、番号教えてね」

「うん、かけ放題になってるから実家とも話していいからね」

「うん、ありがとう」



「そうだ、一日から舟木の店長がくるから様子見てあげて」

「はい、店長やってたんだからきっと頑張ってたとは思うよ」

「多分な、甘いかなー俺……」

「竜二さんが判断したことだから大丈夫だよ、お酒が減ればまたやる気出てくるよ」

雫のほうから竜二の頬にキスをする

「うん、そうだな」

お返しに雫の唇へキスをしてそのまま寝室に向かった