6話「忘れたくない」



 「よく人間達も子どもの頃は霊感があるから見えることがあるって言っているんだろう?それは正解だ。まぁ、大人でも見える人はいるけど、僕の事を見れる人はほとんどいないだろうね」
 「じゃあ………薫はもう………」
 「ここに来ても僕の事を見れないよ。それに、僕と遊んだ記憶もなくなる。それが、ルールだ」
 「そんな………」


 当たり前だと言わんばかりに平然と説明をするミキ。本当は悲しいはずなのに、それを当然のように受け入れている。
 それが、時雨には理解出来なかった。


 「何で、悲しんだり、悔しがったり、足掻いたりしないんだよ!」
 「それは、全て無駄な事だから。そんな事をしたって薫は僕を思い出してはくれない。それなら、そんな風に思わないようにした方がいい」

 
 苦笑をもらしながらそう言うミキは、我慢しているように見えた。そんなミキを見ているのが痛々しく感じる。本当は悲しくて、泣きたいはずなのに、全てを受け入れている我慢しようとする。
 その姿は人間と全く同じだった。


 「じゃあ、俺が薫を貰う。おまえが薫の事を諦めるなら、俺が必ずあいつと恋人になる」
 「………何を言っているんだい?」


 突然の時雨の宣言に、ミキはポカンとした顔で時雨を見つめていた。
 けれど、感情が高ぶっている時雨は話を止めずに勢いのまま言葉を続けた。